「再生戦略」原案 実効性あるプランなのか

朝日新聞 2012年07月14日

再生戦略 官庁積み上げ型の限界

政府の国家戦略会議が「日本再生戦略」の原案を決めた。デフレ脱却と経済成長への処方箋(せん)という位置づけだ。

経済を活性化させる努力は、財政再建を進めるうえでも欠かせない。既得権に大胆に切り込む規制改革や新分野への目配りが必要だ。政府、とくに戦略会議議長である野田首相に、その気迫はあっただろうか。

原案は、各省庁が検討した政策を国家戦略室がまとめた。環境や医療、農業など様々な分野で450項目に及ぶが、2年前の新成長戦略と同様、相変わらずの「官庁積み上げ型」だ。来年度予算の獲得合戦になだれ込む、という構図である。

新成長戦略の現状は省庁自ら分析している。約370項目のうち、「実施され、成果もあった」は1割止まり。「実施されたが成果が出ていない」が6割を占める。役所が自らの限界を認めたようなものだ。

発想を切り替えるべきだ。企業やNPO、自治体など現場に通じた関係者に自由に活動してもらう。国は規制緩和などで支える。そういう役割分担だ。

参考になるのは、2人乗り中心の「超小型車」である。

「原付きバイク以上、軽自動車未満」の自動車は民間で研究が進んでいたが、拍車をかけたのが36の道府県の連合だ。

公共交通機関に乏しい地方では車が欠かせない。高齢者向けに、通院や買い物など近距離の移動に徹し、小回りがきく安全な車がないか――そんな発想から開発を後押ししてきた。

超小型車は仏ルノーが今春、欧州で発売するなど、海外市場も有望という。ここで保安基準づくりなど市販への環境を整えるのが政府の役割だろう。

農業や社会保障では、株式会社の手足を縛ろうとする意識が役所に根強く残る。

農水省は、1次産業を加工・流通へと広げる6次産業化のため、国費300億円を投じて投資ファンドを作る計画だ。

6次産業化なら、大手スーパーや外食産業が農家との連携を深めて引っ張っている。企業による農業生産法人への出資や土地利用に関する規制をゆるめ、自由に動けるようにすることこそ急ぐべきだ。

子育て支援施設でも、最初から株式会社を遠ざけるのではなく、広く参入を認めたうえで、問題がある業者を退出させる仕組みにしたい。

海外との経済連携の推進など国にしか担えない分野もある。網羅的に項目を並べ立てるのではなく、まず国がやるべき課題に取り組まなければならない。

読売新聞 2012年07月13日

日本再生戦略 目標達成へ政策を絞り込め

日本経済が力強い成長を取り戻すには、効果的な政策に絞り、着実に実行する必要がある。

政府の国家戦略会議が成長力の強化に向け、日本再生戦略の原案をまとめた。

東日本大震災からの復興を加速させるとともに、環境や医療など成長分野を中心に計450項目の施策を推進し、新たな市場と雇用の創出を目指す。

電気自動車など次世代カーの比率を2020年に5割にするなど数値目標を多く掲げ、達成の工程表も示した。

経済界の提案を受け、中小企業の経営強化や、成長を支える資金の供給拡大など、幅広い課題に対応策を示した点は評価できる。

再生戦略は、これらの施策によって、ほぼゼロ成長の日本経済を平均で実質2%、名目3%の高成長に引き上げるという。

だが、肝心なのは大風呂敷を広げることではない。

今回の日本再生戦略は、菅前政権が2年前に策定した「新成長戦略」の焼き直しがほとんどだ。そのうえ、新成長戦略で成果を確認できた政策は約400項目のうち1割にも満たない状況である。

「訪日外国人2500万人」などハードルの高すぎる政策も多い。事業の打ち切りを含め大胆にメリハリをつけ、予算の無駄遣いを避けねばならない。

再生戦略に必要な予算の確保や制度改正はこれからだ。「看板倒れ」にならないよう、政府の取り組みが問われる。達成状況の徹底的な点検が肝要だ。

財政負担の少ない規制改革を上手に活用したい。例えば特区制度を拡充し、震災の被災地で環境都市作りを進めれば、復興と成長強化の一石二鳥となろう。

アジアの需要を取り込むための環太平洋経済連携協定(TPP)について再生戦略が、「協議を進める」としたのは物足りない。早期参加の決意を示すべきだ。

企業の活力を高める方策も欠かせない。海外より高い法人税率は、主要国なみの25~30%への引き下げが急務だ。安全を確認できた原発の再稼働による電力不足の解消や、デフレと円高の克服なども、喫緊の課題と言える。

過去の成長戦略は、個別政策が各府省に委ねられ、既得権のカベや官庁の権益争いで頓挫したケースが多い。再生戦略の成否は、国家戦略会議が司令塔の役割を果たせるかどうかがカギとなる。

国家戦略会議の議長である野田首相が先頭に立ち、政策の推進にあたってもらいたい。

産経新聞 2012年07月13日

「再生戦略」原案 実効性あるプランなのか

政府の国家戦略会議が平成32年までの経済の成長に向けた「日本再生戦略」原案をまとめた。

環境や医療・介護などで規制緩和を進め、100兆円の市場を創出して新たに480万人の雇用を生み出すという。

再生戦略は菅直人前政権が一昨年6月に決めた新成長戦略の「修正版」という位置づけだ。

だが、今回も各省庁の小粒の政策を寄せ集めた印象が拭えない。新成長戦略を上回る約450の政策を並べているが、総花的にみえるのは「これからの日本は何で発展していくのか」という骨太の方向性が示されていないからだ。

産業空洞化や原発の再稼働を含む電力不足対策など足元の問題をどう克服するかも見えず、これでは経済を再活性化し、デフレ脱却を図るという日本経済最大の課題解決につながらない。野田佳彦政権は戦略を肉付けするための工程表を作り、実効性ある計画に練り直してもらいたい。

原案は、新成長戦略で効果が確認できたのは1割しかなかった反省を踏まえ、新たに目標値を盛り込むなどの修正を加えた。

海外市場の成長を取り込む通商戦略は「経済連携協定(EPA)締結国との貿易額を現在の2割から8割に高める」とした。そのためには、中核となる環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)への早期参加が何より欠かせない。

にもかかわらず、再生戦略では「関係国と協議を進める」にとどまり、何を優先すべきかもはっきり示していないのは問題だ。

環境や医療・介護、農業などの規制緩和で新規産業の育成を目指すという。だが、株式会社による保育施設運営や農業参入を認めるなど具体策は盛り込まれず、踏み込み不足といわざるを得ない。

これまでも規制改革は「総論賛成、各論反対」で実現を阻まれてきた。所管省庁などのしがらみを超え、横断的に規制を撤廃・緩和する着実な計画をまとめる必要がある。新たな司令塔も検討すべきではないか。

企業活力を引き出す法人税減税を明示していないのは残念だ。先進国並みに実効税率を引き下げる方針を打ち出せば、国内再投資を通じて雇用増加につながる。

再生戦略は「名目3%、実質2%」の年率目標を掲げる。首相は消費税増税と成長を促す再生戦略を両立させねばならない。

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