普天間移設 首相は勇気ある決断せよ 国益損なう日米同盟空洞化

朝日新聞 2009年11月21日

普天間移設 鳩山首相の牽引力を問う

米海兵隊の普天間飛行場の移設問題で、鳩山政権が悩み苦しんでいる。

オバマ米政権は自民党政権との3年前の日米合意通り、名護市辺野古へ移すのが唯一現実的だという。

一方で、沖縄県民の多くは、ただでさえ在日米軍基地の75%が集中する沖縄に、普天間に代わる新たな恒久基地を造ることに反対だ。政権交代が実現しても、事態が変わらないのでは、県民の期待は打ち砕かれてしまう。

日米安保体制を支える基地の重要性と、戦後ひたすらその重荷をほぼ一身で耐えてきた沖縄。北朝鮮をはじめ、安全保障にかかわる問題があるにしても、この矛盾は何とかできないか。

そんな国民の思いが、本社の世論調査で日米合意の見直しに対する過半数の支持になっているのだろう。それだけ難しい課題である。

鳩山由紀夫首相がオバマ米大統領との会談で、政権交代を踏まえて事態の困難さを率直に伝えつつ、打開策を探ろうとした姿勢は評価されるべきだし、日米合意の「検証」も急ぎたい。

ただ、そうした過程で、日本の安全保障の柱である同盟を支える基本的な信頼関係が損なわれては困る。その点で、首相や閣僚のこの間の言動には懸念を抱かざるを得ない。

問題の決着は、年内がひとつのメドだろう。岡田克也外相が言うように、来年度予算に移設費用を盛り込むかどうか決める必要がある。1月の名護市長選の結果にげたを預けるような態度は取るべきではない。

なのに首相は首脳会談で、普天間問題を「早期に解決する」といいながら、翌日には必ずしも年内決着を急がない考えを示した。さらに、現行計画を検証する閣僚級の作業部会の位置づけをめぐっても、オバマ氏との認識の食い違いが露呈した。

戸惑っているのは米国だけではない。北沢俊美防衛相が現行案を前提にした打開案を検討し、外相は嘉手納飛行場への統合を探る。首相は県外移設を否定せず、「(最後は)私が案をつくる」と言う。沖縄県民も国民も、これでは政権の意思がどこを向いているのか、分かりようがない。

日米合意では、在日米軍基地の整理・統合やグアムへの海兵隊の移転、その移転経費の日本側負担などがパッケージになっている。大事なのは、首相がこの枠組みそのものを変えるつもりはないと明確に語ることではないか。

そのうえで、もし辺野古以外の移設先を探るのであれば、米国側にはっきりと提起しなければならない。全体の方向性をあいまいにしたまま作業部会の検討を長引かせるのは、米国に対して不誠実であるばかりか、国民の期待をもてあそぶことになりかねない。

首相は自らのメッセージの重さを自覚し、牽引(けんいん)力を発揮すべきなのだ。

毎日新聞 2009年11月20日

オバマ歴訪 北朝鮮の核が試金石だ

日本を皮切りにアジア4カ国歴訪の旅を続けていたオバマ米大統領が最後の訪問先の韓国で、この地にふさわしい発表をした。北朝鮮政策担当のボスワース特別代表を12月8日から平壌に派遣するという。北朝鮮を説得して6カ国協議に復帰させ、核廃棄に向けた交渉を再開できるのか。重大な岐路になる。

もちろんオバマ大統領の今回歴訪は、より幅広いアジア政策の設計図に基づいている。その内容を示したのが先週の東京演説だ。ホワイトハウスのホームページには、この演説を日本、中国、韓国、インドネシアの4カ国語でも読めるよう翻訳が掲げられている。アジア・太平洋地域での影響力拡大に向けた意気込みを示すものだろう。

この狙いは日本の次に訪問したシンガポールでさっそく実現した。主目的のアジア太平洋経済協力会議(APEC)とは別に、米国と東南アジア諸国連合(ASEAN)10カ国による初の首脳会議が実現し、ミャンマー軍事政権との対話に乗り出した米国の政策転換が歓迎された。

オバマ大統領に親近感を示した代表格はインドネシアのユドヨノ大統領だった。少年時代に暮らしたこの国を来年、家族連れで訪ねたいと言うオバマ氏に、ユドヨノ氏は「インドネシアの友人だ」と応じた。

しかし、中国はそうはいかなかった。まず上海で大統領との対話集会に参加した学生は厳選されたメンバーと見られ、中国政府につごうのよい質問が目立った。オバマ大統領はインターネット規制に批判的な発言もしたが、この集会は全国中継されず地元テレビだけが放映した。

北京での胡錦濤国家主席との会談でもオバマ大統領は人権問題に触れたというが公開的でなく、クリントン元大統領やブッシュ前大統領の訪中時より弱腰だと米国内の保守派は批判している。米中の力関係が変化したと見ることもできよう。

オバマ大統領は中国で「米中が合意せずに解決できる世界的な課題などほとんどない」とも発言した。東京演説での「中国を封じ込めない」という宣言の動機にあたる認識だろう。確かに世界経済危機、地球温暖化、天然資源、安全保障など、どれをとっても中国はあまりに巨大なプレーヤーである。米国の新アジア政策の核心は結局、中国にある。

では中国には何が求められるか。一つは北朝鮮の核問題での貢献に違いない。6カ国協議の議長国であり食料やエネルギーなど北朝鮮の命綱を握る国として、強い影響力を発揮する責任が中国にはある。ボスワース氏の訪朝を側面支援する形で、北朝鮮に6カ国協議復帰を強く促すべきである。

読売新聞 2009年11月18日

オバマ初訪中 実利優先で新時代は築けるか

初のアジア歴訪中のオバマ米大統領が、北京で胡錦濤・中国国家主席と会談した。

両首脳は、世界不況の克服、地球環境問題への取り組み、北朝鮮やイランの核問題、アフガニスタン、パキスタンでのテロ対策など幅広く協議し、共同声明として発表した。

すべての問題で合意したわけではないが、両国が互いに協調し、今後も課題解決に向けて、首脳間で話し合っていくことを確認した点に意義があったのだろう。

米中国交正常化から今年で30年を迎えた。オバマ政権の下で、両国は体制の違いを直視しつつも、実利を優先させる新たな時代に入ったとも言える。実利優先はいいが、米国は自由・民主・人権といった原則の尊重を中国に引き続き求めていくべきだ。

来月開かれる気候変動枠組み条約第15回締約国会議(COP15)への対応では、会議の成功に向けて努力することで一致したが、具体策の合意はなかった。

二酸化炭素(CO2)の排出量で世界1位の中国と2位の米国が動いてこそ問題は前進する。

焦点だった人民元の切り上げ問題では、米国は、貿易不均衡の是正に向け、人民元の上昇を望んできた。しかし、中国当局は為替介入を実施し、昨夏ごろから相場はほとんど動いていない。

会談の内容は明らかでないが、人民元を徐々に変動させていくという中国の従来の方針を、大統領が容認したとみられる。

中国は米国債の最大の保有国だ。結局、早急な人民元高を避けたい中国の意向が通った形だ。中国マネーに頼る米国の弱みを浮き彫りにした合意と言えよう。

終了後の両首脳による共同会見で、大統領は少数民族の人権や宗教の自由尊重などが「普遍的な権利である」と強調した。

チベット問題でも亡命政権の最高指導者ダライ・ラマと中国政府の対話を再開するよう求めた。

台湾問題では、最近の中台協議の進展を称賛し、米国は「一つの中国」の原則を認めると同時に、米国内法である「台湾関係法」に基づいて台湾問題を処理していく方針を再確認した。

米国として譲れない原則を表明したのは当然のことだろう。

大統領の訪中に先立ち、中国当局は、人権改善を求める民主活動家や、民間活動団体(NGO)の関係者を一時的に地方に強制連行したり、身柄を拘束したりした。オバマ大統領への直訴を恐れたものだ。極めて遺憾である。

産経新聞 2009年11月19日

普天間作業部会 決断先送りの場にするな

米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾(ぎのわん)市)移設問題を協議する日米閣僚級作業部会の初会合が開かれたが、「迅速な解決」をめざす方針を確認しただけで終わった。

この問題は、米側も地元自治体も日米合意による現行計画が最も現実的な解決としているにもかかわらず、日本政府だけが態度を決めかねて迷走を続けている。これ以上決着が遅れれば、同盟の信頼も失われ、普天間返還による県民負担の軽減もさらに遠のく。鳩山由紀夫首相は直ちに現行計画の履行を決断すべきだ。

移設問題では政権発足以来、現行計画を現実的とする北沢俊美防衛相、「県外移設」を捨て切れない首相、嘉手納基地との統合案にこだわる岡田克也外相とばらばらな中で、明確な方向も決着時期も不透明な状況が続いてきた。

今回の作業部会は、先の日米首脳会談での決裂を回避するための「助け舟」として、米側が提案したいきさつがある。

17日の初協議で、米側はグレグソン国防次官補が基地の運用や予算措置などの面からも「現行計画が唯一実現可能な選択肢だ」と説明した。ところが、岡田外相らは「作業は普天間代替施設に関する検証」と主張し、県外移設や嘉手納統合も含めた代替策を探る構えを崩さなかったという。

次回以降は高級実務者級で進めるというが、議題や日程、出席者なども確定していない。作業部会を決断を先送りするための時間稼ぎの場にしてはならない。

問題は日本政府の態度が決まらないために、現行計画の履行すら困難となるような状況の悪化がどんどん進んでいくことだ。

移設計画のめどが立たないことから、米上院が国防予算関連法案で普天間移設と連動する海兵隊のグアム移転経費を7割削減するなど、現実に支障が出始めている。このままでは米議会や軍内で「同盟国としての日本の誠意を疑う」という意見も浮上しかねない。

移設先の名護市でも、来年1月の市長選に向けて移設反対派が候補を一本化した一方、「政府が決断せず、地元に責任を押しつけるのか」との批判が出ている。

こうした混迷の原因は、ひとえに連日のように発言がぶれ続け、明確な判断を下さない首相にある。また「推移を見守る」と言うのみで、閣内の対応を調整しようとしない平野博文官房長官の傍観者的姿勢も重大な問題だ。

朝日新聞 2009年11月18日

米中首脳会談 「G2」時代の深化と限界

オバマ米大統領が初めて中国を訪れ、胡錦濤国家主席と会談した。両首脳は二国間の問題にとどまらず、経済や安全保障、核、気候変動など世界的な幅広い問題での協調を誓いあった。

オバマ氏は今回のアジア歴訪で最長の日程を中国訪問にあて、中国側は胡氏ら指導者総出でそれに応えた。「米中G2」とも呼ばれるようになった時代を象徴するできごとだ。

米中の経済が切っても切れない関係に深まり、両国の協調なしに21世紀の世界的な問題は解決できないことを、両首脳が確認し合ったともいえる。

たとえば気候変動問題。オバマ氏の言う「世界最大のエネルギー消費者、生産者として」米中は、来月の気候変動枠組み条約第15回締約国会議(COP15)で、具体的な効果のある合意を目指すことで一致した。

オバマ氏が強調する「核なき世界」をめぐっては、来年の核不拡散条約(NPT)再検討会議の成功や、共に批准していない包括的核実験禁止条約(CTBT)の早期批准を約束した。

世界的な経済不況から立ち直る動きが確かでないなか、あらゆる形の保護主義に反対することで一致したが、タイヤや鋼管など米中間でくすぶる貿易摩擦では進展はなかったようだ。

両国の協調はまだ、できることから始めている手探りの段階だ。

北朝鮮やイランの核問題については協力を強めることで一致したものの、中国からの具体的な提案はなかったようだ。エネルギー確保のためイランに圧力をかけにくいなど、中国側の事情がみてとれる。

オバマ政権は発足以来、中国に対して、チベットやウイグルの民族問題や人権、自由といった面で強く働きかけることをせず、内外からの批判も浴びていた。それを意識したのだろう。オバマ氏は胡氏との共同記者発表でチベット問題に言及し、ダライ・ラマ14世側との対話再開を求めた。だが、共同声明には記されなかった。

