国会事故調報告 「人災」防ぐ危機管理体制を

朝日新聞 2012年07月07日

国会事故調 全原発見直しに生かせ

東京電力・福島第一原発の事故は「人災」である。国会の事故調査委員会(黒川清委員長)が、そう結論づけた。

根本的な原因が政界・官僚・事業者が一体となった原発推進構造と責任感の欠如にあるという認識は、私たちも同じだ。

最終報告書での問題提起を、原発政策の抜本的な見直しに反映させなければならない。

調査委員会による公開での参考人質疑や論点整理の段階では、詰めの甘さや判断根拠の薄弱さが懸念されたが、640ページに及ぶ報告書は、事故の前と後とを丁寧に追跡・分析した内容に仕上がった。

物足りない部分はある。使用済み核燃料処理の問題や、電力会社の株主・債権者の役割といった点は対象外とされた。

何より、国政調査権を有しながら、自民党政権時代にさかのぼった政治の関与や介入についての検証に踏み込まなかったのは残念だ。

それでも、生かすべき指摘は多い。とりわけ注目したいのは3・11以前の電力会社と規制当局の関係だ。

電力会社が安全性より原発の稼働率や訴訟リスクの回避を優先し、耐震基準の改定や過酷事故対策といった規制強化から、いかに逃れようとしたか。

国民の安全確保にもっとも留意すべき原子力安全・保安院や原子力安全委員会が、どのように電力会社に取り込まれていったか。それらが、具体的に描かれている。

報告書は「関係者に共通するのは、およそ原子力を扱う者に許されない無知と慢心」と批判し、東電に対しては「事業者としての資格があるのか」と疑問を突きつけた。国民共有の思いだろう。

問題は、こうしたなれ合いの構図が他の電力会社や原発にも共通するのではないか、という点だ。特に報告書が懸念するのは耐震補強の不備である。

報告書は、福島事故で津波の前に地震によって機器が損傷した可能性を「否定できない」と明記した。再稼働に向けて、政府が主に津波を念頭に進めてきた安全対策は、肝心のところが抜け落ちていないか。全原発の調査にとりかかるべきだ。

せっかくの報告書だが、今後の活用について法律上の規定がない。このままだと「反省して終わり」になりかねない。

憲政史上、初めて国会が独自に設けた調査委員会の成果である。政争の具にすることなく、原子力行政や原子力事業者の監視に反映させる義務を、すべての国会議員が負っている。

毎日新聞 2012年07月06日

原発国会事故調 検証と提言に耳傾けよ

事故は自然災害ではなく「人災」だ。事前に対策を立てる機会が何度もあったのに実行されなかった。根本的原因は、日本の高度経済成長期にまでさかのぼった政府、規制当局、事業者が一体となった原子力推進体制と、人々の命と社会を守るという責任感の欠如にあった−−。

東京電力福島第1原発事故について、こう結論付けた報告書を国会の事故調査委員会が公表した。政府と東電のもたれあいの構図に踏みこみ、歴史的背景に迫った報告書を評価する。事故の未解明部分の究明や廃炉問題などを調査審議する第三者機関の国会設置、国会による原子力規制当局や電気事業者の監視体制の構築など7項目の提言も行った。政府及び国会は真摯(しんし)に受け止め、今後に生かしてほしい。

報告書によれば、東電は原発の稼働率の低下や訴訟への影響を恐れて安全規制の強化に反対し、規制当局もそれを後押ししてきた。原発の耐震補強の必要性や津波により全電源喪失に至る危険性を認識していながら対応を先延ばしし、経済産業省原子力安全・保安院も黙認した。規制当局は専門性でも東電に劣り、「規制する立場とされる立場に逆転関係」が起きて、事業者の「虜(とりこ)」になっていたという。その通りだろう。

危機的状況での官邸や東電の当事者能力の欠如も浮かび上がった。

官邸は東電などから情報を得られず、現場に介入し、指揮命令系統の混乱を生んだ。東電が「全面撤退」を決めた事実はないが、清水正孝社長(当時)が曖昧な連絡に終始したことが官邸の誤解の原因で、東電こそ過剰介入を招いた張本人という。

「時の総理の個人の能力、判断に依存しない危機管理の仕組みの構築」が必要との指摘はもっともだ。

事故がどのように進展したのかについては未解明の部分が多い。現場は高濃度の放射能で汚染されているため、立ち入って重要機器の調査や検証をすることができないことが理由で、やむを得ない面はある。

東電の社内事故調は、事故の主因は津波で地震による主要機器の損傷はないとの見解をまとめているが、国会事故調によれば、地震による損傷がないとは言えず、冷却水漏れの可能性も否定できない。耐震補強の不備に関しては、国内の全原発について調査する必要がある。国会に第三者機関を設置して検証作業を続けるという提言には耳を傾けたい。

