目標だった舞台で最高の結果を出した。まさにプロの極みである。
米大リーグのワールドシリーズで、ニューヨーク・ヤンキースがフィラデルフィア・フィリーズを下して優勝し、松井秀喜選手が最優秀選手(MVP)に選ばれた。
大リーグの歴史に名を刻む日本人初の快挙である。「夢みたいです」――。そう喜びを語った松井選手に拍手を送りたい。
優勝を決めた第6戦で、松井選手は先制2ランを含む6打点の大活躍だった。第2戦でも決勝本塁打を放つなど、ヤンキースの9年ぶり27度目のワールドシリーズ制覇に大きく貢献した。だれもが認めるMVPといえるだろう。
石川県の星稜高校、さらに、巨人時代は、並はずれたパワーで本塁打を量産した。1992年の夏の甲子園で、5打席連続して敬遠された逸話はあまりに有名だ。
巨人入団の際には、「ここで打ってくれればという時に打てる魅力ある選手になりたい」と語った。その言葉通り、不動の4番打者として、ファンを魅了した。
しかし、フリーエージェント(FA)宣言をして、2003年、ヤンキースに移籍してからは、期待ほどの結果を出せなかった。ここ数年は、ひざなどの故障にも苦しめられた。本人も歯がゆい思いをしてきたことだろう。
それだけに、「ワールドチャンピオンになるための力になりたい」というヤンキース入団時の抱負を実現させ、感慨を覚えているのではないか。
松井選手は、イチロー選手(シアトル・マリナーズ)と、よく比較される。イチロー選手は今年、ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)で日本連覇の立役者となり、9年連続200安打の大リーグ記録も樹立した。
米球界に確固たる足跡を残しているイチロー選手に比べ、松井選手の影が薄くなっていたことは否定できない。
だが、今回のMVPにより、その存在感をアピールした。35歳となり、ベテランの領域に入ったが、これを自信として豪快な打撃を見せ続けてほしい。
松井選手がMVPとなったことで、米国のファンも日本人選手のレベルの高さを改めて実感したのではないだろうか。
日本の選手たちにとっても発奮材料となるはずだ。折しも、巨人―日本ハムの日本シリーズが佳境に入っている。ワールドシリーズに負けない熱戦を展開して、ファンを楽しませてほしい。
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