会談で米国は、強大で繁栄し世界的にさらに大きな役割を果たす中国を歓迎すると表明した。中国は米国を地域の平和と安定、繁栄のために努力するアジア太平洋国家として歓迎すると応じた。アジア太平洋経済協力会議(APEC)の重要性も再確認した。

しかし、オバマ氏が今回の歴訪で強調する「米国のアジア回帰」には、この地域で影響力と存在感を増す中国への牽制(けんせい)の意図も当然含まれる。

米中の協力の深化は一本調子に進むものではなく、「G2」が唱えられることに日本の埋没感を覚える必要はない。北朝鮮問題の解決は米中がかぎを握る。一方で経済や地球環境など、日本なしに米中が突破できない課題は非常に多い。そうした重層的な役割分担を構想する時代になった。

毎日新聞 2009年11月18日

米の対中政策 中国に責任求める責任

アジア歴訪中のオバマ米大統領が北京で中国の胡錦濤国家主席と会談した。「台頭する中国」に対して、「唯一の超大国」である米国が、従来の米中関係を転換しようとするのが今回の会談のねらいだ。

米国は、ブッシュ前大統領時代にアジアを軽視し、中東外交に没頭した。その間に中国は劇的な経済成長をとげた。世界第3位の経済力をつけ、アジア全域に影響力を広げた。おまけに核兵器や宇宙兵器を含む軍事力を増強した。

「初の太平洋大統領」を自任するオバマ大統領は、歴訪の最初の訪問地東京で演説し、「中国を封じ込めない」と封じ込め放棄を保証した。中国には「責任ある役割」を果たすよう求めた。これがオバマ政権の新中国政策である。「戦略的保証(ストラテジック・リアシュアランス)」政策と呼ばれる。

米国のアジア外交は、冷戦時代の「中国封じ込め」政策に代表される対立外交と、ポスト冷戦直後の「積極的関与」政策に始まる協調外交の間を揺れ動いてきた。ブッシュ前政権は、中国を「責任ある利益共有者」として扱う一方で、日米、米韓など2国間同盟によって中国をけん制するヘッジ政策を併用した。

オバマ政権が、中国重視の方向に踏み込んだことは明白である。だが、これが、アジアにおいて米中のみの協調体制を構築しようとするのであれば、アジア版G2構想ではないか。アジアに安定をもたらさない。

インドなどでは、すでに中国脅威論が高まっている。胡主席が最近、マレーシアを訪問してマラッカ海峡を視察し、インド洋への関心を示したこともあって、今後も尾を引くだろう。米国内の保守派からも、「中国が勢力拡大の野望を放棄するはずはない」という懐疑論が出ている。

オバマ大統領は首脳会談で胡主席に地球温暖化問題で中国の貢献を求めたり、チベット問題の解決を促したりした。本意は率直な協調関係を築くためだろう。しかし、中国はまだオバマ政権を信頼しているとは言い難い。米国がミャンマー軍事政権との対話に転換したことなど、中国へのけん制と警戒している。

米国の外交がアジアに関心を向けることは歓迎すべきだ。中国の影響力が強まることも自然の成り行きである。だが、それが覇権争いになったり、米中2国だけの協調関係で終わるのでは、地域の安定はかえって損なわれる恐れがあるだろう。米の責任は重い。

鳩山由紀夫首相は「東アジア共同体」外交をかかげている。あいまいである半面、地域全体に開かれた寛容さが特徴だ。アジアの安定を維持するために、日本も発言力を強めていくべきだ。

読売新聞 2009年11月18日

普天間作業部会 年内決着で対日不信を解け

米海兵隊普天間飛行場の移設問題の結論をこのまま先送りし続ければ、鳩山首相に対する米国の不信は増幅され、日米関係が危機に陥ろう。年内の決着が不可欠だ。

移設問題に関する日米の閣僚級の作業部会が始まり、時期は明示しないまま、「迅速に結論を出す」方針を再確認した。

日本側は、現行計画が決まった経緯などの「検証」を重視する考えを示した。だが、米側は「現行計画が唯一実現可能な選択肢」との立場を改めて強調した。

鳩山政権は既に、「検証」に相当な時間を費やしている。改めてやり直す必要があるのか。先の日米首脳会談の合意通り、「迅速な結論」を最優先すべきだろう。

看過できないのは、鳩山首相がオバマ大統領との合意を翻すような発言を繰り返していることだ。極めて憂慮すべき事態である。

首相は、作業部会は現行計画を前提としないと強調する。「すべての前提を置かない」と、白紙で議論するかのような発言もしている。この理屈は理解しがたい。

オバマ大統領は首脳会談で「基本は守るべきだ」と強調した。首相との共同記者会見でも、「作業部会は日米合意の履行を焦点とする」と述べた。だが、鳩山首相は特に異論をはさまなかった。

大統領が現行計画を作業部会の前提と考えるのは無理もない。日米首脳間の信頼に亀裂が生じるような事態になれば、日本の国益を大きく損ねかねない。

さらに、白紙で議論するとなれば、普天間飛行場の返還に日米が合意した1996年にまで、時計の針を逆戻りさせる。返還は10年以上遅れる可能性が大きいし、日米関係も決定的に悪化しよう。

「迅速な結論」の時期について鳩山首相は、来年1月の「名護市長選の結果に従って方向性を見定めることもある」とも語った。

首相は先月、「市長選の後と言ったつもりはない」などと述べており、発言がぶれ続けている。

そもそも日米同盟の根幹の問題を市長選に委ねることは、国の安全保障の最高責任者として避けるべきだ。沖縄からも、外交問題を地元に押しつける手法は「理不尽だ」との声が出ている。

首相が「沖縄の気持ちが大事」というなら、こうした声こそ真剣に受け止める必要がある。

岡田外相と北沢防衛相は、来年度予算に必要経費を計上する観点から、年内決着の必要性を指摘している。当然であり、首相は担当閣僚の見解を尊重すべきだ。

産経新聞 2009年11月19日

オバマ歴訪 中国の軍拡容認は残念だ

オバマ米大統領は19日、韓国を最後に1週間のアジア歴訪を終える。その焦点になった中国では、胡錦濤国家主席との首脳会談で、戦略的関係を強め、世界規模の問題で協調することなどで合意した。

米国がアジアを重視し、巨大パワーに成長した中国との協力関係を促進すること自体は自然の成り行きである。ただし、「G2」と呼ばれるまでになった両国が実利追求に走り、地域や世界の安寧を損なう恐れがないとはいえない。

というのも米中会談が中国ペースで進み、世界が懸念する問題で米側は踏み込むのを控えた気配が濃厚だからだ。発表された共同声明では、中国の人民元レート操作や知的財産権侵害、人権や民主化抑圧にも触れていない。チベットやウイグルなど中国の少数民族問題も同様だ。

注目された環境問題でも、二酸化炭素排出量が世界のトップ2を占める両国は、削減目標を打ち出さなかった。中国は自国を含む途上国の経済発展を阻害すべきではない、と目標値設定に反対してきており、米側はそれを容認する結果になったとみられる。

われわれが懸念するのは、軍備増強を続ける中国に対し、オバマ大統領が自制も軍事費の透明化も求めなかったことだ。共同声明は、中国中央軍事委の徐才厚副主席の訪米(10月)を高く評価、来年の両軍首脳の相互訪問や各クラスの交流頻繁化で、協力関係を強化するとうたい、信頼醸成の柱の一つにされた。

オバマ訪中に先立ち、米国は「戦略的保証」という、中国に責任分担させる新戦略を打ち出した。大統領の「中国を封じ込める意図はない」との東京演説もその新戦略に沿っていた。

アフガニスタンやパキスタン問題から海賊対策まで、中国の役割への期待が背景にあるが、中国側は中国の軍備増強や海洋進出の容認と受け止めよう。その結果、中国との領土、領海紛争を抱えるインドや東南アジアの軍拡競争に拍車をかける危険性が高まる。

これは日本にとって重大な問題だ。米国は日米安保体制をアジア戦略の基軸にしてきたが、世界規模の問題に対処するため、中国との提携に重心を移したともいえるからだ。日本としては、日米同盟を堅固にし、「米中G2」の独走に歯止めをかけるべきだ。迷走しているひまはない。

朝日新聞 2009年11月16日

アジア政策 横浜会議への重い宿題

シンガポールでのアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議が閉幕し、鳩山由紀夫首相がアジア政策演説を行った。日米同盟を基軸にしつつ、友愛精神をもとに開かれた地域協力を積み重ね、アジアの平和と安定、繁栄を達成する――。

前日にはオバマ米大統領が東京で画期的な演説をした。米国は「太平洋国家」としてアジアへの関与を強め、共同体論議にも積極的にかかわる――。

世界が経済危機に陥ってから1年余り。中国や東南アジアは国際経済の下支えとして、そして将来の成長の牽引(けんいん)役としての存在感をいよいよ増している。中国の政治的な影響力や軍備の増強も、この地域の力の構造を大きく変えつつある。

両首脳の演説は、大転換期を迎えたアジアにどう向き合っていくのかという、日米それぞれの基本姿勢の表明でもあった。首相が米国のアジアへの関与姿勢を歓迎したことは、今後の日米協力の土台となるだろう。

日米両首脳の思いに、APEC会議に集まった多くのリーダーたちも共鳴したのではなかろうか。

ちょうど20年前に創設されたAPECは貿易や投資の自由化努力を通じて、貿易の伸びや成長率が世界の他の地域を上回る。中国や東南アジア諸国の成長にも、環太平洋地域を舞台とする経済や貿易の活発な動きが大きな役割を果たしてきた。

景気回復まで刺激策を続ける。域内の格差是正にも取り組む。それにとどまらず、さらなる発展をめざす新たな成長戦略をつくろう。1年後に横浜で開く首脳会議に向けて、APEC首脳たちはそう宣言した。

来年の議長国、日本が担った責任は重い。94年の歴史的なボゴール宣言は「2010年に先進国で貿易と投資を自由化する」との目標を掲げた。この目標に沿って、21世紀の新たな戦略づくりをリードしなければならない。

容易な作業ではない。米国はAPEC自由貿易圏の実現に関心を示すが、東南アジア諸国は米国主導の自由化交渉には警戒的だ。日本も農林業分野の自由化には及び腰だ。

経済の領域だけではない。中国の影響力の拡大をどうとらえるか。アジアの経済発展には、地域の政治的、軍事的な安定が不可欠だが、これには米中や日中間、また多国間の枠組みをはじめ重層的な外交が重要になる。

来年の横浜会議は、オバマ大統領が再び来日して、日米安保条約改定50周年を記念する機会ともなる。それに向けて、アジアの変化や地球規模の新しい課題に対応して、日米同盟を「深化」させるための協議も始まる。

これを実り豊かな内容にするためにも米軍普天間飛行場の移設問題の打開を急ぎたい。

毎日新聞 2009年11月16日

APEC20年 問われる進化への覚悟

「集まるだけで成功。2回目の開催が約束されれば大成功」--。そんな控えめの期待で始まったアジア太平洋経済協力会議(APEC)が今年、満20歳になった。最初は閣僚級だったが、米国開催の93年、首脳会議が始まり、参加国も12から21カ国・地域まで増えた。

天安門事件(89年)の影響で初め招かれなかった中国は今や中核メンバーだ。域内の経済規模は世界全体の53%を占め、貿易の相互依存度も欧州連合並みまで高まった。

拘束力のない緩やかな合意にとどまってきたことから、民族衣装を着て記念撮影するだけの寄り合い、などと揶揄(やゆ)されることもある。しかし、通関手続きの簡素化やルールの共通化など貿易・投資の円滑化などに向けた地道な努力の効果は決して小さくない。経済協議を通じ、この地域が遅れていた信頼醸成が進んだことも20年の果実だ。

課題は、これから、何をどのように目指すか、である。シンガポールで開いた今年の会議は、首脳宣言に、「自由貿易協定(FTA)への具体的な道筋を模索する」意向を盛り込んだ。来年は日本が議長国だ。これまでは、あくまで努力目標だった貿易自由化を、環太平洋の正式なFTAへと引き上げられるかが最大の焦点になってきた。

