小沢新党結成 スローガンだけでは

朝日新聞 2012年07月12日

小沢新党 「人気取り」がにおう

民主党を除名された小沢一郎氏のグループが、新党「国民の生活が第一」を旗揚げした。

代表に選ばれた小沢氏は、結党大会で「反消費増税」「脱原発」などを訴えた。

「民主、自民、公明の3党合意は、国民から政策の選択肢を奪う」とも批判した。

確かに3党が合意すれば、どんな法案でも成立させられる。それにたいする対抗勢力ができたということなら、本来なら歓迎すべきことかもしれない。

だが、思い返してみよう。

この20年間、小沢氏がつくった新党はこれで四つ目だ。

これまでの三つの党は、権力闘争と合従連衡の果て、すでに存在しない。また、その繰り返しではないのか。うんざりする思いの人も多かろう。

こんどは違うというのなら、以下の疑問にしっかり答えてもらわねばならない。

「消費増税の前にやるべきことがある」。小沢氏は大会で何度も強調した。

ならば、どの予算のどこを削れば消費増税が要らないほどの新規財源が生みだせるのか。小沢氏の口から説得力ある考えを聞いたことがない。重要なのは具体策ではないか。

「やるべきこと」は、もちろんやってもらわねば困る。同時に、いまの日本の財政の惨状を考えれば、負担増は避けて通れない。それが分かっているからこそ、小沢氏は細川政権時代の94年に7%の国民福祉税の創設に動いたのではなかったか。

「脱原発」の方向は私たちも異存ない。そこで問いたい。

約1年前、小沢氏は自民党と組んで内閣不信任決議案の可決をめざし、菅首相の「脱原発」方針を葬ろうとした。いつ、どうして考えを変えたのか。

震災から1年4カ月がたった今日に至るも、脱原発や原子力政策のあり方について、小沢氏の口から体系的な考えを聞いたことがない。政権にいたときになぜ、こうすべきだと声をあげなかったのか。

結局、「反消費増税」にしても「脱原発」にしても、まじめな政策論ではなく、単なる人気取りではないのか。

あるいは、橋下徹大阪市長の「大阪維新の会」などと手を組むための方便ではないのか。

小沢氏は政治資金をめぐる刑事裁判の被告である。

一審判決は無罪だったが、国会や国民に対するいっさいの説明責任から逃げ続けている。

けじめをつけないまま、新党の党首として政治の表舞台に立つ。私たちはそもそも、そのことに同意することはできない。

毎日新聞 2012年07月12日

小沢新党結成 スローガンだけでは

民主党を除籍(除名)された小沢一郎氏らが新党「国民の生活が第一」を結成した。代表に就任した小沢氏にとって1993年、自民党を離党して以来、4度目の新党結成である。参加者は衆院37人、参院12人の計49人で、衆院では民主、自民両党に次いで第3党となる。当面、国会での影響力を保ったのは確かだ。

だが、各種の世論調査にみるように有権者の期待は低いのが現状だ。それはなぜか。やはり小沢氏が優先しているのは権力闘争であり、その手法に多くの有権者がうんざりしているからではなかろうか。

小沢氏はあいさつで、新党結成の理由を「政権交代の原点に立ち返った政策を実現させるため」と強調し、まず消費増税法案の撤回に全力を挙げる一方、大震災の被災地を中心とする地域の再生や行財政の抜本改革、デフレ経済の克服、さらに「脱原発」に取り組む考えを示した。また消費増税法案などに関する民主、自民、公明3党の合意を改めて「野合だ」と批判した。

小沢氏が言う通り、「国民の生活が第一」は政治の要諦だ。「増税前にすべきことがある」との主張も間違っていないし、「自立と共生」を理念とし、国民、地域、国家の主権を確立するとした新党の綱領も妥当な内容だろう。ただし、「反増税と脱原発」のスローガンだけで納得するほど有権者は単純ではない。

私たちが再三指摘してきたように、3年近く政権の中にいた小沢氏らは「増税前にすべきこと」について、これまでどれだけ努力してきたのか。そして、増税しないで財政を再建し、社会保障制度を維持するには、どの予算をどう削っていくのか。依然として具体的になっていない。

「原発に代わる新しいエネルギー開発に努める」との考えにも同感するが、小沢氏らが従来、どれだけ脱原発に力を入れてきたのか、これも疑問が残る。菅直人前首相が脱原発を提起した際には、それを支持したわけでなく、逆に菅内閣打倒を進めたのも小沢氏らだったからだ。

小沢氏は93年、非自民の各党派を結集して細川政権を樹立したように、今度は非「民主・自民・公明」を掲げ、大阪維新の会をはじめ地域政党との連携も目指している。しかし、ここでも重要なのは具体政策の一致だ。「反増税、脱原発」だけでは選挙で協力するために便宜的に掲げたスローガンと映ってしまう。

