原子力規制委 候補者の所信聞きたい

朝日新聞 2012年07月26日

原子力規制委 候補者の所信聞きたい

新しくできる原子力規制委員会の人事案をめぐり、脱原発派の人たちから、差し替えを求める声が上がっている。

福島事故を教訓に、原子力規制を抜本的に転換することができる人材なのか。判断の軸はそこにある。

候補者本人から考え方を聞かなければならない。人事の決定は、国会の同意を必要とする。与野党は一刻も早く人事案の審議に入り、候補者の所信をただすべきだ。

政府が候補としているのは、前原子力委員長代理の田中俊一氏ら5人。過去3年間に、原子力関連業界から年50万円以上の報酬を受けていないことなどを基準に人選した。

これに対し、「原子力ムラと関係の深い人物が多い」との声が上がっている。特に委員長に想定されている田中氏は旧日本原子力研究所の出身で、原子力学会の会長も務めた経歴から、「原子力ムラの中心」と批判を浴びている。

たしかに、経歴を見れば原発の推進側にいたことは間違いない。一方で、原子力規制を担う委員会に、高度な専門知識が必要なことも事実だ。

肝心なのは、脱原発依存にかじを切ろうとしている現状を深く認識し、厳しく規制にのぞむ姿勢をもちあわせているかどうかである。

田中氏は事故直後、「原子力利用を先頭に立って進めてきた者として、深く陳謝する」とする緊急提言をまとめた専門家16人の中心人物で、老朽化した原発にも厳しい目を向けているとされる。評価は分かれる。

国会同意人事のうち特に重要な案件は、衆参両院の議院運営委員会で候補者の所信を聞き、質疑応答をすることになっている。日銀総裁・副総裁や会計検査院の検査官、公正取引委員会の委員長などが該当する。

原子力規制委も、このルールの対象とすべきだ。

候補者のこれまでの活動や原子力事業者との関係について情報公開を徹底させるのは当然として、候補者当人から新しい原子力規制や再稼働問題に対する識見、姿勢を表明してもらい、国民に広く伝わる形で検討するのが国会の責務だろう。

問題は、人事がまたもや政局に利用されていることだ。事前に読売新聞に情報が漏れたとして自民党が態度を硬化させ、人事案の国会への提出自体が遅れている。

新たな原子力規制は、待ったなしである。本質と関係のないところで時間を浪費する愚は、いい加減やめるべきだ。

毎日新聞 2012年07月27日

原子力規制委人事 「番人」にふさわしいのか

東京電力福島第1原発事故で国民の信頼を失った原子力安全行政を根本的に立て直す。重大事故発生時には現場対策の陣頭指揮に立つ。そうした重要な役割を背負い、9月に発足する予定の原子力規制委員会の人事案を、政府が国会に提示した。

初代委員長候補は、放射線物理が専門で前原子力委員会委員長代理の田中俊一氏。残る4人は原子炉や放射線の健康影響、地震学の専門家などを充てるという。衆参両院の同意を得て首相が任命するが、「原子力安全の番人」としてふさわしいのか疑念が残る。国会は人事案採決前に委員候補全員の所信をただし、職責にかなう人選かどうかを国民の前にも明らかにしてほしい。

政府は委員選考にあたり、過去3年間に、原子力事業者の役員・従業員だったり、同じ原子力事業者から年間50万円程度以上の報酬を受けていたりした人物を対象外とした。いわゆる「原子力ムラ」の影響をできるだけ排除するためだ。規制委員会設置法も「中立公正な立場で独立して職権を行使する」と定めている。

田中氏は福島原発事故後に「原子力の平和利用を進めてきた者として、国民に深く陳謝する」と反省し、国を挙げての取り組みを提言した16人の研究者の中心メンバー。福島県出身で、同県のアドバイザーとして除染にも取り組んできたという。だが、脱原発を訴える市民団体などからは、原発事故による低線量被ばくの影響や住民の不安を過小評価している人物だとの批判もある。

田中氏は大学卒業後に日本原子力研究所(現日本原子力研究開発機構)に入り、副理事長などを歴任。日本原子力学会会長も務めた経歴を見れば、原子力政策推進組織の中枢を歩んできたと言える。委員候補にも原子力機構の研究者がいる。委員には原子力の専門的知識や見識が求められるが、原子力ムラが安全対策に及ぼした弊害は明らかだ。選考経緯が不透明で原子力ムラ中心の人事案だとの批判が出るのも当然だろう。

原発再稼働をどのような基準で審査し、40年で原発を廃炉にする原則をどう扱うのか。重大事故発生時の備えをどう構築するのか。こうした課題への考え方を各候補から引き出し、妥当性を判断することこそ国会の役割だろう。

一部の報道機関が人事案を事前に伝えたことに自民党などが反発し、正式提示がほぼ1週間遅れたが、報道規制につながる大問題だ。民主党が野党時代に主導した「事前報道されれば国会提示を認めない」との申し合わせに足をすくわれた形だが、人物評価と無関係に、人事を駆け引きに使うのはおかしい。申し合わせは直ちに廃止すべきだ。

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