今年は、「米国は太平洋国家」と宣言したオバマ大統領の出席により、APECへの米国の関与が再び鮮明になった。国内の失業率が10%を超える中、成長市場であるアジアへの輸出増を通じて雇用を確保する、というのが米国の狙いである。輸出を強化したい米国にとって、長期的なドル安は追い風だ。しかし、ドルの低落はすでにアジアの輸出国にとって頭痛の種になっている。

首脳宣言は通貨問題に直接言及しなかったが、今後、ドルや人民元の相場が重要な議題になるのは避けられまい。来年までに成長戦略を描くというが、政策協調に踏み込む覚悟が試される局面も出てこよう。

鳩山由紀夫首相は、「東アジア共同体構想」への意欲をあらためて表明した。FTAだけでなく温暖化防止や災害・感染症対策、海上輸送の安全など多岐にわたる協力強化を想定しており、「理想と夢を共にする人々」がメンバーになるという。

既存の協調体制、例えばAPECとどう違うのか、「東アジア」がどこまでを指すのか、など不明な点はまだ多い。だが、どのような連携強化を目指すにしても、日本の国内改革が必要なことは明白だ。例えば、自由化交渉で、農業の例外扱いを求め続けたり、「反市場主義」を盾に構造改革を怠るようでは、主導的地位など望めないだろう。

読売新聞 2009年11月16日

APEC 危機後の成長戦略をどう描く

金融危機後の持続的な成長を目指し、環太平洋の国と地域が結束の強化を打ち出した。

日米中など21か国・地域が参加し、シンガポールで開かれたアジア太平洋経済協力会議(APEC)の首脳会議は、首脳宣言と、経済成長に関する特別声明を採択して閉幕した。

日本がAPEC議長国となる来年中に、「域内の長期的な成長戦略を策定する」と明記したことが最大のポイントだ。景気刺激策を継続する方針も強調した。

APECは世界の国内総生産(GDP)の5割を占める巨大な経済圏である。成長センターであるAPECが先導し、金融危機は最悪期をようやく脱した。

しかし、景気回復の先行きは、まだ不透明だ。危機克服後も、連携を強化し、世界経済を牽引(けんいん)するエンジン役となる決意を示したといえよう。

新成長戦略は、地球温暖化対策と調和した持続的な成長や、均衡が取れた成長を目指すものだ。

アジア各国は、過剰消費の米国向けの輸出に過度に依存し、危機を深刻化させた。経済格差も広がった。その教訓が背景にある。

鳩山首相は、地球温暖化対策を域内の成長戦略に取り込む考えを強調した。会議では、「京都議定書」に続く温暖化対策の枠組みについて、政治合意を目指す重要性でも一致した。

二酸化炭素(CO2)の2大排出国の米中両国がメンバーであるAPECとして、どんな成長戦略をまとめるのか。議長国・日本の指導力が厳しく問われよう。

一方、首脳宣言は、保護主義の阻止を強調するとともに、APECをカバーするアジア太平洋自由貿易地域(FTAAP)の具体案の策定を進めると明記した。

アジア重視を明確にしたオバマ米大統領の姿勢を反映し、一歩踏み出した形である。

この地域では、鳩山首相が東アジア共同体構想を掲げるなど、様々な経済連携案が交錯する。何より重要なのは、米国を含めた「開かれた地域協力」を推進することだ。広大な自由貿易圏構想実現への道筋を探る必要がある。

そのためにはまず、APECが合意した貿易・投資の自由化を着実に進めなければならない。域内の先進国の目標年とした来年までに、一定の成果が求められる。

難航している世界貿易機関(WTO)の新多角的貿易交渉(ドーハ・ラウンド)の来年中の決着に向け、APECが主導的な役割を果たすことも大事だ。

産経新聞 2009年11月17日

鳩山首相発言 日米の信頼壊すつもりか

鳩山由紀夫首相の発言が、日米間の信頼関係を損なう状況となっており、極めて遺憾だ。

米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の移設をめぐる閣僚級作業部会に関し、首相は13日の日米首脳会談の直後からオバマ大統領とは異なる見解を強調している。

首脳会談後の共同記者会見で、大統領は作業部会を普天間飛行場の名護市移設を含む「日米合意の実施に焦点をあてる」ものと位置付け、迅速に作業を終えることへの期待感を表明した。鳩山首相も「できるだけ早く解決する」と述べていた。

ところが首相は翌14日、訪問先のシンガポールで「それが前提なら作業グループをつくる必要はない」と、日米合意を前提にしない考えを記者団に表明し、「年末までにと約束したわけではない」とも語った。大統領は14日の東京演説でも、「日米合意を実施するため」と言い切っている。

首脳間の合意が一夜で崩れるようでは、同盟を確認しあう首脳会談の意義を否定してしまう。自民党の石破茂政調会長が「(米側への)背信行為だ」と批判したのはもっともだ。

首相は発言を改め、日米合意さらには政府間の取り決めに基づき年内決着を図ることの重要性を再認識すべきだ。

普天間飛行場問題の決着の遅れは、関連経費を来年度予算にどう盛り込むかという年末の予算編成作業に支障を来す。米議会では、上院が国防予算法案から在沖縄海兵隊8000人のグアム移転経費を大幅に削減した。日本政府が日米合意の履行を明確にしていないことが影響しているという。

政府の対応の遅れが、普天間飛行場の騒音や危険を訴える住民の負担軽減を先送りし、海兵隊移転の円滑な実施も妨げる。キャンプ・シュワブ沿岸部への移設以外に実現性のある選択肢を示せない以上、現行計画の年内決着は現実的かつ不可欠といえる。

来年1月の名護市長選が受け入れ問題を複雑化させる可能性もある。首相自身、首脳会談で「時間がたてばより解決が難しくなる」ことを挙げた。ただ、首相は同市長選の行方を見極めたいとの姿勢も示している。

米軍の抑止力と沖縄の負担の問題を総合的に判断するのは、国の責任だ。地方選の結果を待つような姿勢は、最高責任者としての見識を問われる。

朝日新聞 2009年11月15日

オバマ演説 アジア回帰を歓迎する

米国がアジアに戻ってきた。オバマ米大統領が東京で行った演説を聞いて、そんな思いを深くした。

自らを「米国初の太平洋系大統領」と呼んだのには驚かされた。インドネシアやハワイで育ったことを指しての表現のようだが、発展するアジア太平洋地域に米国として深く関与していく強い意思を示したものだろう。

大統領は日本訪問のあと、シンガポールでアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議、東南アジア諸国連合(ASEAN)10カ国との首脳会議に出席し、そして中国、韓国を回る。この演説は初のアジア歴訪にあたって新政権としての基本姿勢を打ち出す狙いが込められていた。

「核なき世界」を訴えた4月のプラハ演説、イスラム世界に対話と和解を呼びかけた6月のカイロ演説と並ぶ、重要演説といっていい。

今回も、大統領のメッセージは明確だった。「アジア太平洋国家として、地域の未来を形作る論議に関与し、ふさわしい機構に参加したい」。ASEANと日中韓インドなど6カ国で構成する東アジアサミットに「より正式な形でかかわりたい」。

クリントン大統領の時代、米国はアジア太平洋への関与を強める姿勢を見せたが、ブッシュ政権になって外交の主軸は「テロとの戦い」に移り、アジアでの存在感も急速に薄らいだ。イラク戦争や金融危機で、米国の一極パワーは衰えたという見方がアジアにも広がりつつある。

この流れを逆転させたいということなのだろう。中国、インドなど、この地域が21世紀の世界経済をひっぱる存在に成長していくのは明らかだ。米経済の未来がここにかかっているという認識は納得がいく。

政治、安全保障の面で米国の力はなお圧倒的な優位にあるし、平和や民主主義の重しとしての期待も大きい。

日本として、そんな米国がアジアへの関与を深めるのは歓迎すべきことだ。経済だけでなく、朝鮮半島の非核化や温暖化対策などを含めて米国が中国と実務的な協力関係を築くことは、地域の安定と繁栄のために欠かせない。アジア諸国にもさまざまなメリットがあるのではないか。

大統領は、米国がアジア政策を進めるうえで日本との協力関係をその土台としていく考えを示した。沖縄の基地問題を抱えつつも、日米同盟の多面的な発展を言う鳩山由紀夫首相とも響き合う発言だ。米国の東アジアサミット参加などを後押しすべきだ。

北朝鮮の核や拉致問題、ミャンマー(ビルマ)の民主化で、大統領は直接対話を通じての打開への意欲を語った。方向性は支持したい。日本をはじめ関係する国々が足並みをそろえられるよう、丁寧な取り組みを求めたい。

毎日新聞 2009年11月15日

オバマ東京演説 重い注文と見るべきだ

母に連れられて鎌倉を訪ねた時、大仏より抹茶アイスが気に入ったという思い出話でオバマ米大統領は演説を始めた。勝手な応援団のような福井県小浜市民への感謝の言葉も温かい笑いを広げた。日本人の心をつかむ見事なスピーチであった。

しかし、決して軽い演説ではなかった。「核兵器のない世界」の建設を訴えた4月のプラハ演説、イスラム世界との関係の「新たな始まり」をうたった6月のカイロ演説などと同様の重みを持つ包括的なアジア政策演説である。本音を基調としており、そこには日本の負担になりそうな注文も含まれている。これを十分認識しておかねばならない。

もちろん、東京での演説だけに対日配慮は際立っていた。日米同盟の価値を強調し、日本の国際貢献を称賛した。北朝鮮には核廃棄や6カ国協議への復帰を求めただけでなく、日本人拉致問題の解決を迫った。

だが最も重要なメッセージは、米国がアジアにぐいっと近寄り、指導力を強めるという決意表明だろう。米国は「アジア・太平洋国家」として、この地域の将来を決める議論に加わり、創設される機構にも参加する。そんな言及もした。米国抜きの東アジア共同体構想は認めないという意味にもとれる。

経済分野では、アジア諸国が米国への製品輸出で成長するという構造の「限界」を指摘し、米国製品をアジアに輸出すれば米国での雇用創出につながるという見解を示した。国益重視が鮮明で、日本を含むアジア諸国にとって極めて重い注文と言うほかはない。それだけ米国も苦しいということだろう。

アジアへの積極関与の姿勢はブッシュ政権下では見られなかったものだ。オバマ大統領がシンガポールで顔見せするアジア太平洋経済協力会議(APEC)の首脳会議を、前大統領は主に対テロ戦と大量破壊兵器問題の政治的アピールに活用し「アジア軽視」と評された。

一方、オバマ大統領はハワイで生まれインドネシアで少年時代を送った経歴から、東南アジアでも人気が高い。既に動き出している米国とミャンマー軍事政権との直接対話など関与政策が奏功すれば、この地域で増大する一方の中国の影響力に歯止めをかけられるかもしれない。

その中国についてオバマ大統領は演説で、人権などの問題があることに言及しつつ、経済危機脱出や北朝鮮核問題への対処に重要な役割を果たすので協力を続けるという方針を示した。米中両国の関係が深まる流れは不可避だが、両国の利害と勢力争いだけで地域の将来を決めるようなことは許されない。これは日本が注文すべきことである。

読売新聞 2009年11月15日

オバマ演説 アジア戦略の要は日米同盟だ

オバマ米大統領は、アジア歴訪で最初に訪れた東京での演説で、アジアを重視し、この地域の問題に積極的に関与していく考えを強調した。

大統領は、アジア太平洋地域を米国にとって「死活的に重要な地域」と位置づけ、その将来に「米国が責任を担う」と述べた。

米国主導のもとで、アジアの安定と繁栄を確保していく、との意欲を示したものと言えよう。

世界同時不況からの回復は、最大の成長拠点であるアジア経済にかかっている。米国の景気や雇用も、輸出の4分の1を占めるこの地域の経済動向に左右される。

同時に、北朝鮮の核開発、混迷を深めるアフガニスタン情勢、エネルギー安全保障、地球温暖化対策など、アジア諸国との協力なしには解決できない課題も多い。

大統領は演説で、アジアへの関与を強めていく土台は「日米同盟」であることを明確にした。

13日の日米首脳会談で、両首脳は同盟の「深化」で合意した。鳩山首相は、きしみをみせ始めた日米関係を再構築するため、指導力を発揮していかねばならない。

アジアでは、台頭する中国が影響力を拡大するにつれ、相対的に米国の存在感は低下している。今回の演説の背景には、そうした現実への危機感があるのだろう。

大統領は、中国とは「影響圏の拡大を競い合うのではなく、協力分野を開拓することがアジア太平洋地域の発展につながる」とし、「封じ込めの意図はない」と明言した。戦略・経済対話や米中軍事対話も一層拡充する意向だ。

