原子力発電所の安全対策に手抜かりがあってはならない。
経済産業省の原子力安全・保安院が、志賀原子力発電所(石川県)とその周辺で活断層の有無を再調査するよう、北陸電力に指示した。
保安院による志賀原発の設置許可(1988年)の再点検で、1号機の直下に、活断層の存在を疑わせる地層データがあることが判明したためだ。
専門家の意見聴取会では、「典型的な活断層」などの指摘が相次いだ。徹底的な調査が必要だ。
規制当局は、北陸電力の調査結果を、安全性を最優先に、迅速かつ厳正に評価すべきである。
データを見る限り、地層には縦方向の割れ目があり、その両側が上下にはっきりとズレている。北陸電力は活断層ではなく、「地層の傷」と見ているが、支持する専門家は少ない。
活断層は将来、再び活動する恐れのある断層だ。原子炉の直下で動けば、炉心が傾いたり、横転したりする可能性がある。運転中なら、重大事故につながる。
巨大ダムや高架橋などが直下の活断層の活動で破壊・倒壊した事例は、過去に多数ある。
そもそも、政府は、原発の設置許可を審査する際、活断層の真上に原子炉などの重要施設を造ることを認めていない。
調査で活断層の存在が確認されれば、志賀1号機は廃炉を迫られるだろう。安全性の要件を満たせない以上、当然の措置である。
東京電力福島第一原発の事故は巨大津波の可能性が過小評価されたことが大きな要因だった。同じ失敗を繰り返してはならない。
それにしても、今になって基本的な問題点が指摘されたことには驚くばかりだ。電力会社の調査不足に加え、政府の審査の信頼性にも疑問符を付けざるを得ない。
保安院は、関西電力にも大飯原発での再調査を指示した。活断層があるとの指摘が一部にあるためだ。専門家の多くは否定的で「念のため」の措置という。
他の原発は大丈夫なのか、保安院は早急に、原発立地の審査結果を総点検する必要がある。
電力の安定供給には、原発が欠かせない。しかし、再稼働に入った大飯原発のほかは、福島第一原発の事故を受け、定期検査で長期間、止まったままだ。
安全に万全を期すことが、再稼働のかぎとなる。活断層についても調査結果を速やかに公表し、分かりやすく説明することが、地域の理解を得るうえで大切だ。
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