報告書が言うとおり、福島原発事故はまだ収束しておらず、被害も継続している。国会事故調は個々の原発の再稼働に関する審議は見送ったが、報告書の指摘事項の再検討なしに、再稼働が認められることがあってはならないはずだ。

読売新聞 2012年07月06日

国会事故調報告 「人災」防ぐ危機管理体制を

国会の東京電力福島原子力発電所事故調査委員会が、報告書で「事故は自然災害ではなく人災」と結論づけた。

政府と東電は、厳しく受け止めるべきだ。重大事故は起こらないという「安全神話」と決別し、原発の安全性向上に全力を挙げねばならない。

報告書によれば、津波による全電源喪失で炉心損傷に至る恐れがあることは、規制当局も東電も事前に認識していた。こうした過酷事故への対策は、米国などではすでに取り組まれていた。

だが、規制当局が東電に「骨抜き」にされ、「意図的な先送り、不作為」により十分な安全対策が取られなかったと明記した。

東電が津波の規模を想定外としていることについても、「責任回避のための方便」としている。

適切な手立てを講じていれば、深刻な事故は防げたはずだ。人災と判断されても仕方がない。

事故後の政府と東電の対応で焦点となっていた原発からの東電の全員撤退については、「現場は考えていなかった」と断定した。全面撤退を阻止したとする菅前首相の言い分は「理解することはできない」との見解を示した。

菅氏が原発に乗り込んだことなど首相官邸の過剰な現場介入や情報提供の遅れによる住民避難の混乱を列挙した。「官邸及び規制当局を含めた危機管理体制は機能しなかった」と総括している。

もっともな指摘である。これを踏まえ、政府は原子力安全行政を再構築しなければならない。

報告書は、危機管理体制の見直しなど7項目を提言した。

過酷事故にも対処できるよう政府の指揮命令系統を一本化することや、「住民の健康と安全を守り、生活基盤を回復する」ための政府の早急な対応を求めている。

ただし、中には見過ごせない内容も含まれている。

例えば、国会が規制当局を監視する常設の委員会を設置し、電力会社に対する国会主導の監査体制も整えるよう求めている点だ。

国会が、新設される原子力規制委員会の業務を点検するのは結構だが、過度に干渉すれば、支障が生じかねない。公正中立であるべき原子力安全行政が、与野党の政争の具となる恐れもある。

規制委人事に関して、第三者機関が相当数の候補者を選び、その中から国会が同意する人物を選ぶ、としていることも問題だ。

人選に第三者が介在すれば、混乱を招くだけだ。政府が責任をもって行うべきである。

産経新聞 2012年07月06日

国会事故調報告 人災防ぐ危機管理体制を

東京電力福島第1原子力発電所事故を検証する国会の事故調査委員会が提出した最終報告書は、事故は「人災」だったとの見解を打ち出し、再発防止策として7項目から成る提言を行った。

参考人招致の過程や論点整理の段階に比べて踏み込んだ内容であり、一定の評価はできる。

提言では政府の危機管理体制の見直しに加え、調べ切れなかった部分の解明に当たる独立調査委員会の国会内設置などを求めている。重要なのは、提言を着実に実行することだ。

報告書は、人災が「歴代及び当時の政府」「原子力安全委員会や原子力安全・保安院など規制当局」「事業者の東電」の3者により引き起こされたと断言した。

発生当時の第1原発は「地震にも津波にも耐えられる保証がない、脆弱(ぜいじゃく)な状態であった」「(対策を講じていれば)事故は防げた可能性はある」とし、政府や東京電力に国民の命を守る責任感が欠けていたとしている。

さらに、政府対応について「官邸政治家は危機管理意識の不足を露呈し、指揮命令系統を破壊した」と当時の菅直人首相らの過剰な現場介入を批判し、住民避難の混乱に関しても官邸などの危機管理機能の不全を指摘した。

そうした観点に立ち、提言で原発事故時の政府、自治体、電力会社の役割と責任の明確化と、政府の危機管理の制度見直しを求めたのは、極めて妥当である。

報告書は「規制する立場と規制される立場が逆転」したとも分析した。東電が情報の優位性を武器に、電気事業連合会などを通じて歴代の規制当局に規制の先送りや基準軟化などを目指し、強い圧力をかけてきたというのである。

膨大な報告書をまとめ上げた労は多とするが、そもそも国会事故調は政府から独立して、強い権限が与えられていた。関係者を証人喚問することができ、発言内容次第では偽証罪にまで問えた。

しかし、権限はほとんど生かされず、参考人聴取が水掛け論に終始したケースも少なくない。東電が第1原発からの全面撤退を政府に申し出たか否かの問題などは典型例だ。残念というほかない。

今後は、提言通り独立の調査委員会を新設し、菅氏らを証人喚問するなどして、真相解明を継続していってほしい。それが事故再発を防ぐ最短の道である。

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