訪中するオバマ大統領が中国首脳との会談で、どのような関係強化策を打ち出すか注目される。

アジアには、鳩山首相の東アジア共同体構想をはじめ、中国提唱の東アジア自由貿易圏など、地域連携強化を模索する様々な動きがある。大統領は、東アジア首脳会議への関与にも言及した。米国の参加に向けた布石だろう。

東アジアで最大の不安定要因である北朝鮮に対し、オバマ大統領は、6か国協議と核拡散防止条約(NPT)への復帰を求めた。北朝鮮が国際的な義務を果たすまで制裁を堅持する構えも見せた。

日本人拉致問題についても、拉致被害者の家族への「全面的な説明」がない限り、「近隣諸国との完全な関係正常化はあり得ない」と断言した。

近く始まる米朝協議を前に、日米が一つであると明示した力強いメッセージだ。揺るぎない日米同盟で成果をあげる必要がある。

産経新聞 2009年11月16日

APEC 次期議長国の軸足は不明

シンガポールで開かれたアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議はアジア太平洋自由貿易地域(FTAAP)構想について「実現のための道筋を2010年中に探る」との宣言を採択し、閉幕した。

しかし、自由貿易構想の主導権をめぐる日本、中国、米国などの思惑が異なるため、具体的な枠組みをどうするかについて今回の会議では示されなかった。

来年は日本を議長国として横浜で首脳会議が開かれる。自由貿易実現に向けた調整役を日本は担う。だが、鳩山由紀夫首相の持論は「東アジア共同体」構想だ。今回は提起しなかったようだが、今後整合性をどう取るのか、具体的な説明が必要だ。

鳩山首相は首脳会議とは別にアジア政策に関して講演し、「東アジア共同体」構想が「(日本の)アジア外交の柱」と説明した。

しかし、この構想には定義が曖昧(あいまい)だとして米国、東南アジア諸国連合(ASEAN)などに戸惑いが広がっている。

鳩山首相は「米国を除外しない」としているが、岡田克也外相は「日中韓、ASEAN、インド、豪、ニュージーランドがメンバー」と「米国除外」を主張し、政権内の考えもばらばらだ。

基軸となる日米同盟や政治・社会体制が異なる中国を共同体の中でどう位置づけるのか。曖昧なままでは日米の分断に利用される心配もある。

そもそも東アジア共同体は中国が数年前に打ち上げた構想だ。だがASEANなどから「アジアにおける米国の影響力を後退させる中国の外交戦略」と見なされ、事実上立ち消えになった話である。それを鳩山首相が改めて持ち出した理由も説明されていない。

イラク、アフガニスタン問題に足をとられて、アジア太平洋に手が回らなかった米国はアジアに本腰を入れる姿勢を示した。オバマ大統領は日本でのアジア外交演説で「米国は太平洋国家」と強調し、米・ASEAN首脳会議では「経済成長を続けるASEAN重視と連携強化」の姿勢を明確にした。米国のアジア重視は、アジアで存在感を増す中国とのバランスの上からも評価できる。

外交の軸足がしっかりしなければ、域内の国・地域は日本の話に耳を傾けまい。鳩山首相には来年の議長国としての役割と米国の関与の重要性を認識してほしい。

朝日新聞 2009年11月14日

日米首脳会談 新しい同盟像描く起点に

ニューヨークでの初顔合わせから2カ月。鳩山由紀夫首相とオバマ米大統領が初の本格会談を行った。

ともに国民の支持を得て政権交代を果たしたが、今は選挙公約と現実との落差に苦悩する似たような政治的立場にある。

大統領は、医療保険制度の改革で議会説得のまっただ中。「テロとの戦い」の主舞台と位置づけたアフガニスタンは泥沼化しつつある。

首相は「コンクリートから人へ」の予算の組み替えの真っ最中。総選挙で訴えた沖縄・普天間飛行場の県外、国外への移設の問題で苦境に立つ。

そんな両首脳にとって、今回の会談は失敗が許されないものだった。そのために幅広い領域での合意を成果として強調したが、日米関係をきしませている普天間問題は先送りした。

だが、そのことはこの会談の意義を損なうものではない。

さまざまな分野で協力を強化する日米同盟の「深化」。半世紀に及んだ自民党政権にとってかわった鳩山民主党政権にとって、日本の安全保障と外交の基本を米国との同盟に置くこと、地球規模の課題でも信頼できる同盟パートナーであり続けること、の2点を米大統領と確認しあった意味は大きい。

中国の経済的、軍事的台頭が著しいこの地域にあって、日米が同盟を基礎に連携し、結び合うことは双方の国益にかなう。地域の安定を保ち、繁栄を続けるためにもそれが欠かせない。両首脳が語り合った同盟強化の根底には、そんな共通理解があるはずだ。

中国自身も地域の安定は望むところだ。来週、中国を訪れる大統領には、良好な日米関係を基盤としつつ、中国とどのように連携していくか、大きな構図で語ってもらいたいと思う。

首脳会談では、地球温暖化対策や「核なき世界」への取り組みなどで一致してあたることを合意した。

鳩山首相が選挙で訴えてきたテーマでもある。従来の、安保と経済に偏りがちだった日米協力が新しい次元に入るということだろう。日本の有権者は歓迎するに違いない。21世紀の同盟のあり方を描き出す起点としたい。

同盟とは、互いの国民が納得感を持ち、信頼しあえるものでなければならない。その点で、普天間をめぐる合意を検証するため閣僚級の作業グループができたことには意味がある。3年前に合意された辺野古移設以外の選択肢がありえないのかどうか、日本の新しい民意を背景に協議できることになったからだ。

首相は普天間問題の難しさについて、大統領に直接、説明した。一方で、できるだけ早く結論を出す考えも伝えた。同盟の根幹にかかわる問題だという認識に立って、首相にはその言葉通りの取り組みを求めたい。

毎日新聞 2009年11月14日

日米首脳会談 連携の舞台が広がった 安保50年へ信頼深めよ

鳩山由紀夫首相とオバマ米大統領が首相官邸で会談し、来年の日米安保条約改定50年へ向け同盟関係を発展させていくことを確認した。日米両国やアジア・太平洋地域の安定に寄与してきた同盟関係を、地球温暖化やエネルギー問題、核拡散など21世紀の世界が直面している地球規模の課題に対処するために強化しようという試みは時代の要請に沿ったものだ。両首脳の合意を評価したい。

日米同盟の再構築が必要とされる背景には国際環境の大きな変化がある。日米安保は冷戦終結を受けた1996年の日米共同宣言で再定義された。だが、21世紀に入り国際テロやイラン、北朝鮮などの核問題、さらには国際社会での中国の急激な影響力増大といった新たな状況が生まれている。気候変動やエネルギー、貧困への対応も急務だ。

こうした中で、「変化」を訴える政権が両国に誕生した。両首脳が掲げる理念と目指す目標は同じ方向にあるように見える。日米同盟の信頼性を高め21世紀にふさわしい協力関係をつくるための同盟再構築は時宜にかなったものといえるだろう。

「緊密で対等な日米同盟」を唱えている鳩山首相は、会談後の記者会見でも「大統領から『対等な日米関係であるべきだ』との話があった。私から核廃絶の問題を聞き、対等な思いで疑問を提起した」と語った。

圧倒的な軍事力を持つ米国との協力関係では、日本は軍事以外の分野での役割を広げる中で相互補完的な関係を構築することを模索すべきだろう。鳩山首相も会見で「日米同盟は安全保障のみに限らない。防災、医療・保険、教育、環境問題など、さまざまなレベルで日米がアジア・太平洋地域を中心に協力していくことによって深化させることができる」と述べた。

アフガニスタン復興のために日本が決めた民生支援(5年間で50億ドル)はその一環に位置づけられよう。現地の治安悪化で本土への要員派遣が困難である以上、現段階では資金拠出が中心になるのはやむをえない。

両首脳が「核兵器のない世界」へ向けた連携強化や地球温暖化対策での協調行動で合意し共同文書として発表したことも評価したい。

「核兵器のない世界を目指す」と宣言したオバマ大統領のプラハ演説以来、核廃絶・核軍縮へ向けた国際的な機運はこれまでになく盛り上がっている。9月の国連安全保障理事会首脳会合では米国が提案した「核なき世界」を目指す決議が全会一致で採択された。

鳩山首相もこれに呼応し、唯一の被爆国として果たすべき道義的責任を強調し、世界の指導者に広島、長崎への訪問を呼びかけた。来年11月に横浜市で開かれるアジア太平洋経済協力会議(APEC)の際に予定される大統領再訪日の機会での実現を望む。

地球温暖化対策は、12月にデンマークで開かれる国連気候変動枠組み条約第15回締約国会議(COP15)で、法的拘束力を持つ「ポスト京都議定書」の採択が来年に先送りされることが確実になっている。温室効果ガスの大幅削減案を示した鳩山首相と国際協調を志向するオバマ大統領は今回の合意に沿って「ポスト京都議定書」の枠組みづくりを主導する責任を負った。

一方、安全保障が同盟の重要な柱であることは論をまたない。同盟の基盤である日米安保条約は、日本による基地提供によって米軍の前方展開を保証し、その抑止力のもとで日本の安全を確保することを前提にしている。しかし、沖縄県の米軍普天間飛行場移設問題がこじれ、その前提が揺れている。

この問題は閣僚級作業グループによる協議を通じ早期に結論を得ることで一致している。会談でも鳩山首相が「作業グループでできるだけ早い時期に解決する」と述べたのに対し、オバマ大統領も「迅速に作業を終わらせたい」と語った。

しかし、米側は名護市のキャンプ・シュワブ沿岸部への移設という現行計画案の実施を求める姿勢を変えていない。一方の日本側は岡田克也外相が普天間の米軍嘉手納基地への統合の可能性をさぐるなど政府方針を決め切れない状態だ。

同盟関係を発展させるには日米安保体制の信頼性を高めることが不可欠である。普天間問題について首相が「最後は私が決める」と言うだけでは国民の不安や米側の疑心をぬぐうことはできない。

また、日本は「核の傘」を中心とする拡大抑止に依存する一方で、鳩山首相が非核三原則の堅持を表明している。日米同盟の下での東アジア共同体構想の位置付けも不明確だ。発足後2カ月がたつ鳩山政権は、こうした点を含め総合的な外交ビジョンを提示すべきである。

読売新聞 2009年11月14日

日米首脳会談 同盟深化へ「普天間」の決着急げ

鳩山首相は、来日したオバマ米大統領との会談で、来年の日米安保条約改定50周年に向けて、同盟関係を重層的に深化させるための政府間協議を開始することで合意した。

同盟を深化させるという以上、米海兵隊普天間飛行場の移設問題は避けて通れない。政府は、いたずらに問題を先送りせず、今年中に現行計画の推進を決断し、決着させるべきだ。

◇戦略協議を深めよ◇

安保条約の根幹は、米国が日本防衛の義務を負う代わりに、日本が米軍の国内駐留を認めるという相互依存の関係にある。

日本は米ソ対立の時代、西側の一員として行動し、冷戦終結後は日米同盟を活用しつつ、世界とアジアの平和に貢献することを目指した。この間の日本の経済発展は同盟関係による幅広い日米協力にあずかるところが大きい。

今後も、従来と同様、日米同盟の強化が日本の国益にかなう道と言えよう。

両首脳は、地球温暖化対策や核軍縮問題で合意文書を発表した。2050年までに日米両国が温室効果ガスの排出量を80%削減する目標を掲げた。「核のない世界」の実現に向けて日米が連携することも盛り込まれた。

