中国政府の船による尖閣諸島周辺での領海侵犯は目に余る。
日本は、外交を通じて中国に自制を促すとともに挑発に対応できる体制を整えねばならない。
中国の漁業監視船3隻が11~12日、尖閣諸島近海の日本の領海を相次いで侵犯した。本来は中国の漁業権益を守るのが役目だが、連日の示威活動は異例だ。
海上保安庁の巡視船の退去要求に対し、中国側は「正当な公務の執行であり、妨害するな。ただちに中国の領海から離れよ」と強い表現で応答し、周辺海域からもすぐには立ち去らなかった。
日本政府が尖閣諸島の国有化方針を打ち出したことへの対抗措置なのだろう。中国政府の強い意志をうかがわせる行動である。
日本の主権に対する侵害は看過できない。玄葉外相がプノンペンでの日中外相会談で楊潔?中国外相に抗議したのは、当然だ。
楊外相は、尖閣諸島を「中国固有の領土だ」と述べ、協議は平行線に終わった。
しかし、中国の不当な主張には粘り強く反論し、行動を改めるよう求めていくことが肝要だ。
3月にも中国巡視船が日本の領海に入った。中国は今後、巡視船を増強する方針だ。海軍拡充も著しい。尖閣諸島周辺海域で緊張が高まることは避けられない。
日本政府は、尖閣諸島に不法上陸される事態に備え、海保や警察の体制強化を図るとともに、必要な法整備を急ぐ必要がある。
国会は、離島での海保による犯罪検挙を認める海上保安庁法改正案について、なぜ審議入りしないのか。早く成立させるべきだ。
中国を抑止するため、最も重要な役割を果たすのが日米同盟だ。米政府が尖閣諸島について、日米共同防衛の対象地域だと明言していることは極めて重要である。
日本政府も、南西諸島など島嶼部の防衛強化を打ち出しており、着実な具体化が大事だ。
中国の海洋進出を懸念しているのは東南アジア諸国連合(ASEAN)各国も同様である。
ASEANはプノンペンでの中国との外相会議で、南シナ海での関係国の活動を法的に拘束する「行動規範」を策定する協議に入るよう提案した。
だが、中国はこれに応じていない。規範ができれば、中国の行動が制約されかねないからだ。
紛争を避けるには、実効性ある海のルールが欠かせない。日米両国はASEAN各国と連携し、中国を説得すべきである。
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