オスプレイ通告 配備強行は許されない

朝日新聞 2012年07月03日

オスプレイ 政府は待ったをかけろ

米政府は、墜落事故が相次ぐ米軍の新型輸送機オスプレイを沖縄県の普天間飛行場に配備すると日本政府に通告した。これを受けて森本防衛相は沖縄、山口両県に出向き、知事らにその内容を説明した。

だが、森本氏は話をする相手を間違っている。米政府にこそ配備を強行せぬよう「待った」をかけるべきだ。

米政府は、オスプレイ12機を7月下旬に山口県の岩国基地に船で運び込む。当初は岩国での試験飛行をへて普天間に移す予定だったが、その後、最近の2件の墜落事故の調査結果が出る8月まで試験飛行を見合わせると方針を変えた。

米政府は日本側の懸念に配慮したという。それでも、10月からオスプレイを普天間で運用するという計画は変えていない。

米軍の日本政府への説明によると、4月のモロッコでの海兵隊機の墜落では、機体に不具合はなかったと断定し、人為的ミスを強く示唆している。

6月の米・フロリダでの空軍機の事故の詳細は不明だが、空軍はその後も「飛行は安全だ」として使い続けている。

オスプレイは、機体の両脇についた回転翼を90度傾けることで、垂直飛行と飛行機並みの水平飛行ができる特異な形の航空機だ。機体に問題がないのに事故が相次ぐということは、素直に考えれば操縦が難しいということではないか。

実際、海兵隊用のオスプレイの飛行時間10万時間あたりの事故率は1.93で、いま普天間に配備されている輸送ヘリCH46の1.11より高い。飛行時間が2万時間あまりしかない空軍用にいたっては13.47だ。

住宅地の真ん中にあり、沖縄県民が県外移転を強く求めている普天間飛行場だ。墜落の危険が大きい航空機が配備されることは、住民には耐え難い。知事が激しく抗議したのは当然だ。

今後、米側が何らかの欠陥を認めるとは考えにくい。それでも配備を認めれば、県民の気持ちを逆なでするだけだ。

そのあげくに事故が起きてしまえば、日米同盟が取り返しのつかない危機に陥るだろうことは、日米両政府ともわかっているはずだ。

森本氏は、配備の変更を求める権限は日本にはないという。条約上はその通りだし、戦略上もあり得ないというのが、軍事専門家としての森本氏の理解なのだろう。

だが、いま求められているのは日本の防衛相としての政治的な判断だ。向き合う相手は米国であることを忘れては困る。

毎日新聞 2012年06月30日

オスプレイ通告 配備強行は許されない

米政府は、海兵隊の垂直離着陸輸送機MV22オスプレイを沖縄の米軍普天間飛行場に配備する計画を日本政府に正式に通告した。

4月にモロッコ、今月、米フロリダ州で墜落するなど事故が相次いだオスプレイには、日本国内で安全性への懸念が広がっている。沖縄では、仲井真弘多知事が配備反対を表明し、県議会、41全市町村議会も反対の決議・意見書を採択した。

安全性について地元の理解が得られないまま、配備を強行することは決してあってはならない。

米海兵隊は、オスプレイを7月下旬に米軍岩国基地(山口県)に搬入し、試験飛行を行った後、8月に普天間飛行場に配備を開始、10月から本格運用する計画だ。

米側はモロッコの事故について「機体に機械的な不具合はなかった」とし、フロリダの事故は8月末までに調査を終了するという。米政府は、事故調査結果がまとまるまで岩国基地での試験飛行を見合わせると発表した。それ自体は当然である。

しかし、フロリダの事故も機体の不具合ではないと断定された場合、どうするのか。地元が反対しても、これを無視して配備を進めるのだろうか。そうであれば問題だ。

森本敏防衛相は30日と7月1日、沖縄、山口を訪問し、両県知事らに米側の通告内容などについて説明する予定だ。だが、両県とも配備や試験飛行に同意するめどはない。

オスプレイは、主翼両端に回転翼を持ち、その角度を変えて、ヘリコプターのように垂直離着陸し、水平飛行では固定翼機のように高速飛行できる。空中給油も可能なため航続距離が長く、輸送能力も高いため、抑止力の向上につながるという。

一方で、ヘリモードと固定翼モードの変換時には独特の機体操作が必要となり、事故を誘発しやすいとの指摘がある。モロッコ、フロリダの両事故とも、ヘリモードから固定翼モードへの変換時に起きている。

野田政権は、オスプレイ配備が日米安保条約上の事前協議事項にはあたらないことなどから、米政府の配備計画を容認する姿勢だ。この問題で米側とぎくしゃくすれば、日米で合意している、沖縄の米軍嘉手納基地以南の施設・区域返還などに影響しかねないとの懸念もあるようだ。

しかし、04年に普天間飛行場所属の輸送ヘリ墜落事故を経験した沖縄では、米軍機の安全性に向ける視線は特に厳しい。配備を強行すれば、政府と沖縄の関係が再びこじれ、普天間問題など在日米軍再編の課題が一層、難しい事態となりかねない。

野田佳彦首相は、地元の理解を前提に解決を図る考えを明確にし、米側と協議するよう指示すべきだ。

産経新聞 2012年07月01日

オスプレイ 安全データに耳傾けたい

米政府が垂直離着陸輸送機MV22オスプレイの沖縄配備を日本に正式通告したことを受け、7月末に山口県・岩国基地へ搬入した後、8月に米軍普天間飛行場に配備される計画が確定した。

森本敏防衛相は沖縄、山口両県を訪ねて地元調整に入ったが、墜落事故が続いたこともあって、「安全性」をめぐる地元の反対や抵抗感は根強い。

しかし、北朝鮮の核・ミサイル開発や中国の海洋進出で日本の安全が脅かされる中、米海兵隊の装備・能力を飛躍的に向上させるオスプレイの導入は、日米同盟の抑止力を高める上で不可欠だ。政府は全世界的な運用状況や技術面も含めた安全性について丁寧に説明し、日本の平和と安全に必要な配備を粛々と進めてほしい。

オスプレイは2005年、米政府が「すべての安全基準を満たした」として量産に入った。米海兵隊は世界で約140機を運用中で最終的に360機を導入する。

問題は、沖縄配備を控えた4月にモロッコ、6月に米フロリダ州で墜落事故が起き、地元自治体や反対派などによる反対論や慎重論が一斉に高まったことだ。

だが、モロッコの事故では「機械的不具合はなく機体の安全性に問題はない」と米政府が経過報告した。フロリダの事故も「設計上の欠陥を疑う理由はない」として同型機の運用が続いている。

オスプレイの事故率は11年時点で10万飛行時間あたり1・12で、海兵隊の全航空機平均2・47の半分以下(米軍統計)との安全データもある。それでも日米両政府が地元の不安に配慮して、フロリダの調査結果がまとまるまで岩国基地での試験飛行を見合わせることにしたのは妥当といえよう。

オスプレイは老朽化した現行のCH46中型ヘリと比べ、速度が2倍、行動半径が4倍、積載量は3倍あり、「日本の防衛や人道・救難能力を飛躍的に高める」(米国防総省声明)ものだ。飛行時の騒音レベルも低く、能力向上に伴って普天間での年間飛行回数を約11%減らせるなど、住民の要望にも十分に応える更新といえる。

「安全性」を口実とする一部の反対論に屈しないためにも、こうしたデータや事実を根気よく提示して説得することが肝要だ。同時に、防衛相と野田佳彦首相は同盟の最大の懸案である普天間移設にも力を注いでもらいたい。

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