環境や核不拡散など地球規模の課題は今、日米の足並みが最もそろっている分野だ。具体的な成果につなげたい。

今回の首脳合意を、言葉だけに終わらせてはなるまい。今後、様々な分野で日米協力を重ねる努力が欠かせない。

世界の安定と繁栄を持続するため、日米がどう連携し、いかに行動するのか。両国が真剣にアイデアを出し合い、戦略的な協議を深めることも重要になる。

オバマ大統領は、来秋に横浜で開かれるアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議に出席するため再来日する見通しだ。戦略協議の成果を、1996年の日米安保共同宣言に次ぐ新共同宣言としてまとめる好機となろう。

◇新安保共同宣言を◇

今回の首脳会談では、大統領来日を失敗させるわけにいかないとの日米共通の判断から、協調関係を演出した。しかし、現在の日米関係にきしみが生じているのは否定しようのない事実だ。

その最大の要因は、鳩山首相が普天間飛行場の移設問題を先送りし続けていることにある。

日米両政府は、この問題を集中的に協議する閣僚級の作業部会を設置することで合意した。だが、作業部会を、問題のさらなる先送りの口実にしてはならない。

首脳会談では、来週にも始まる作業部会で早期に結論を出すことで一致した。鳩山首相も記者会見で、「時間がたてば、より解決が難しくなることを理解している」と表明した。

実際、問題が年内に決着しなければ、普天間飛行場を沖縄県名護市に移設する現行計画は頓挫するとの見方が強い。年末に編成する来年度予算案に移設費が計上されない場合、日米とも現行計画を実行する機運が失われよう。

米議会が海兵隊8000人のグアム移転の予算を大幅に削減する恐れも強まる。

沖縄でも、普天間飛行場の県外移設を求める声が徐々に広がり始めている。鳩山首相が、「沖縄県民の総意が大事だ」などとして、何の具体案もない県外移設に含みを持たせてきたためだ。

来年1月には名護市長選が予定されている。仮に現行計画を容認する現職が敗れれば、移設問題は暗礁に乗り上げかねない。

一市長選の結果が、国全体の安全保障に重大な影響を与える事態は避ける必要がある。

鳩山首相は、オバマ大統領との合意を尊重し、国の責任として、この問題について早急に政治決断を下すべきだ。

在日米軍再編の目的は「米軍の抑止力の維持」と「地元負担の軽減」の両立だった。鳩山政権はこの原点に戻り、後者に偏重した政策を見直すことが求められる。

◇米軍の抑止力は重要だ◇

北朝鮮の核ミサイル開発や、中国の急激な軍事大国化、国際テロの脅威など、日本の安全保障環境はかつてなく厳しい。在日米軍の存在が様々な非常事態に対する強力な抑止力となっている現実を直視することが大切だ。

北朝鮮が弾道ミサイルの発射準備をしている。部隊に不穏な動きがある――。例えば、こうした機密情報が米国から日本に迅速に提供されるのは、単に安保条約が結ばれているからではない。

長年にわたる日米の防衛協力や自衛隊の国際平和協力活動の拡大など、双方の努力の積み重ねに基づく信頼関係があるからだ。

鳩山首相は、日米同盟の意義を改めて熟慮したうえ、普天間問題の解決に取り組んでほしい。

産経新聞 2009年11月15日

オバマ演説 日米基軸こそ「安定の要」

来日したオバマ米大統領はアジア政策に関する初の包括的演説を行い、日本との「揺るぎない同盟」を基軸に、「太平洋国家」としてアジアで指導的役割を発揮していく決意を表明した。

同盟を通じてアジアへの関与を強化し、中国の台頭、北朝鮮、ミャンマー問題などに取り組む意欲を示すものとして評価したい。日本人拉致問題で「拉致解決なしに近隣国との正常化はない」と踏み込んだことも歓迎する。アジア外交にかけるオバマ政権に日本も積極的に呼応し、日米同盟の結束力を高めなければならない。

オバマ氏がハワイ生まれ、インドネシア育ちという経歴も踏まえて「初の太平洋大統領」と訴えたのは、アジアで「米国の存在感や影響力が低下している」という内外の懸念を意識したものだ。

中国の急速な影響力拡大を心配する声は東南アジアでも高まっている。大統領はアジア関与を強める上で日韓、タイなど地域同盟国との緊密な協力を重視するとし、中でも日米同盟を「アジア安定の要だ」と改めて強調した。

「核なき世界」への努力を進める一方、日韓には強力で効果的な核の傘(拡大抑止)を約束した。北朝鮮問題では「脅しには屈しない」として、国連決議や6カ国協議の約束の履行や検証可能な核完全廃棄を要求した。拉致問題でも北に完全な説明を求めた。当然な対応である。

ミャンマー軍事政権に対しては、直接対話に着手するとともに「政治犯の無条件釈放が不可欠」と念を押した。

ただ、対中政策では心配な点も残る。日米などと中国との関係について「封じ込めは求めず、米中協力が他の同盟関係を弱めることにはならない」としつつ、急速な軍事力拡大と透明性の欠如には踏み込まなかった。人権や自由の必要性を指摘する一方で、チベット問題には言及していない。

経済、環境、北朝鮮問題などで中国が責任ある役割を果たすのは当然だが、人権や軍事・安全保障の側面も忘れてはならない。

そうした欠落を埋めるのは、頼れる同盟国たる日本の役割だ。だが、鳩山由紀夫政権は東アジア共同体構想で「米国排除」の懸念を持たれるなど、アジア外交のベクトルが逆向きに見える。アジア太平洋で求められているのは日米基軸の指導力であることを、鳩山首相は改めて認識してほしい。

朝日新聞 2009年11月13日

アフガン支援 できることを大胆に

鳩山政権がアフガニスタンに対する新たな支援策を発表した。

反政府武装勢力タリバーンの元兵士に対する職業訓練や警察支援など、今後5年間で最大50億ドル(約4500億円)を拠出する。

アフガンの治安は悪化するばかりだ。米国は軍の増派を検討しているものの、軍事力だけで事態を好転させるのは難しい。だから、オバマ政権も欧州諸国も国の再建につながる日本の民生支援への期待を高めている。

現状では、日本が本格的に「人」を送り込む支援は難しい。だが、そんななかでも、民生面での支援に思い切った資金を提供するという政府の判断は、理にかなっている。

自公政権時代、政府はインド洋に海上自衛隊を派遣し、多国籍軍の艦艇に給油を続けてきた。鳩山政権は来年1月に打ち切る方針だ。選挙前の主張にそったもので、最近減っている給油需要を考えても納得できる措置だ。

この判断を「小切手外交」と批判する議論がある。インド洋での給油活動は「テロとの戦い」への貢献だ。米国からも評価されてきた。その自衛隊を退かせ、資金提供だけで国際社会への貢献を果たしたつもりになるのはおかしいという理屈だ。巨額の資金援助をしながら国際的には評価されなかった18年前の湾岸戦争の時のトラウマが背景にあるのだろうか。

だが、批判は的外れだ。アフガン安定のために日本ができること、すべきことを、外圧によるのでなく、日本自らが冷静に考えるべきだ。それは、軍事面での役割に限界のある日本として、民生面でできる限りの支援を送ることなのではないのか。

日本のアフガン民生支援には、誇るべき実績がある。ソ連軍の侵攻前にも主要都市での給水や稲作指導にあたってきた。当時の経験は今の国際協力機構(JICA)などのプロジェクトに受け継がれている。

日本が長期的視点でアフガンの国造りを支えることは、結果としてテロリストの温床を断つことにつながる。兵員を派遣している米国などの努力を側面から支えることにもなる。米大統領報道官がさっそく歓迎する声明を出したのも、そうした文脈からだろう。

ただ、50億ドルという支援規模は、具体策を積み上げた結果ではない。オバマ大統領の訪日を控え、給油をやめることに理解を得るための、まず総額ありきの決定だったのも否めない。

カルザイ政権の汚職・腐敗体質の中で日本の資金が消えてしまわないよう、政府は綿密な支援計画をたて、実施面でも厳しく目を光らせる責任がある。これだけの税金をつぎ込むのだ。その意義を日本の納税者に説明するとともに、国際社会に向けて日本の貢献策を積極的に発信してもらいたい。

毎日新聞 2009年11月13日

米高官訪朝 「危険の演出」に動じるな

オバマ大統領のアジア歴訪を前に米政府は北朝鮮政策担当のボスワース特別代表を平壌に派遣すると発表した。もちろん北朝鮮を6カ国協議に復帰させ、核問題解決を進める狙いだ。訪朝のめどは年内である。

この発表の直前、朝鮮半島西方の黄海で北朝鮮と韓国の艦艇が銃撃戦を展開した。北朝鮮が意図的な揺さぶりに出た可能性が極めて高い。

今のところ米韓は注意深く過剰反応を避けているが、この種の「危険の演出」は米朝対話の推移にからむ形で繰り返される恐れがある。これに動じないよう、日本も含めた緊密な連携が不可欠である。

南北交戦の現場は、米韓が海上の軍事境界線と見なす北方限界線(NLL)の南側だ。この線は朝鮮戦争休戦後に米軍主体の国連軍が「これ以上、北上しないライン」として独自に設定した。休戦時点の海軍力の優劣を反映して北朝鮮沿岸に近く、北側船舶の行動をひどく不自由にしている。とはいえ北朝鮮は長年これを事実上尊重し、92年発効の南北合意文書でも暫定的に追認した。

ところが北朝鮮はその後、NLL無効化作戦に転じ、自らに有利な境界線を主張する。99年と02年にはこの線の南で南北が交戦し多数の死傷者が出た。韓国が対北融和路線でない現政権になると、北朝鮮は従来通りの範囲で監視行動する韓国艦艇を「領海侵犯した」と非難し、武力衝突を示唆して圧迫を強めた。今年5月の核実験の直後には「休戦協定の拘束を受けない」とし、米韓船舶の安全を保証しないと宣言した。

つまり北朝鮮はこの海域を、緊張を高めるための手段として利用してきた。今回も同じではないか。北朝鮮警備艇によるNLL越境は今年20回以上に及ぶが、これまでは警告通報で撤退した。ところが今回は5度の通報を無視して南下し続け、海面への警告射撃に韓国艦艇への直接射撃で応じたという。

北朝鮮の狙いは何か。私たちは先に、米朝対話で北朝鮮が自らに都合のよい平和協定締結を求める可能性を指摘した。その必要性を主張する上で、武力衝突の「実績」は危険の証明に使える。タイミングもオバマ大統領に強い印象を与えるにふさわしい。実に遺憾なことながら、北朝鮮はこの種の身勝手な論理で動いてきた経緯があるのだ。核実験やミサイル発射も同様である。

ボスワース氏の訪朝目的についてクリントン米国務長官は「交渉ではない」と明言した。6カ国協議実現から焦点を外さない、という意味だろう。しかし、米朝対話は1度では終わらないという見方が既に支配的だ。北朝鮮の計略にからめとられないよう細心の注意が必要である。

読売新聞 2009年11月12日

天皇在位20年 敬愛される皇室像が定着した

天皇陛下の在位20年を記念する政府主催の式典がきょう12日、東京・国立劇場で開かれる。

陛下は1989年1月7日に即位されたが、その翌年、国の儀式として行われた「即位の礼」と同じ日に合わせての開催となる。

陛下は在位10年、あるいは15年に当たり、昭和天皇の10年、15年とを比較し、平成の時代が「困難や課題を抱えつつも、平穏に過ぎたことを幸せに思います」などと語られてきた。

世界不況が国民生活に影響を与えている。課題は多いものの、昭和の最初の20年と比べて「平穏に過ぎた」という感慨は、多くの国民に共通のものだろう。

陛下は、現行憲法の下で、象徴天皇として即位した。常々「象徴であるという憲法の規定を念頭に置きながら国や国民のために尽くすことが、国民の期待にこたえる道であると思っています」と話されている。

