橋下徹大阪市長が掲げる「大阪都」構想の実現に向けた法案を、民主、国民新、自民、公明、みんなの党などが共同で週明けの国会に提出する。いまの国会で成立する見通しだ。
法案は、政令指定市とその周辺をあわせた人口が200万人以上の区域を対象に、市町村を廃止して特別区を置くことを認めるものだ。
大阪だけに適用されるものではないため、大阪府を「都」とする条項はなく、府の名称は変わらない。
成立すれば、地方の発案による新しい自治体の形づくりに道を開くことになる。分権改革のひとつとして評価できる。
ただし、これは、特別区設置に向けた手続きを定めた法案だ。特別区がどんな行政サービスを担うのかといった中身については触れていない。
橋下氏が率いる大阪維新の会の構想は、大阪市を解体して特別区に再編し、府との間で権限や税財政の配分を効率的に整理しようというものだ。
大阪府と市の権限争いを終わらせるのにとどまるのでなく、いかに住民本位の制度をつくれるか。橋下氏らの力量が問われるのは、これからだ。
与野党の法案が一本化されたのは、構想への協力姿勢を示すことで、次の衆院選で維新の会を敵に回したくない思いがあったのは明らかだ。
各党の当初の案の中には、制度づくりで政府の関与を認めず、関係自治体での住民投票すら不要という「維新の会の言うがまま」の案もあった。
いくら地方の発案を尊重するにしても、府と特別区の役割分担などを見直すには、新たに地方自治法や地方税法などの改正が必要になるのは確実だ。
東京都と違って大阪府・市は、地方交付税がなければ財政が立ちゆかず、政府との調整は不可欠だ。住民投票がないというのも乱暴にすぎる。
その点、今回の法案では、法改正が必要な項目については総務相との協議を義務づけ、関係する議会の議決と住民投票による過半数の賛成が必要とした。各党の協議により、妥当な内容に落ち着いたといえる。
今後、維新の会が区割りや財政調整などの計画をつくり、議会や住民が認めれば議論の舞台は再び国会に戻ってくる。新しい大阪府の中身にかかわるこの議論は、自治制度のひとつの大きな改革の仕上げとなる。
橋下氏をめぐる政局的思惑から離れ、どれだけ住民目線の姿勢を貫けるか。国会もまた試されることになる。
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