南シナ海 このままでは危ない

朝日新聞 2012年07月14日

南シナ海 このままでは危ない

ここでも「主役」は中国だった。

東南アジア諸国連合(ASEAN)や日米中などの外相による一連の会議が、カンボジアであった。大きなテーマとなったのが、フィリピンやベトナムなどが中国と領有権を争う南シナ海の問題だった。

ASEANは、中国との間で南シナ海で武力行使や紛争が起きた場合の「行動規範」づくりに入ることをめざした。

だが、中国が拒んで実現しなかった。

緊張が続けば、不測の事態が起きかねない。紛争防止のルールづくりを急ぐべきだ。

それにしても中国の強硬な姿勢は目に余る。

12日には、中国の漁船30隻が南シナ海のスプラトリー(南沙)諸島に向かった。領有権を主張するための示威行動であることは明らかだ。

平和な環境があって初めて、この地域の経済発展がある。緊張状態が続いたり、紛争が起きたりすれば、結局、互いの利益を損なう。中国はそのことを肝に銘ずべきだ。

一連の会議では、ASEAN内の亀裂も目についた。

中国に厳しい態度を示すフィリピンやベトナムに対し、中国から多額の援助を受ける議長国のカンボジアが、対中配慮を鮮明にしたのだ。

その結果、ASEAN外相会議は、南シナ海をめぐる文言で合意ができず、共同声明を出せなかった。45回を重ねた同会議で初めてのことである。

そもそもASEANは、域内各国がまとまって行動することで存在感を示し、近年の著しい経済発展につながった。

足並みが乱れれば、国際社会での発言力が低下し、何かと大国の介入を招く。個別の利害を乗り越え、協調態勢を取り戻す知恵を発揮してほしい。

南シナ海問題をめぐり、中国は第三者は介入すべきではないとして米国や日本の関与を牽制(けんせい)してきた。

たしかに日米は直接の当事者ではない。だが、南シナ海は重要な海上交通路で、ASEANとの経済的関係も深い。無関心というわけにはいかない。

クリントン米国務長官が会議に先立って訪れたベトナムでは、対米強硬派も米国の地域への関与を求めるようになってきたという。中国と各国の対立が深まれば、安定の重しとして米国への期待感が強まる。

この地域で中国と米国が角を突き合わせる。そんな事態を避けるためにも、南シナ海の緊張緩和が進むことを望む。

産経新聞 2012年07月15日

南シナ海 「中国の覇権」日米で阻め

カンボジアの首都プノンペンで開かれた東南アジア諸国連合(ASEAN)関連の会議で、南シナ海の覇権を目指す中国の意図が一層鮮明になった。日米両国はASEANと連携して、「中国の海」を阻止する戦略を強化することが急務だ。

一連の会議での最大の焦点は、フィリピンやベトナムなどが中国と対立する南シナ海の領有権問題だった。だが、平和解決に向けた「行動規範」に関するASEAN側の原案に、中国の楊潔●外相が難色を示し、規範は白紙状態になった。

中国とASEANの外相会議で楊外相は、実務者レベルでは「9月から」とされていた協議開始時期についてさえ明確な回答を避けた。行動規範策定への中国の本気度を疑わざるを得ない。

原案は行動規範に法的拘束力を持たせ、「排他的経済水域(EEZ)の尊重」など国連海洋法条約の順守を盛っていた。中国の拒否反応は、南シナ海の大半を領有するとの一方的な主張による。

紛争のほとんどは中国の行動に起因する。今年4月にマニラ沖のスカボロー礁で中国漁船が操業したのを機に、中国とフィリピンの艦船が2カ月余もにらみ合った。この件に言及しようとしたASEAN外相会議の共同声明は、中国の意向を受けた議長国カンボジアの反対で見送られた。

中国は、ベトナムが自国EEZ内だとする天然ガス・石油鉱区の一部の探査を国際入札にかけるとも公表した。南沙、西沙、中沙の3諸島を海南省の「三沙市」に格上げし実効支配を固める動きも見せる。看過できない状況だ。

一連の会議を締めくくるASEAN地域フォーラム(ARF)に参加した日米韓外相が「行動規範の前進」を促す共同声明を出した。重要なシーレーンの「航行の自由」を確保するためにも、連携し対中圧力を強めるべきだ。

「アジア回帰」に転じた米国がASEAN内の親中派であるカンボジアやラオスへの投資拡大に乗り出した効果にも期待したい。

日本固有の領土である尖閣諸島への中国の威嚇を考えれば、南シナ海問題は人ごとではない。その意味で、国会日程の制約から玄葉光一郎外相のプノンペン入りが遅れたのは残念だった。日本外相不在の日中韓・ASEAN外相会議では、中国外相が議論の主導権を握った。苦い教訓とすべきだ。

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