民主離党ドミノ 自壊の危機を直視せよ

毎日新聞 2012年07月19日

民主離党ドミノ 自壊の危機を直視せよ

民主党議員の離党が止まらない。小沢一郎氏らの集団離党による党分裂でも事態は収束せず、女性参院議員3氏がそろって離党届を提出するなどドミノが続いている。

衆参両院とも選挙が次第に近づき、若手議員が急速に見切りをつけている。原発再稼働など消費増税以外の政策への対応が亀裂を広げており、このままでは党は自壊しかねない。野田佳彦首相は危機的状況を直視すべきだ。

「小沢新党」誕生以上に執行部にとってはある意味、手痛い離党劇ではないか。

離党に踏み切った参院議員3氏は国民新党を離党した亀井亜紀子氏とともに新会派結成を表明した。あと参院議員3人が離党すれば民主は第1会派を自民に明け渡し、野田内閣の参院対策は厳しさを増す。

それ以上に深刻なのは消費増税以外の分野で内部の不満が強まっている点だ。離党議員の一人は記者会見で関西電力大飯原発再稼働を決めた首相の対応を「責任という言葉があまりにも軽い」と批判した。

小沢氏が代表時代に民主党が躍進した07年参院選で3氏は当選したが、今後は「原発ゼロ社会の実現」などを掲げ小沢氏と別の新党結成を目指すという。衆院でも離党組による新会派結成の動きがある。小沢氏らによる行動について、私たちは権力闘争が主眼ではないかと指摘した。だが、今回の動きはそれに連動したものと単純に片付けられまい。

野田内閣の政権運営、特に菅前内閣の「脱原発依存」路線の軌道修正が混乱を加速している。首相は党内に強い慎重論を抱えたまま、なし崩し的に大飯原発再稼働に踏み切った。今後のエネルギー政策も、党内論議をもっと尽くす必要がある。

原発政策が国民の不信を強めている点に首相はあまりに無自覚ではないか。これとは別に米軍の垂直離着陸輸送機オスプレイの配備問題への硬直した対応にも、与党内から批判が出ている。消費増税で3党合意を実現したからといって、よもや慢心してしまったわけではあるまい。

多くの「離党予備軍」をなお抱え、輿石東幹事長は「政権が崩壊する認識を持っているのか」と危機感をあらわにしている。一体改革法案は参院審議が本格化したが、鳩山由紀夫元首相ら増税慎重派の動き次第では成立前に与野党の対立が再燃する事態すら起きかねない。

政権与党の使命をよそに若手が次々離党する様は確かに無責任だ。だが、いくら締め付けても党に魅力がなくては自壊は止まらない。民主党の政策は自民党とどこが違うのか、首相はとりわけ「脱原発依存」路線の再構築を急ぐべきだ。

読売新聞 2012年07月22日

離党相次ぐ民主 首相はひるまず体制立て直せ

民主党で離党者が相次ぎ、野田首相は、一段と厳しい政権党の運営を迫られている。さらなる離党を防いで政治をいかに前に進めるか。今、それが問われている。

懸念されるのは、エネルギー政策や環太平洋経済連携協定(TPP)参加など党分裂を誘発しかねない問題で、首相が思うように決断できない事態に陥ることだ。

民主党の離党者は、小沢一郎元代表のグループ以外からも出ている。理由は、反消費増税に限らない。女性参院議員3人は、脱原発や反TPPも訴えて離党した。

「次の選挙で生き残れない」と見切りをつけた面もあるだろう。党に対する愛着も薄い。

輿石幹事長が「国民の信を問う前に、政権が崩壊する」と述べたのは、危機感の表れだ。

「政権交代」は果たしたものの、政権公約(マニフェスト)の主要政策は、ほぼ総崩れだ。

党を立て直すには、実現不可能な公約に固執せず、新たな党の目標を設定することから始めることが必要ではないか。

党のよって立つ基盤を築き、一体性を作り出すために、政策論議を重ねるべきだ。

民主党には、手順を踏んで決めた政策を尊重せず、議論を蒸し返す体質もある。全議員が参加する場での議論は大切ではあるが、それだけでは収拾がつかない。離党の呼び水にもなっている。

政策の最終決定へのプロセスをもっと工夫すべきだ。

鳩山元首相ら一体改革関連法案の採決時に造反した議員が、反消費増税の立場から執行部を揺さぶる構えを見せている。

鳩山氏は首相官邸前で行われた反原発再稼働デモにも参加した。大衆迎合そのものではないか。

この先、原発政策やTPPの方針決定を巡って、党内の意見が大きく割れる可能性もある。

前原政調会長を中心に、今から十分議論しておくことが、肝要である。次期衆院選の公約を準備することも急がねばならない。

今度こそ、実現可能な公約となるよう精査が必要だ。

民主党の分裂に「極めて遺憾」と不満を表明した支持団体の連合との関係改善も課題だ。

だが、国民政党として、政策や選挙でどこまで連合に依存すべきかということも議論の対象になるのではないか。

党執行部は、時には毅然(きぜん)とした態度を示し、所属議員が政府の決定や党議拘束に従う政党文化を育てていかなければならない。

この記事へのコメントはありません。

この社説へのコメントをどうぞ。
お名前
URL
コメント

この記事へのトラックバックはありません。

トラックバックはこちら
http://shasetsu.ps.land.to/trackback.cgi/event/1110/