大津いじめ自殺 何が起きたか徹底捜査を

毎日新聞 2012年07月13日

いじめ強制捜査 異様事態を生んだのは

大津市で昨年10月、いじめられていた中学2年男子生徒が自殺した問題は、滋賀県警が暴行容疑で強制捜査に踏み切る事態になった。

夜の校舎に捜査員が家宅捜索に入った。極めて異例だ。その映像にせつなくなった人は多いだろう。

状況が動き始めたのは今月に入ってからだ。自殺後の全生徒アンケートで被害生徒が「自殺の練習」をさせられていたという回答があった。それを確証なしとして市教育委員会が公表していなかった。それがこの3日に表面化し、以後、次々にずさんな対応ぶりや、隠蔽(いんぺい)ともいえる非公開姿勢が露呈した。

例えば、「自殺の練習」は確証がないと言いながら、加害者とされる生徒には確認していなかった。

アンケートは2回目があり、そこでは「葬式ごっこ」「自殺の練習と言って首を絞める」などといじめの内容が記されていたが、市教委は遺族側に伝えず、ただされると「見落としていた」と釈明した。

情報があっても一つ一つ丹念な確認調査をしたり、多角的に検証したとは到底いえまい。いったい何のためのアンケートだったか。回答した生徒の失意と不信を思うべきだ。

また、回答などからみて、いじめは多くの生徒が見聞していたほか、気づいていた教師もいた可能性がある。これははっきりさせてほしい。

最悪の事態をなぜ止めることができなかったのか。あらゆる点から検証しないと、今後に生かせない。

県警も、生徒の父からの被害届を3度受理していない。だが、今月、世論が高まるや、本格捜査に乗り出した。在校生らからの聴取に際しては、この9カ月間の心理的動揺や不安に配慮し、細心の注意が要る。

1986年、東京の区立中で男子生徒が自殺した。明らかになったいじめに「葬式ごっこ」もあり、教師の加担も指摘され、社会に衝撃を与えた。2006年には、北海道で小学生女児が自殺し、市教委が遺書にいじめが書かれているのを無視するという問題が表面化した。

その度に対策や指導法の改善が論議されてきた。文部科学省は、いじめはどの子、どの学校でも起こりうるもので、その認定はあくまで被害者側に立つことを求め、詳細な留意点も示している。今回のケースに照らせば、空文に等しい。

なぜこんなお茶濁しまがいの調査をし、事なかれ体質を露呈するようなことになったのか。

それは刑事事件としての捜査・解明とは別に、本来、教育のプロたる学校や教委が自ら検証し、明らかにしなければならないことだ。

教育委員会制度の存在意義もかかる問題だと認識した方がいい。

読売新聞 2012年07月12日

大津いじめ自殺 市教委の対応は看過できない

いじめに苦しんで失われた命の重みを、どう受け止めたのか。教育現場は組織防衛に腐心したとしかみえない。

大津市で昨年10月、市立中学2年の男子生徒が飛び降り自殺した。その対応を巡り、市教育委員会が、いじめの一端を把握しただけで調査を打ち切っていたことがわかった。

自殺直後、遺族の求めで市教委が全校生徒に実施した2回のアンケートには、男子生徒が「自殺の練習をさせられていた」「恐喝されていた」といった回答があった。教師が「見て見ぬふりをしていた」との回答も含まれていた。

いずれも自殺の背景を想起させる内容だ。市教委が真偽を十分確かめることなく、3週間の調査で「事実の確証を得られなかった」と結論づけたのは問題である。

2回目のアンケート結果に至っては、大半が確認作業さえなされていない。「葬式ごっこ」との言葉もあったが、遺族にも説明していなかった。市教委は「見落とした」と釈明している。

一連の市教委の対応は、ずさん極まりないと言うほかない。いじめに向き合う責任感が欠如していると言えよう。

今月になって大津市の越直美市長は調査の欠陥を認め、再調査の実施を決めた。当然だろう。

再調査は、有識者による第三者委員会が担う。なぜ自殺を防げなかったのか。市教委や学校にとって都合の悪い情報を隠そうとしたのではないか。問題点を徹底的に洗い出してもらいたい。

男子生徒の両親は、市などを相手取り損害賠償請求訴訟を起こしている。市は、いじめと自殺の因果関係を否定し、係争中だが、市長は和解の意向も示している。当面は訴訟の中断か延期を申し入れるという。

訴訟の当事者も、再調査に全面的に協力すべきである。

警察の対応にも疑問が残る。

生徒の死後、父親が3回、被害届を出そうとしたが、滋賀県警は「犯罪事実が特定できない」と受理しなかった。真相解明に及び腰だったとみられても仕方がない。11日にようやく捜査班を設置し、市教委や中学校を捜索した。

文部科学省が把握している学校でのいじめの件数は、2010年度に7万7630件を数え、4年ぶりに増加に転じた。表面化していないケースもあるだろう。

どの学校でも、いじめは起こり得る。予兆を見逃さないためには個々の事例を検証し、教訓を教育現場で共有することが大切だ。

産経新聞 2012年07月13日

大津いじめ自殺 何が起きたか徹底捜査を

大津市で昨年10月、いじめを受けた中学2年の男子生徒が飛び降り自殺した問題は、滋賀県警による強制捜査に解明を委ねる事態に発展した。

学校や市教委が捜索対象となること自体が極めて異例だが、いじめの実態をつきとめ二度と悲劇を繰り返さないためにも徹底捜査を求めたい。

捜査は、同級生3人が男子生徒の両手を縛り、口に粘着テープを貼って暴力をふるったなどの暴行容疑で進められている。

いじめの陰湿化、複雑化が進む中では、強制力を伴う捜査を通じてしか明らかにできないこともある。着手にあたっては、学校や市教委のこれまでの対応に信用が置けず、自浄能力も期待できないとの判断もあったようだ。

自殺の後、学校は父親の強い要請で校内アンケートを行ったところ、男子生徒が「自殺の練習」や「葬式ごっこ」を強いられたなどの回答もあったという。

陰湿で苛烈ないじめの内容とともに、教師の見て見ぬふりを指摘する回答もあり、「先生は注意したが、後は一緒になって笑っていた」「先生も怖くて言えなかったらしい」と書いた生徒もいた。

こうした回答を得ながら、おざなりの対応に終始した学校側の責任は重い。調査結果の大半を「伝聞によるもの」として調査を打ち切った市教委の責任も同様だ。真相解明への消極姿勢は、「隠蔽(いんぺい)」と指弾されても仕方がない。

わが子がなぜ自殺したか、遺族が真相を知りたいと願うのは当然だ。文部科学省は昨年6月、自殺の背景調査のあり方について可能な限りの分析評価を行い、遺族の要望を十分に聴取して配慮と説明を行うよう全国の教委に通知していた。だが大津市教委は分析評価も配慮も説明も放棄してきた。

自殺から既に9カ月たち、遅きに失したといわざるを得ない。それでも、全容解明は警察の手に任すしかないだろう。大津署が父親の被害届の受理を3度も断っていたのも、失態というほかない。

県警は「市教委、学校の対応や調査の実態も明らかにしていく」という。まずは何が起きたかを解明してほしい。さらに、自殺後に学校がどう動いたか。市教委の対応や、警察の被害届不受理の経緯も明らかにすべきだ。

いじめは平成22年度で約7万7630件と増えた。目をつぶってやり過ごすことは許されない。

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