皇后さまとお二人で、「国民と心を共にする」という姿勢を貫かれてきた。親しみやすく、敬愛される皇室像が国民の間に浸透していった20年でもある。

陛下には様々な公務があり、多忙な毎日だ。

国体や全国植樹祭など地方訪問の機会が多い。各地の福祉施設を訪ねて入所者に声をかけられ、災害現場に足を運び被災者を励まされてきた。海外を訪問して国際親善にも貢献されている。

勲章受章者や外国の賓客にお会いになる回数も多い。天皇に受け継がれてきた宮中祭祀(さいし)もある。

陛下ご自身、こうした公務や宮中祭祀を心から大切にされているが、来月には76歳を迎える。健康面に不安がないわけではない。

宮内庁は今年初め、公務の負担軽減策を発表した。皇后さまともども、お体にさわらないよう、今後とも、日程などには十分な配慮をしてほしい。

秋篠宮ご夫妻に悠仁さまが誕生してから、皇位継承問題の論議は沈静化している。新政権もこの問題に特に言及していない。

先月、岡田外相が国会開会式での陛下のお言葉について、「陛下の思いが少しは入ったお言葉をいただく工夫ができないか」と発言した。与野党から「お言葉を政治的にあれこれ言うのは不適切だ」などと批判が相次いだ。

皇室の政治的な利用につながりかねないという観点からの批判であり、当然の反応だ。政治家、ことに閣僚は、皇室についての発言は慎重にしてもらいたい。

産経新聞 2009年11月14日

日米首脳会談 普天間「決着」を現実に 作業部会協議を加速せよ

初来日したオバマ米大統領と鳩山由紀夫首相との首脳会談が行われた。両首脳は12月の気候変動枠組み条約締約国会議(COP15)へ向けた協力で一致し、北朝鮮、イランなどの核不拡散問題やアフガニスタン支援などの分野でも協調と連携を深めていく姿勢をアピールした。

一方で、同盟関係の核心問題の解決には至らなかった。鳩山首相は最大の懸案の米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)移設問題では会談後の共同会見で「前政権の合意は重く受け止める。時間がたつほど解決が困難になることも理解している」と語った。日米が早期決着の必要性で一致したことは評価できるが、決着の方向や具体的時期には触れなかった。

≪演出された成功か≫

大統領は日米同盟を「アジア太平洋政策の礎石」とし、首相は「同盟基軸」を強調した。同盟空洞化の危機が指摘される中、両首脳が同盟の意義を改めて確認したことは当然であり、成果といえよう。同盟の将来も協議する。しかし、普天間問題を解決できなかったことでは「演出された成功」と呼ばれてもやむを得ず、同盟の機能は低下せざるを得ない。

普天間問題は、中国の軍事的台頭や北朝鮮の核・ミサイルなど21世紀の新たな安全保障環境に対処するために練り上げられた米軍再編計画の要だ。3年前、日米が合意した現行計画では、普天間の名護市移設と沖縄駐留海兵隊のグアム移転を中心に、嘉手納以南の米軍施設も返還される。

県民の願いである基地負担の大幅削減や同盟の抑止力の維持強化のためには最も現実的方策だ。

にもかかわらず、鳩山政権の迷走は続き、名護市長が移設受け入れにこだわらない考えを表明した。地元の感情が揺れ動く中で、政府は決断の時期をいまだに示していない。首相は大統領に約束した閣僚級の作業部会での早期解決を実行する責任がある。

危ぶまれるのは鳩山首相の日米同盟への基本認識だ。首相は「重層的な日米同盟の深化」といいながら、自衛隊と米軍による抑止力という同盟の核心部分への評価を避けているようにみえる。

かつて月刊誌に「米軍駐留なき安保実現を目指す」論文を寄稿したことがある。

日米同盟はアジア太平洋地域の安定と繁栄の基盤だ。日本は米国以上に共通の利益を享受してきた。この基盤が崩れたら、日本が失うものは計り知れない。

一方、米国などが強く継続を求めてきた海上自衛隊の補給支援活動も打ち切られる。

アフガン民生支援策では金額以外に詳細は示されていない。自衛隊派遣は排除された。国際社会とともに現地で汗を流す姿勢や意欲はどこにいったのだろうか。

首相は今月2日の衆院予算委員会で、自民党政権下での自衛隊のイラク派遣とインド洋の補給支援に言及し、「対米追従だ」と述べた。日本がテロとの戦いという国際共同行動に参加する意味や実績を否定した発言だ。

昨年度の補給支援の経費は69億円でしかない。鳩山政権は評価されていないというが、国連安全保障理事会が10月に日本の給油への謝意決議を採択したように、各国は感謝を表明している。

≪広がる対日不信感≫

評価され、国際社会が一致して取り組んでいる対テロ行動を日本は来年1月、取りやめ、代替策としてアフガニスタンに今後5年間で50億ドル(約4500億円)などを拠出する。補給経費の60倍以上だ。大統領は謝意を表明したが、日本の撤退はアフガンをテロの温床にはしないとしている国際治安支援部隊(ISAF)の士気をくじきかねない。

普天間や対テロ支援問題、さらに首相の東アジア共同体構想などの影響で、米国でも「日本は頼れる同盟国なのか」と不信感を抱く声が政府、議会、軍部などに着実に広がっている。

米紙ニューヨーク・タイムズは「大統領訪日に日本は冷淡」と報じた。中でも日米関係が1990年代の貿易摩擦以来の対立状態に陥り、しかも今回は安全保障に直結する「戦略的関係をめぐるものだ」と指摘している点は深刻というべきだ。

このような状態では、国民は来年の日米安保条約改定50周年を安心して迎えることはできまい。

オバマ政権は国内外で難問を抱え、窮地にある。「危急時の友人こそ真の友人」という言葉を今こそ心に刻みたい。

朝日新聞 2009年11月12日

オバマ氏来日 問われる同盟管理の意思

オバマ米大統領があす来日する。

ちょうど1年前の大統領選挙で「チェンジ」を訴え、就任後は内政、外交で次々と新機軸を打ち出してきたオバマ氏。こちらも政権交代を果たした鳩山由紀夫首相がオバマ氏とともに、日米関係の新しい地平をどう開いていくか、国際社会が注目する。

ともに地球温暖化対策や核軍縮といった地球規模の課題を重視し、多国間の協調的な外交で取り組もうという政権だ。両首脳は、強固な同盟を確認しつつ、ブッシュ政権、自民党政権の時代とはひと味もふた味も違う構想を描いてほしいと願う。

だが、その同盟ののど元に太いとげがささっている。米海兵隊の普天間飛行場の移設問題だ。ゲーツ国防長官は、大統領来日までに3年前の合意通り名護市辺野古への移設を受け入れるよう迫ったが、日米とも今回の首脳会談では主要な議題にしない方針だ。

代わりに、閣僚級の作業グループで移設問題の決着を急ぐことになった。確かに、この問題で首脳会談全体をこじらせてしまうのは得策ではない。

しかし、事態はますます困難さを増している。沖縄県知事や地元の名護市長は辺野古移設を容認するが、政権交代によって県民や地元住民たちには県外移設への新たな期待が生まれている。方針がなかなか定まらない首相へのいらだちも募る。

一方で、普天間飛行場の危険な状態は一日も早く除かねばならない。日米合意を白紙にすることで、米軍再編という大きな構図のひとこまが埋まらなければ、普天間返還や海兵隊のグアム移転など沖縄の基地負担の軽減策がすべて足踏みしてしまう。

鳩山首相は会談で問題の難しさ、複雑さを率直に説明してはどうか。避けて通るのではなく、同盟の根幹にかかわるからこそ、真剣に意見を交わす。そうした姿勢が大事だ。

首相がいずれどういう決断を下すにせよ、それに基づいて現状を打開するには大変な政治的エネルギーがいる。この問題を早期に解決するという強い政治意思を両首脳が表明し、打開への弾みをつける必要がある。

オバマ氏はNHKのインタビューで、鳩山政権が辺野古移設をめぐる日米合意を検証していることに理解を示しつつ、最終的にはそのまま受け入れるよう期待を表明した。

政権交代があれば、前政権からの政策の変更はありうるし、それによって摩擦が生じることもある。政権交代の時代の同盟管理のあり方が問われているのだ。

来年は日米安保条約改定から50年にあたる。両国で政権が代わったこの機会に、21世紀の新しい日米同盟の姿と役割分担を描き直す作業が始まる。それにふさわしい会談にしたい。

毎日新聞 2009年11月11日

オバマ氏初来日 「同盟深化」の出発点に

オバマ米大統領が13日、初来日し、同夜に鳩山由紀夫首相と会談する。アフガニスタン復興のための支援策や、気候変動問題への取り組み、核軍縮などの諸課題が主なテーマとなる見通しだ。

日本政府は会談に向けて、今年から5年間で50億ドル(約4500億円)のアフガン支援策を決めた。反政府勢力タリバン元兵士の社会復帰のための職業訓練や、警察官給与半額負担の継続、農業・医療支援などが柱となる。インド洋での給油活動に代わる自衛隊派遣は、アフガン本土の治安悪化、連立を組む社民党への配慮などから見送り、資金拠出を中心とする民生支援となった。

それにしても、02年以降のアフガン民生支援が総額約20億ドルだから、大きく膨らむことになる。給油活動中止や、治安悪化で人的貢献が限られることの「代償」として米側と折り合った結果とみられる。これだけの税金を投入する以上、政府は支援内容の到達点などを定期的に国民に報告し、透明性を確保すべきだ。

一方、「普天間」移設問題は、会談の決裂を回避するため両首脳とも突っ込んだ議論は避けるようだ。問題の先送りだが、普天間が両国の大きな懸案である以上、会談の隠れた主役であることは違いない。

普天間をめぐっては、鳩山政権の対応に気になることがある。民主党は衆院選マニフェストで米軍再編や在日米軍基地について「見直しの方向で臨む」とし、鳩山代表は選挙中、沖縄県外への移設を明言していた。「県外移設」は事実上の公約である。

ところが、岡田克也外相は米空軍嘉手納基地への統合を念頭に置き、北沢俊美防衛相は日米合意のキャンプ・シュワブ沿岸部への移設案に傾いている。ともに県内移設である。政権が県外移設を真剣に検討している様子はまったくない。鳩山首相は「沖縄県民の思い」と「日米合意の重さ」の両方を強調するが、日米合意の存在を認識したうえで県外移設を主張したのではなかったのか。混迷する普天間問題解決の道筋をつけるのは鳩山首相の責任である。首脳会談では、少なくとも移設問題に真剣に取り組む両首脳の認識を共有し、解決に向けた道筋を示してもらいたい。

来年は日米安保条約改定から50周年を迎える。日米両国の政権交代を踏まえ、日米同盟の深化に向けた共同作業を開始することは大きな意味がある。鳩山政権も、日米同盟を日本外交の基盤であると強調している。来年11月に横浜市で開催されるアジア太平洋経済協力会議(APEC)には、オバマ大統領が再来日する。今回の会談は、これを目標に日米同盟の「再定義」の取り組みを進める出発点にすべきである。

読売新聞 2009年11月11日

アフガン支援策 「小切手外交」に戻るのか

鳩山政権が取り組むアフガニスタン支援策がまとまった。

元タリバン兵士に対する職業訓練や警察官の給与肩代わりなど、5年間で50億ドル(約4500億円)の民生支援を実施する。従来の支援額と比べ、単年度平均で約4倍となる。

自衛隊による人的貢献策は盛り込まれなかった。政府は、来年1月に期限切れとなるインド洋での給油活動も中止する方針だ。自衛隊のアフガン支援がなくなれば、「小切手外交」に逆戻り、との批判は免れそうにない。

鳩山首相は、来日するオバマ米大統領に支援内容を説明する。巨額の財政支援は、米国をはじめ、欧州各国からも一定の評価が得られるだろう。

50億ドルは無償資金協力や国際機関を通じて拠出されるが、その具体的な使途について、政府は国民に十分に説明することが求められる。支援の効果も検証しつつ、実施していくことが大切だ。

政府は、アフガン人自身が民生安定に取り組む能力を強化するため、国際社会は「背後」から支えるべきだとしている。

このため、人的支援策も民生分野に限り、国際協力機構(JICA)による現地での農業指導の拡充を検討しているという。だが、現地の治安情勢を考えれば、大幅な人員増は困難だ。

