太陽光や風力など再生可能エネルギーを普及させる制度が、多くの課題を抱えたまま、1日にスタートした。慎重な運用が求められよう。
再生エネで発電した電気の買い取りを電力会社に義務づける「固定価格買い取り制度」のことである。電力会社は最長20年間、最初に適用された価格で買い取りを続ける仕組みだ。
買い取り価格は太陽光が1キロ・ワット時あたり42円、風力は23円などで、買い取り制度で先行するドイツの2倍前後も高い。再生エネを後押しするため、ほぼ発電業者の要望通りの価格を採用した。
温室効果ガスを出さず、国内自給できる再生エネ普及への期待は大きい。支援策は必要だろう。
ただし、買い取り費用は電気料金に上乗せされる。利用者の過度な負担は避けるべきだ。
初年度は一般家庭で月87円の負担となる。この程度なら許容できる人も多いだろうが、買い取り規模の拡大につれて負担が膨らむ点に注意しなければならない。
ドイツは近年、数度にわたって買い取り価格を下げたが、家庭の負担は月1000円を超え、国民の不満が強まっている。
価格が下がる直前に新たな発電設備を導入する「駆け込み参入」で利益を稼ぐケースも多い。
日本ではすでに、大手企業が相次いで大規模太陽光発電(メガソーラー)計画を進めている。価格が高いうちに、資金の豊富な企業が「先行利得」を狙った参入ラッシュが起きれば、電気料金は跳ね上がりかねない。
海外の事例を詳細に調べ、教訓を生かすことが肝心だ。
政府は買い取り制をいずれ見直すとしているが、できるだけ機動的に対応した方がいい。とりわけ、割高な買い取り価格の是正を、早急に検討すべきである。
現行の制度は、企業努力などで発電コストが低下すると、買い取り価格が引き下げられ、事業者にとって不利になる仕組みだ。コスト削減の意欲をそぐという弊害も指摘されている。
20年後など将来の発電コストの目標を定め、買い取り価格を段階的に下げる手法を取り入れてはどうか。発電効率の向上など技術開発を促す効果があるはずだ。
様々な工夫をしても、狭い国土で雨が多い日本では、太陽光や風力で安定した大量の電力を確保するのは困難だ。原発などの基幹電源を補完しながら、無理なく再生エネを拡大させることが、現実的なエネルギー政策といえる。
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