ウナギ取引規制 日本の食文化を守る戦略を

朝日新聞 2012年07月27日

ウナギ減少 資源保護に転じる時だ

今こそ、資源としてのウナギの保護に乗り出すべきだ。さもないと、私たちの食卓から消えることにもなりかねない。

ウナギのかば焼きの値上がりが続く。原因は稚魚であるシラスウナギの3年続きの不漁だ。

日本は、世界のウナギの約7割を消費しており、保護に率先して取り組む責任がある。

その生態を考えれば、国際的な協調が欠かせない。ニホンウナギは3千キロかなたの太平洋で産卵する。幼生は黒潮に乗って運ばれ、日本や中国などの川を上って数年から十数年かけて成長し、産卵場所に帰る。

ニホンウナギの資源量は1970年代の1割程度にまで減った。乱獲に加え、生育の場である河川環境の悪化がある。

気候変動の影響もいわれる。エルニーニョなどの影響で産卵場所がずれるなどして幼生が黒潮に乗れず、東アジアに戻れなくなるとも考えられている。

卵から完全養殖する技術は開発が続いているが、コストも量も実用化にまだ遠い。当面は天然のシラスウナギをとってからの養殖が頼りだ。

日本と中国、韓国、台湾の研究者に業界代表も加わった東アジア鰻(うなぎ)資源協議会はこの春、緊急提言をした。漁獲を規制することが急務とし、とりわけ、産卵のため海に戻る親ウナギの一時的な漁獲制限を求めた。

つまり、食べるのは当面、養殖だけにしよう、というのだ。

日本での消費のうち、天然物は約0.1%だ。養殖物も味では負けない。天然物は将来、資源が回復したときの楽しみとしてよいのではないか。

シラスウナギ漁も、現在は、都道府県ごとに漁期を定める方法で制限されている。科学データに基づき日本全体で総合的に管理することが必要だ。

緊急提言は、河川環境の保全なども挙げている。

政府も中国など関係国との協議を始めた。10年以上にわたる協力の実績がある協議会とも連携してほしい。

東京大の研究チームは09年、天然ウナギの卵を初めて洋上で採ったが、その一生はなお謎に包まれている。謎のまま絶滅させるわけにはいかない。

ヨーロッパウナギはすでに絶滅危惧種とされ、ワシントン条約で国際取引が規制されている。米国は、アメリカウナギに加えてすべてのウナギの規制をするよう、提案する構えだ。そうなれば、日本など東アジア諸国への影響は大きい。

科学的な調査を踏まえ、国際的な資源の保護と利用の両立を図るモデルをつくりたい。

読売新聞 2012年07月27日

ウナギ取引規制 日本の食文化を守る戦略を

日本の食文化を守るうえで気になる動きだ。

絶滅の恐れがある生物の国際取引を規制するワシントン条約の対象に、ウナギを加えることを米政府が検討している。

アメリカウナギのほか、日本で広く食べられているニホンウナギも含まれる。規制案は、輸出国の許可証を必要とするものだ。

米政府は、2013年3月に開かれるワシントン条約締約国会議で正式に提案するかどうか、今秋にも方針を決定するという。

全面的な輸出入の禁止ではないが、規制が実施されれば、国内消費の7~8割を輸入に頼る日本への影響は避けられない。

農林水産省は米国の動向を注視するとともに、ウナギの安定供給を図る総合的な戦略を早急に講じる責任がある。

米国がウナギ保護を求める背景には、乱獲や地球温暖化の影響などで、世界的に資源量が大幅に減少している事情がある。

すでにヨーロッパウナギは、欧州連合(EU)の提案で07年に規制対象に決まった。

このため日本は、ニホンウナギを養殖する中国や台湾などから、大半のウナギを輸入している。

国内では、養殖に使う稚魚のシラスウナギが3年連続の記録的な不漁で、漁獲量は約50年前のピーク時の5%にも満たない。

郡司農相は「枯渇している状況ではない」と説明するが、油断するのは禁物だ。

前回10年のワシントン条約の会議では、欧米が大西洋・地中海クロマグロの禁輸案を提案した。途上国などを日本陣営に引き込むことで、辛うじて否決できた。

クロマグロ同様、世界で取れるウナギの大半は、日本人が食べている。それだけに、国際社会の理解を得るには、日本が率先してウナギの保護や資源管理に取り組む姿勢を示さねばならない。

中国や台湾などと協力して対策を急ぐことが肝要だ。

ウナギの生態は十分に解明されていない。10年に卵からの完全養殖に成功したが、実用化には程遠い。稚魚を大量生産する技術の確立や産卵、回遊ルートなどの調査研究にも取り組むべきである。

取引規制への対応を誤れば、値上がり傾向が続く価格がさらに高騰する恐れがある。養殖業者や専門店が経営難に陥るだけでなく、ウナギが庶民に手の届かない高級食材になりかねない。

きょうは土用の(うし)の日。これからもかば焼きを食べ続けるために知恵を絞りたい。

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