東電値上げ圧縮 料金が適正か不断の点検を

毎日新聞 2012年07月20日

東電料金値上げ あくまで暫定的決着だ

東京電力の家庭向け電気料金の値上げ率は、平均8.47%で決着した。東電が申請した10.28%を経済産業省の専門家会議が圧縮、さらに、消費者庁が削減を求めた。監督官庁以外の「第3の目」で、家庭の負担を抑制したことは評価したい。

しかし、これで東電の収支が悪化するようでは、結局は国民負担が増すことになる。東電は、料金収入の減少分を補うため、一段の合理化に努める必要がある。

東電は、原発停止に伴う火力発電の稼働増で、燃料費が大幅に増加することなどから、12~14年度の平均で、年約6700億円の赤字になるとして、値上げを申請していた。原発事故前の10年度に比べ、燃料費だけで約1兆円増加するという。最大限のコスト削減を前提に、ある程度の料金値上げは避けられないといえるだろう。

しかし、電力料金は国民生活に直結し、産業界の国際競争力にも影響する。厳しい査定で、値上げ幅の圧縮を図るのは当然だ。

5月の申請から決定まで、2カ月かけたにしては、圧縮幅が小さいようにも思える。費用全体の1割にも満たない人件費を経費削減の中心にせざるを得なかったためだ。

国民の負担を軽減するには、費用の4割強を占める燃料費を抑制する必要がある。東電が原価に織り込んだ燃料価格は、平均的な輸入価格よりも割高だ。専門家会議でも、原価を自動的に電気料金に反映させられる「総括原価方式」のもと、コスト削減の意識が足りなかったのではないか、との疑問が呈された。

東電が、調達価格引き下げに努めるのは当然といえる。割安な米国産の新型天然ガス「シェールガス」購入の意向を示しているが、輸入には米政府の許可が必要だ。燃料費抑制には、政府の協力も欠かせない。

東電が、コスト削減を実現できずに赤字になれば、国民負担で穴埋めせざるを得なくなる。東電には、これまでにも増して合理化努力が求められる。

政府は、今回の決定が東電再建策を定めた総合特別事業計画を維持するための「ぎりぎりの水準」と説明する。しかし、今回の値上げ申請は、柏崎刈羽原発を来年度から順次再稼働することを前提にしている。再稼働がない場合、値上げ幅の見直しが避けられなくなってしまう。

そもそも特別事業計画自体、原発の廃炉費用や被災地の除染費用を盛り込まず、新たな支援の仕組みの必要性を指摘するにとどまっている。

東電の将来像はなお不確かなままだ。国と東電の責任分担を含め、あらたな支援の枠組みづくりを急ぐ必要がある。

読売新聞 2012年07月20日

東電値上げ圧縮 料金が適正か不断の点検を

電気料金の値上げによる利用者の負担は重い。政府が東京電力の料金申請を精査し、値上げ幅を圧縮したのは当然だ。

東電の家庭向け電気料金の値上げ幅が、東電が申請した10・28%から8・47%に圧縮されることになった。

経済産業省と消費者庁の有識者会議が、人件費など料金原価の削減を求めた結果だ。値上げは当初予定より2か月遅い9月1日から実施される。4月から値上げが始まった企業などの大口料金も、値上げ幅が縮小される。

東電は、福島第一原子力発電所の事故の影響で、定期検査を終えた原発を再稼働できず、火力発電の燃料費が膨らんでいる。3000億円の経費を削減しても収支は年7000億円不足する。

今回の値上げは、政府が東電に1兆円の公的資金を注入し、実質国有化する前提条件だ。電力の安定供給体制を維持するため、一定の値上げはやむを得ない。

大切なのは、料金原価として不適切な経費が含まれていないかどうか、政府と東電が不断の点検を続け、情報を開示することだ。

政府の料金査定で、管理職の給与削減率が25%から30%以上に拡大された。過去に経営危機で国有化された大手銀行などと同等のカット率であり、妥当だろう。

ただし、東電への批判を背景に政府が必要以上にリストラを強いれば、社員の士気低下や人材流出を招く。その結果、電力供給体制が揺らぎ、消費者利益が損なわれるような事態は避けるべきだ。

新潟県にある柏崎刈羽原発を再稼働すれば、1基ごとに東電の収支は約800億円改善する。安全を確認できた原発から順次、再稼働することが求められる。

料金査定を巡っては、消費者庁が福島原発の安定化費用や賠償経費などを、料金の原価から除外するよう求めた。

だが、それでは東電の財務が悪化して、被害救済や電力供給に甚大な悪影響が及ぶ恐れがあった。関係閣僚の協議で、原価への算入を認めたのは適切な判断だ。

原発事故で生じたコストは最終的に、電気料金による受益者負担か、税金による国民負担でまかなうほかはあるまい。負担のバランスはどうあるべきか、政府は改めて議論する必要がある。

廃炉や除染の費用がどこまで膨らむのか不透明だが、全額を電気料金で負担するのは、とても無理だろう。政府は、廃炉などを対象とした、新たな公的支援の制度化を検討しなければならない。

産経新聞 2012年07月20日

東電値上げ 国の責任で柏崎再稼働を

東京電力の家庭用電気料金の値上げ問題は、人件費削減など合理化拡大で引き上げ幅を平均10・28%から8・47%に圧縮することで決着した。

だが、東電に何より求められているのは安価で安定的な電力供給だ。そのためには、東電の総合特別事業計画でも料金値上げと並び収益改善の柱と位置づけている柏崎刈羽原発の再稼働が欠かせない。野田佳彦政権は、地元の説得を含めて再稼働を主導しなければならない。

9月から実施される値上げは、原発停止で発電比率が8割を超えた火力発電の燃料費上昇などを補うのが目的だ。上げ幅の圧縮は、燃料調達の見直しや資材入札の拡大などで実現するという。

値上げ幅の決着を受け政府は今月末、1兆円の公的資金を注入し東電を実質的に国有化する。東電の資金繰り不安はひとまず解消する。公的資金を使う以上、可能な限りの経費節減は当然で、今後も徹底した合理化は欠かせない。

人件費をめぐっては消費者庁委員会の指摘を受け、管理職の年収減額を約31%、全社員平均で約24%減らすことになった。これは東電の計画を上回り、一時国有化された、りそなホールディングスの減額と肩を並べる水準だ。

とはいえ、東電には事故処理や賠償に加え、安定した電力供給の任務があることも忘れてはならない。技術者などの人材確保や士気低下を招かないよう社員の待遇に一定の留意は必要だろう。

すでに企業向けは4月から16%台半ばの値上げを実施済みだが、こちらも家庭用料金の改定に合わせ、14%台後半に圧縮される。混乱を招かないよう丁寧な説明が求められる。

今後の焦点は、柏崎刈羽原発の再稼働だ。事業計画では来年度中に7基ある柏崎刈羽原発のうち、最大4基の運転再開を目指す。これによって東電は黒字転換を図り、円滑な事故賠償と安定的電力供給につなげる考えだ。

しかし、新潟県の泉田裕彦知事は「事故原因の究明が先で、その前の再稼働論議はない」と厳しい姿勢を変えておらず、事態打開のめどは立っていない。あえて国との対立を強調するかのような態度は問題だ。

東電の経営が揺らげば、賠償や電力供給にも支障を来す。再稼働に向けた野田首相の強い働きかけが必要だ。

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