アフガンの国軍や警察が十分に機能していない中で、治安維持の前面に立っているのは、欧米など42か国が参加する国際治安支援部隊(ISAF)である。

国連安全保障理事会が先月、ISAFの活動延長を決めた際、非常任理事国の日本も賛成した。

支援策の検討にあたっては、北沢防衛相が、ISAF司令部への要員派遣や、航空自衛隊による空輸支援などの可能性を探った。

民主党の小沢幹事長は以前、ISAFへの自衛隊派遣に前向きな考えを示したことがある。

しかし、これらが十分論じられないまま、自衛隊活用策は見送られた。自衛隊の海外派遣に反対する社民党との連立維持を優先させたということだろう。

かつての湾岸危機の際、当時の海部政権が自衛隊派遣を見送り、財政支援だけで対応して「小切手外交」と批判された苦い経験を思い起こす必要がある。

海上自衛隊による給油活動は国際社会から高く評価されており、中止によって失われるものは大きい。鳩山首相は、給油活動継続の道を探るべきだ。

産経新聞 2009年11月13日

米大統領来日 「不確実な状況」是正せよ

オバマ米大統領が13日来日し、鳩山由紀夫首相との首脳会談に臨む。

直前の日程変更に加えて滞在も一両日と短いが、日本を大統領就任後初めてのアジア歴訪の出発点に位置づけたことを評価したい。日米同盟関係を「アジア太平洋政策の礎石」と重視する姿勢の表れといえよう。

にもかかわらず、初来日が同盟にとって乏しい成果に終わる見通しとなったことは憂慮すべき事態だ。最大の懸案である米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)移設問題は首相の「不決断」のために先送りされる。海上自衛隊の補給支援活動は打ち切られ、代替策となるアフガニスタン・パキスタン民生支援も実質的に人的貢献の伴わないものになりそうだ。

岡田克也外相は11日、シンガポールで行われたクリントン国務長官との会談で、普天間問題をできるだけ早く決着させる方向で一致したが、長官からは「不確実な状況が続くのは好ましくない」と改めて厳しい注文を受けた。

背景には、この問題で鳩山政権が迷走を断ち切れないために、日米関係全般に及ぶ対日不信感がオバマ政権内から米軍、議会にも広がり始めている事情がある。

双方の外交的配慮で、13日夜の首脳会談ではこの問題に踏み込むのを避け、アフガン支援、地球温暖化、核不拡散などのテーマで合意をアピールする見通しだ。しかし、首脳会談で先送りできても、日米閣僚級の作業で普天間問題決着の時期や方向の具体的めどがついているわけではない。

日米が3年前に合意した現行計画は県民の基地負担を削減し、同盟の抑止力を維持する最も現実的な解決策だ。中国や北朝鮮も注目しているだろう。同盟の空洞化を防ぐためにも、首相は早急に決断を下すべきなのである。

大統領は14日、歴訪で最も力点を置くアジア外交演説を行う。日程上の都合でやむを得ないとはいうものの、鳩山首相はこれに立ち会えないという。このすれ違いが日米関係の現実を示しているともいえ、極めて残念だ。

鳩山首相は来年の日米安保条約改定50年に向けて、同盟の将来について両国で包括的見直しを提案するという。だが、抽象的な将来像をいくら語っても、今そこにある足元の基盤固めを怠っては砂上の楼閣に等しい。日米関係の根幹にかかわる同盟管理について首相は認識を改めてもらいたい。

朝日新聞 2009年11月11日

東アジア共同体 自由貿易圏づくりが先だ

「東アジア共同体」をめぐる発言や動きが国際舞台で目立つようになってきた。鳩山由紀夫首相が推進を表明したことも力となって、先の東アジアサミットでは、政府間で域内の経済連携を研究することで合意した。

しかし、首相が語る共同体は、まだぼんやりした理念にすぎない。中国と韓国、東南アジア諸国などはそれぞれ、人口も経済力も格差が著しく、政治体制も異なる。この多様な地域を、欧州連合(EU)のように通貨から政治面まで含めて統合するというのは、なお夢物語に近い。

現実的なのは、「共同体」への足がかりとなる「共通市場」化ではあるまいか。域内での経済連携の拡大による自由貿易圏づくりだ。

ヒト、モノ、カネがスムーズに流れることで域内の経済成長につながる、という未来図である。だが、それさえも簡単なことではない。

輸出競争力がある中国、対日貿易赤字の拡大を恐れる韓国、農産物輸入自由化に踏み切れない日本。それぞれの間で自由貿易協定(FTA)を結ぶことに尻込みしているのが実態だ。

鳩山政権は、まずこうした現状を打開するために汗をかくべきだ。中国、インドを代表格とする新興国はますます繁栄の道を歩む。アジアは世界の成長センターとして発展するだろう。

人口減少と超高齢化で陰りが出ている日本は、この地域の成長力や「アジア内需」と連動して未来を切り開く覚悟が必要である。

まず域内でFTAの機運を盛り上げるような協力を積み重ねてはどうか。たとえば、アジアを縦断する交通路をつくることや、通関手続きや食品の安全基準の整備、環境問題での協力など、互いの利益が期待できるテーマで成果を上げていくことだ。

はるか先の「共同体」についてではあるが、構成メンバーについての意見は割れている。中国は、日中韓と東南アジア諸国連合による13カ国を主張。日本はインドや豪州、ニュージーランドを加えた16カ国の枠組みを提唱し、隔たりは大きい。

米国の扱いも対立の火種だ。米国抜きの共同体をつくろうとする議論に対し、米国は不満を表明している。鳩山政権は、岡田克也外相が「米国まで含めることになっていない」と言うかと思えば、鳩山首相は米国の関与を求める発言をしている。

共同体の構成について結論を急ぐことは問題をこじらせ、生産的ではない。日本はむしろ、政治的にも経済的にも緊密な米国とのFTAをアジア諸国とのFTAと同時に推進することに力を注ぐべきだろう。

東アジアと環太平洋の共通市場化を進めながら「共同体」のありようをじっくり考えていきたい。

読売新聞 2009年11月07日

オバマ来日 政府は日米同盟再構築に動け

米政府と沖縄県がそろって賛成する案に同調せず、両者が反対する案に固執する。日本政府の対応は理解に苦しむ。

沖縄県の米海兵隊普天間飛行場の移設問題は、12日のオバマ米大統領の来日前には決着しないことが確定的となった。日米関係への悪影響は避けられない。極めて遺憾な事態だ。

その責任は、基本的に鳩山政権にある。名護市東海岸に移設する現行計画について、政府は「過去の経緯を検証中」を理由に、受け入れの判断を先送りしている。

岡田外相は、普天間飛行場を空軍嘉手納基地に統合する案を追求する。だが、米国や地元の反対を翻意させるのは困難だろう。

問題は、決着先送りの負の面を政府が認識していないことだ。

政府が実現の見通しもないまま「県外・国外移設」を掲げたため沖縄県内では、これに同調する声が広がり始めた。「ベストではないが、ベターな案」として現行計画に賛成する沖縄県や名護市の立場を苦しくさせている。

米連邦議会でも、海兵隊8000人のグアム移転の予算計上への慎重論がくすぶり出した。

地元負担の軽減を実現するため政府は遅くとも年内に、現行計画での決着を目指す必要がある。

インド洋での海上自衛隊の給油活動も、代替策がないまま来年1月の期限で中止される方向だ。

鳩山首相は「単純な延長はしない」と強調していた。だが、法改正で国会の事前承認を加えて活動を継続するなど、「単純でない延長」もしないつもりのようだ。

政府はアフガニスタン復興支援を大幅に増額する方針だが、資金支援だけでは人的支援の代替策とはならない。ともに汗を流し、一定のリスクを共有することで、国際社会との信頼関係が築かれることを軽視してはなるまい。

鳩山首相は、来年の日米安保条約改定50周年に向けて「同盟を重層的に深化させる」という。

だが、普天間問題の先送りや給油の中止、在日米軍の思いやり予算の削減など、首相発言は同盟関係を後退させることばかりだ。

自衛隊による国際平和協力活動への積極的な参加や、日米防衛協力の強化に取り組まなければ、同盟の深化はあり得ない。

一連の問題の背景の一つには、鳩山政権の政策転換に反対する連立与党の社民党の存在がある。

国の基本である外交・安保政策での安易な妥協は禁物だ。鳩山首相は、社民党を説得してでも、同盟関係の再構築に動くべきだ。

産経新聞 2009年11月12日

天皇在位20年 国と皇室の弥栄を願う 継承問題は白紙から検討を

天皇陛下ご在位20年を迎え、12日、都内で記念式典が行われる。陛下はこれに先立つ会見で「人々が皆で英知を結集し、相携えて協力を進めることにより、日本が現在直面している困難も一つ一つ克服されることを願っております」と述べられた。常に国民を思う陛下のお気持ちが察せられる。

古来、国民は「おおみたから(大御宝)」といわれる。この20年間、陛下はその国民のためにひたすら祈り続けてこられた。

阪神大震災(平成7年)など大災害のたびに、皇后陛下とともに現地に赴き、被災者に直接お声をかけて励まされた。

◆拉致に心痛められる

また、戦後50年の平成7年夏、広島、長崎、沖縄などを訪問し、原爆や地上戦による犠牲者を慰霊された。平成17年には、激戦地のサイパン島を訪れ、「バンザイクリフ」で皇后さまとともに深々と頭を下げられた。

その一方、陛下は宮中祭祀(さいし)を通じ、国民の安寧と豊穣(ほうじょう)を祈られている。どれだけ国民が勇気づけられたか計り知れない。

陛下は会見で拉致問題にも言及され、拉致が行われた当時の日本人がそれを認識せず、「多くの被害者が生じたことは返す返すも残念なことでした。それぞれの人の家族の苦しみは、いかばかりであったかと思います」と被害者家族を思いやられた。皇后さまも7年前、拉致問題で「驚きと悲しみとともに無念さを覚えます」と述べられている。

両陛下のお気持ちをしっかりと受けとめたい。拉致問題解決は国民すべての願いである。政府は一層努力してほしい。

陛下は皇統問題では、こう述べられた。「皇位継承の制度にかかわることについては、国会の論議にゆだねるべきであると思いますが、将来の皇室の在り方については、皇太子とそれを支える秋篠宮の考えが尊重されることが重要だと思います」

現行の皇室典範は男系男子皇族を皇位継承者と定めている。秋篠宮ご夫妻に長男、悠仁(ひさひと)さまが誕生される前は、秋篠宮さまより若い男子皇族がおられず、将来の皇位継承が難しいと思われていた。

このため、小泉内閣時代の平成16年末、皇室典範に関する有識者会議が設けられたが、1年足らずの議論で「女性・女系天皇容認」「男女を問わず長子優先」との結論が出された。女性天皇と女系天皇の区別が不明確なうえ、男系で維持されてきた皇統の歴史を根底から否定するものだった。

そうした国民の批判にもかかわらず、政府は有識者会議の結論に沿った皇室典範改正案を国会に提出しようとしたが、18年9月に悠仁さまがお生まれになったこともあり、改正案は棚上げされた。

◆皇族の裾野広げたい

しかし、悠仁さまを加えても、皇位継承権を持つ男子皇族は7人だけで、将来は依然、不安定だ。有識者会議の結論を白紙に戻し、皇室や歴史に詳しい専門家らによる検討が必要である。時間は十分ある。安易に女系天皇を容認する前に、旧皇族の皇籍復帰や養子制度の導入など男系維持のためのさまざまな方策が考えられる。

昨年暮れ、75歳になられた陛下は体調を崩し、今年からご公務の負担を減らされている。新嘗祭(にいなめさい)(11月23日)などの宮中祭祀も、時間を限って出席される。皇后さまも、ひざのけがが十分に治られていない。皇太子妃殿下、雅子さまのご健康問題も気遣われる。