新党を作っては壊してきた小沢氏が権力を奪取したいのであろうことは分かる。だが、権力を取った後、どんな国にしたいのか。それが次第に見えなくなっている。ともかく新党の政策をもっと具体的にすることが第一である。

読売新聞 2012年07月12日

小沢新党 大衆迎合の色濃い「生活第一」

民主、自民に次ぐ第3党の誕生だ。衆院解散・総選挙に向けた政局で、侮れない規模である。

政治を一層混迷させる要因が増えたことに、懸念を抱かざるを得ない。

民主党を除名された小沢一郎元代表らが、都内で新党「国民の生活が第一」の結党大会を開いた。民主党に属していた衆参国会議員49人が新党に参加した。

代表に就任した小沢氏は、「一体改革に名を借りた消費増税法案を撤回させるべく行動していく決意だ」と訴えた。

新党旗揚げの狙いは反消費増税勢力の結集だ。社会保障・税一体改革での民主、自民、公明路線に対する権力闘争とも言えよう。

小沢氏は、河村たかし名古屋市長の「減税日本」など地域政党や野党と緩やかに連携することを目指している。国会では、民主党離党組の「新党きづな」と統一会派を結成する方針だ。

小沢氏は記者会見で、一体改革関連法案の採決時に造反しながら民主党に残った鳩山元首相らと連携していく考えも示した。

野田首相の足を引っ張り続ける鳩山氏の言動には、あきれるばかりだが、党内に残った造反組の数は軽視できない。

首相の政権運営が、一層難しくなることは確かだろう。小沢氏に対抗するためにも、首相は自公両党との協調関係を保つことに全力を挙げねばなるまい。

ただし、新党の発足に高揚感は乏しい。何しろ、「壊し屋」と称される小沢氏の4度目の新党であり、新鮮味に欠ける。

新党に参加した衆院議員のうち3分の2は、選挙地盤の固まっていない新人議員だ。反増税をバネにして次期衆院選で生き残ろうという思惑が、透けて見える。

新党名に選んだ「国民の生活が第一」も、民主党の政権公約(マニフェスト)のキャッチフレーズである。「出来もしないマニフェストを掲げた民主党と同じ道を進んでいくことになるのでは」という自民党の批判は一理ある。

消費増税なしに、どうやって危機的な国家財政を立て直し、毎年1兆円以上増え続けている社会保障費をまかなうのか不透明だ。

小沢氏は、「脱原発を鮮明にしていきたい」とも語った。場当たり的な感は否めない。電力の安定供給をどう実現するのか。

国民の生活本位と言うのなら、具体的かつ丁寧に説明してもらいたい。有権者へのアピールを意識して、大衆迎合的なスローガンを唱えるだけでは無責任である。

産経新聞 2012年07月12日

小沢新党 破綻した政策もち出すな

小沢一郎元民主党代表ら衆参計49人の国会議員が新党「国民の生活が第一」を旗揚げした。

破綻したスローガンを党名にせざるを得ないところに、新党の行き詰まりが見え隠れする。

小沢氏自身としては4回目となる新党であり、衆院会派では民主、自民に次ぐ第三勢力だ。

国家の難局をいかに打開していくかが問われている。重点政策の発表は後回しになったが、野田佳彦政権への批判だけでなく、具体的かつ現実的な代案を明示しなければ、国民の生活が第一という名に値しないだろう。

指摘しておきたいのは、財源面で破綻した民主党マニフェスト(政権公約)のばらまき路線の踏襲は許されないことだ。

小沢氏は新党代表として「政権交代の原点に立ち返った政策を国民に示し、実現するために新党を立ち上げた」と語り、消費税増税法案成立に政治生命を懸ける野田首相との対決姿勢を強調した。

「増税の前にやるべきこと」として、徹底した行財政改革の必要性も主張した。それ自体は、国民の負担を求める前に、政治家の身を削る改革と併せて大いに取り組むべき課題といえる。

だが、小沢氏が同じことを掲げるのには疑問を持たざるを得ない。小沢氏も内容に責任があるマニフェストで、無駄削減で16・8兆円の財源を生み出せるとしながら、実現できなかったからだ。

小沢氏は財源問題について「今までと同じ予算編成や予算配分のやり方だからできない」と、自分なら実現できるように語ってきた。鳩山由紀夫政権で党幹事長を務めた人物が、人ごとのような説明にとどまっている。

消費税増税をめぐる民主、自民、公明3党の修正合意も「国民から政策の選択肢を奪うもの」と厳しく批判した。莫大(ばくだい)な費用を要し、実現は困難として棚上げされた形の最低保障年金などを、再び新党で持ち出そうとしているなら無責任すぎる。

重要課題と位置づけるデフレ脱却について、その具体策を早急に提示すべきだ。「原子力は過渡的エネルギー」として脱原発の方向性を打ち出したが、当面の原発再稼働への考え方も明らかにしなければならない。

党綱領でうたった「国家主権の確立」を実現する安全保障政策も具体的に示してもらいたい。

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