分権委最終勧告 「地域主権」へ税制論じよ

毎日新聞 2009年11月10日

分権委最終勧告 「地域主権」へ税制論じよ

2年7カ月の蓄積を無駄にしてはならない。政府の地方分権改革推進委員会が地方税・財政をめぐる4次勧告を行った。07年4月に始動した同委は来春の設置期限を前にすべての勧告を終え、その実現は鳩山内閣に委ねられた。

地方分権一括法の施行(00年)や「三位一体の改革」を経て分権改革の飛躍を期した分権委だが、自公政権の混乱で政治主導は不発に終わった。「地域主権」を掲げる鳩山由紀夫首相からも、改革推進の熱意が具体的に伝わっているとは言い難い。

首相は分権委の後継組織の速やかな発足を主導し、特に国から地方の税源移譲の実現に真剣に取り組むべきである。

一連の勧告の仕上げと位置づけられた税・財政部門だが、消費税引き上げを現政権が凍結していることもあり、肝心の税制改革は中長期的課題の指摘にとどめた。短期的課題で注目されるのは、地方交付税の安定確保に向け、原資となる所得税など国税5税を配分する「法定率」の引き上げを勧告した点だ。

原資となる国税収入自体が経済動向で左右されるため、法定率を上げても交付税の安定につながらない、との指摘もある。だが、財源不足が生じるたび、臨時財政対策債などによる急場しのぎが常態化しているのは問題だ。交付税の複雑な算定基準の見直しなど透明性の向上を前提に、検討に値しよう。

分権委がこれまでテーマとした勧告は国道、河川管理などの地方への権限移譲、国の出先機関の見直し、国が地方行政を法令で縛る「義務付け」見直しなどだ。中央省庁や族議員の抵抗が最も強い分野であり、後ろ盾となるべき歴代の首相も頼りにならなかったのでは、作業の難航もやむを得まい。

鳩山内閣は勧告の方向性を踏襲したうえで、国からの補助金の一括交付金化など新たな課題に取り組むべきだ。特に、保育所設置基準など「義務付け」の見直しは、各省の出足が鈍い。分権委も来春の活動期限まで責任を持ち監視すべきである。

一方で、本来は分権委の応援団となるべき自治体の後押しが不足していたのも事実だ。権限移譲に見合う財源の移譲が伴わなければ、地方も「分権による財政負担増」への疑念をぬぐえまい。

政府は分権委に代わる首相直属の「地域主権戦略局」を設け、改革のエンジンとする方針だ。4次勧告は中長期的課題として国と地方の税配分を現行の6対4から5対5に改めるよう求め、地方消費税の拡充などの議論を促している。首相が「地域主権」を本当に考えるなら、税制は避けて通れぬ課題である。

読売新聞 2009年11月11日

分権委最終勧告 改革の工程表と全体像を示せ

4次にわたる政府の地方分権改革推進委員会の勧告が出そろった。政府は、勧告の尊重にとどまらず、より大胆な改革を目指してほしい。

分権委の勧告は多岐に及ぶ。国から地方への権限移譲、国の出先機関の統廃合、国が法令で自治体を縛る「義務付け・枠付け」の見直しなどだ。

このうち保育所や老人施設の設置基準の緩和など義務付け・枠付けの見直しは、実現に向けて関係府省との調整が始まっている。

地方が要望する40本の法律の104条項のうち、4分の1強の28条項の見直しは各府省が同意した。34条項は一部の見直しにとどまり42条項は拒否されている。

自民党政権では、各府省が族議員とも連携し、大半の勧告にゼロ回答を続けた。今回、回答が多少前向きになったのは、政権交代の効用とみられるが、官僚の抵抗は依然として根強い。

政府は、年末に地方分権改革推進計画を決定し、来年の通常国会に関連法案を提出する。

「地域主権国家」を標榜(ひょうぼう)する鳩山内閣の重要な試金石だ。鳩山首相や、地域主権推進担当の原口総務相が指導力を発揮し、見直し条項をさらに積み増しすべきだ。

最低居室面積や職員配置など、保育所の設置基準の緩和に関しては、関係団体から「保育の質が低下する」との反対論がある。

だが、都市部の自治体は既に、国の補助金を受けずに独自の保育所認可基準を設けている。多くの待機児童がいる切実な現状を踏まえた措置だ。深刻な保育所不足などを考えれば、基準緩和は時代の要請とも言えるだろう。

義務付けの見直しは、自治体の意識改革も促すはずだ。

自治体は従来、国が判断した基準に従う、という受け身の姿勢で良かった。今後は、自ら判断し、基準を制定する責任を負う。新たな権限をきちんと行使する覚悟と能力が求められよう。

地方分権改革では、多くの課題を同時並行で進める必要がある。政府は月内にも、地方分権委に代えて、閣僚や地方代表、有識者による新組織を設置する予定だ。

分権委は第2次勧告で、国土交通省地方整備局など8府省の出先機関の統廃合を提言した。ただ、統廃合と同時に地方に移管する事務や権限が明確でなく、看板の掛け替えに終わる懸念がある。

政府は、分権改革の進め方を議論、整理したうえ、新たな工程表を作成し、その全体像を国民に提示する必要があろう。

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