一日も早いご回復を祈りたい。皇族のご公務の負担を軽減するためにも、皇族を増やし、裾(すそ)野を広げることが必要ではないか。

天皇ご在位20年の間、日本が自立への道を歩み始めたことも大きな特徴だ。PKO協力法(平成4年)やテロ特措法(13年)などにより、自衛隊が国際貢献の舞台で活躍するようになった。愛国心を重視する改正教育基本法(18年)や憲法改正のための国民投票法(19年)が成立した。

先の衆院選で民主党や社民党などによる連立政権が誕生したが、自立への歩みを後戻りさせるようなことは避けるべきである。

韓国が日韓併合100年にあたる来年、天皇のご訪韓を希望しているといわれる。現時点では、政治利用される恐れもあり、慎重な対応が求められる。

天皇は国民のために祈り、国民は天皇に限りない敬意と感謝の念を捧(ささ)げてきた。それが日本の歴史である。天皇と国民の絆(きずな)の強さを改めて肝に銘じるとともに、国と皇室の弥栄(いやさか)を願ってやまない。

産経新聞 2009年11月11日

アフガン支援 湾岸の教訓を忘れたのか

政府は、国際社会によるテロとの戦いで正念場を迎えているアフガニスタンとパキスタンに対し、新たな支援策を正式決定した。アフガンには今後5年間で50億ドル、パキスタンには2年間で10億ドルを拠出する。

オバマ大統領はアジア太平洋経済協力会議(APEC)が開かれるシンガポールや中国などアジア歴訪の皮切りに、13日に来日する。直前の発表を米政府も歓迎した。

しかし、テロとの戦いの一環であるインド洋補給支援を打ち切る代替策としては不十分であると指摘せざるを得ない。

確かに日本の新たな支援パッケージは、アフガン警察官の給与負担や元タリバン兵士の職業訓練、さらに農業分野というこれまでの支援を拡大し、金額的には倍以上だ。が、支援を円滑に進めるのに不可欠な治安の確保という視点を、鳩山政権は欠いている。

アフガンの民生支援には国際協力機構(JICA)を中心に百数十人の専門家を含む文民が派遣されている。しかし、今年8月以降はテロの頻発で最悪の治安状態となり、現在は8~9割がアフガン国外に退避している。

例えば、JICAが現在アフガンに3人派遣している稲作農業指導をカブール東の都市部周辺から北東部の穀倉地帯に拡大するというが、武器をもたない文民の安全を一体だれが確保するのか。

地方復興チーム(PRT)に派遣された日本の文民を国際治安支援部隊(ISAF)のリトアニア兵が警護したことがあった。米韓同盟強化の観点から、中止していたPRTへの警護要員の再派兵を決めた韓国やISAF参加国と比べれば、日本のアフガン支援は自衛隊派遣という選択肢を排除している。実効性の面から問題だ。年間約70億円の補給支援活動は多くの国から感謝されている。鳩山由紀夫首相は補給支援という国際共同行動を継続するよう再検討すべきである。

米テキサス州の陸軍基地で先日、アフガン派遣前の陸軍少佐が銃乱射事件を起こした。アフガン駐留米軍をさらに増派しようとしているオバマ大統領は苦しい立場に追い込まれている。

イラクがクウェートに侵攻した湾岸戦争(1991年)で日本は130億ドルもの支援をしたが、資金のみの協力にとどまったため、「小切手外交」と揶揄(やゆ)された。あの教訓を忘れてはなるまい。

産経新聞 2009年11月10日

壁崩壊20年 冷戦残る地域に同盟必要

東西冷戦の象徴とされたベルリンの壁崩壊から20年たった。その翌月、米ソ首脳は「冷戦終結」を宣言、世界を覆ってきた全面核戦争の恐怖が取り除かれた。

だが、この20年で「世界がより安全で平和になった」とは言えない。欧州統合や世界経済のグローバル化が進んだ半面、アジアでは北朝鮮の核・ミサイル脅威が顕在化した。中国は軍事大国化の道を突き進み、ロシアでは強権政治復活が懸念される。テロや地球環境、貧困などの新たな脅威と課題は世界に広がった。

北東アジアに冷戦構造が厳然と残る中で、日本が改めて認識すべきは、日米安保条約を基盤とする日米同盟の活力が引き続き地域の安定と繁栄のかぎを握るということだ。冷戦時代と同じように、21世紀も日米の認識の共有を深め、ますます同盟の強化・充実を図っていく必要がある。

壁の崩壊直後、世界が平和になり、民主主義が隅々まで広がるかのような「平和の配当」論が国際社会を覆った。今ふり返って、それが希望的観測にすぎなかったことは明らかといっていい。

グローバル化は一方で大量破壊兵器技術やテロ・犯罪知識の拡散を劇的に加速した。北朝鮮とイランは核問題での連携も指摘され、テロや海賊、国際犯罪も場所を選ばなくなっている。

この間に米国はイラク、アフガニスタンに足をとられ、世界金融危機にも見舞われた。世界秩序の「多極化、無極化」シフトがいわれる中で、オバマ米政権は国際協調やネットワーク型の課題解決の手法を通じて米国の指導力回復を模索しているのが現状だ。

冷戦終結後、日米首脳が同盟のあり方を再定義したのは、壁崩壊から7年後の1996年だった。「21世紀に向けた同盟」と題する日米安保共同宣言は、同盟の終わりを告げるどころか、アジア太平洋の「安定と繁栄を維持する基礎」という新たな息吹を与えた。この認識と針路は今も正しい。

問題は、鳩山由紀夫政権にこうした歴史認識と現実的な世界観が備わっているのかどうかだ。

中国の海洋進出は東南アジアにも懸念を広げつつある。日米同盟には地域の安定を守る役割が期待される。オバマ大統領来日を同盟強化の新たな出発点としなければならない。そのためにも、鳩山首相は米軍再編問題など同盟の懸案解決に全力を注ぐべきだ。

産経新聞 2009年11月06日

普天間移設 首相は勇気ある決断せよ 国益損なう日米同盟空洞化

12日からのオバマ米大統領訪日を名実ともに成功させ、日米同盟関係を深化させることは、鳩山政権の大きな願いだろう。

そのためには最大の懸案である米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)移設問題を決着させねばならない。だが、鳩山由紀夫首相は県内移設への地元の反対機運に配慮しているためか、結論を先送りする意向のようだ。

それで日米関係がどうなるかである。日米首脳会談は開かれようが、おざなりの域を出まい。

移設に関する政府間の約束を履行できず、インド洋での補給支援も打ち切るという日本への失望と幻滅を抱いたまま、大統領は次の訪問地に向かうことになる。

◆現行計画受け入れを

同盟空洞化という危機が現出しようとしている。日本の最高指導者は国益を見据えた行動で危機を乗り越えるときを迎えている。

鳩山首相には、3年前に日米両政府が合意したキャンプ・シュワブ沿岸部(同県名護市)移設という現行計画を受け入れる決断を強く求めたい。

5日、大統領訪日前に普天間問題を決着させる最後の機会が失われた。この日来日したキャンベル米国務次官補は岡田克也外相と外務省で会談したが、問題の打開には至らなかった。日本のアフガニスタン新支援策や気候変動問題などとともに、首脳会談について外交ルートで調整を続けることの確認にとどまった。

普天間問題が迷走する中で日米関係全般に危機を拡大する事態が広がりを見せている。

普天間移設は1996年に日米合意を見て以来、14年越しの懸案である。日米両国は2014年をめどに普天間を名護市に移設し、合わせて沖縄駐留海兵隊と家族計1万7千人をグアムに移転するなどの現行計画(再編ロードマップ)で最終合意した。

現行計画が履行されなければ、地元の基地負担軽減と同盟の抑止力向上という目的が果たせなくなるだけでなく、日本の安全やアジア太平洋全体の米軍戦略にも重大な支障を生じる。

住民が求めてきた普天間全面返還や嘉手納基地以南の米軍基地・施設の返還も白紙に戻る。

先に来日したゲーツ国防長官のこの警告を日本側は真摯(しんし)に受け止めたのだろうか。国防長官が自衛隊の栄誉礼や晩餐(ばんさん)会を拒絶した異例の出来事を見過ごすべきではなかった。

だが、鳩山政権はこれを軽視したふしがある。首相、外相、防衛相の見解がばらばらに迷走し、首相自身も決着の時期や方向について明示してこなかった。

このため米国務省が「日本が米国とどのような関係を築きたいかにかかっている」(報道官)と日米同盟関係全般への影響について警鐘を鳴らした。

米民主党の知日派で知られるダニエル・イノウエ上院歳出委員長も4日、訪米した仲井真弘多沖縄県知事に「日本での混乱が続くなら、米議員の中で日米同盟に対する疑念が生じるかもしれない」と指摘するなど、米議会、米軍内でも対日不信の広がりが懸念される情勢となっている。

国務省側は普天間移設問題で「決着に期限を設ける考えはない」としているが、これは日米同盟関係の決定的亀裂を回避する配慮でしかない。

◆米に募る対日不信感

岡田外相、北沢俊美防衛相らは大統領訪日前にアフガン新支援策を協議しているが、アフガン本土の国際治安支援部隊(ISAF)に自衛隊を派遣する案はなく、元タリバン兵らの職業訓練、農地開発などに限られそうだ。

これでは13日に予定される日米首脳会談は地球環境問題やアフガン支援などに限定され、同盟の結束と強化の象徴となる米軍再編問題には触れない空疎な会談となる可能性が大きい。

鳩山政権首脳部が認識すべきことは、政府間の合意は国際約束であることだ。政権交代した多くの政府は外交の継続性を重視し、尊重する。合意を覆すことが自国の信頼を失墜しかねないと判断するからである。外交当局者によると、日本はこれまで国際約束をほごにしたことはないという。

10月28日の北朝鮮の労働新聞は「予測できない米日関係」と題して「世論は日米間の不協和音が今後さらに大きくなるものと予想している」と亀裂の深まりに期待を表明した。中国を含め、日米同盟を空洞化させて喜ぶ国があることを忘れてはなるまい。

産経新聞 2009年11月05日

外相訪米見送り 日米の「危機」放置するな

米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)移設問題の打開をめざして岡田克也外相が希望したクリントン米国務長官との直接会談は見送られることとなった。

外相は5日、来日するキャンベル国務次官補と会談する。12日のオバマ大統領訪日前に決着させる最後の機会といえる。普天間問題は大統領訪日の最大の懸案であり、解決の遅れは危機を日米関係全般に広げかねない。鳩山由紀夫首相は速やかに閣内意思を統一し、日米合意に沿った現行計画受け入れを決断すべきだ。

この問題で岡田外相は「県外移設は事実上不可能」として米軍嘉手納基地への統合案を浮上させ、オバマ訪日を前にした今週末に訪米してクリントン長官と直接協議する道を模索してきた。

当初の訪米構想には問題もあった。第一は、移設をめぐる主要閣僚の見解がばらばらに迷走しており、第二に嘉手納統合案自体が過去にも検証され、米軍も地元住民も強く反対していることだ。

しかし、現行計画以外に代替選択肢がないことが日米外相間で確定され、結果として現行計画での決着につながるなら、意味は十分ある。その点で、平野博文官房長官が「国会日程上、調整が困難」との理由で外相訪米を見送った判断は理解に苦しむといわざるを得ず、残念だ。

普天間をめぐる迷走に米政府は懸念を高めている。国務省報道官は「最終的に日本が米国とどんな関係を築きたいのかにかかっている」と、異例の発言で同盟関係全般への悪影響を警告した。

沖縄では政府の不決断に不安を表明する市や町が増え、住民感情も揺れている。また、仲井真弘多(ひろかず)沖縄県知事が米軍基地を抱える首長らの代表として訪米するなど、米軍再編問題は沖縄県以外へも広がりを見せ始めている。

こうした緊急の時に、参院予算委員会出席を優先して外相訪米を断念させた政権首脳部は、日米同盟の根幹にかかわる重大事に対する感覚が鈍すぎるのではないか。認識不足として強く反省を求めたい。決定を再検討すべきだ。

鳩山首相も「できる限り県民の意思に沿った結論を出したい」と述べ、この期に及んでも決断の時期も方向も示そうとしない。国家の安全をあずかる指導者として極めて無責任だ。大統領訪日を実のあるものにするために、早急に決断と指導力を発揮すべきだ。

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