きょう衆院採決 首相は「処分」で覚悟示せ

朝日新聞 2012年06月27日

一体改革、衆院通過 緊張感もち、政治を前へ

政権交代からまもなく3年。迷走を重ねてきた「決められない政治」が、ようやく一歩、前に進む。率直に歓迎したい。

社会保障と税の一体改革関連法案が衆院を通過した。

政権交代の時代、政党は「違い」を強調しがちだ。

そんななか、民主、自民、公明の3党が、国の将来に直結する重要政策で歩み寄り、共同責任を負う意義は大きい。

衆院採決では民主党の小沢一郎元代表らが集団で反対し、民主党は分裂状態に入った。

野田首相が「政治生命をかける」とまで言った法案に反対した勢力が、このまま同じ党にい続けるのはおかしい。

首相と小沢氏はこの際、きっぱりたもとを分かつしかない。

政党が選挙で競い、勝者が公約を実行する。それが議会制民主主義の要諦(ようてい)なら、3党協力の枠組みはそれとは矛盾する。

しかし、与野党が角突き合わせ、身動きがとれない政治の惨状を打開するためには、やむをえない、緊急避難的な選択だと受け止める。

09年総選挙で、民主党は「消費税は上げない」と言って政権を射止めた。国の借金が1千兆円に迫るなか、それは無責任な「甘い夢」だった。

経済はグローバル化し、少子高齢化も進む。多くの制約のなかで、政治がとりうる選択肢は少ない。

民主党政権の混迷を決定づけたのは、10年の参院選の敗北による「ねじれ国会」である。

自民党もまた、政権を失うまでの2年間、福田、麻生両政権で「ねじれ国会」に苦悩した。

首相が1年おきに代わるなど、この5年、2大政党はともに重い代償を払ってきた。そのことが、結果として今回の枠組みに結びついた。

この3党の協力態勢がいつまで続くかは見通せない。

衆院議員の任期切れまであと1年あまり。来年夏には参院選がある。選挙が近づけば近づくほど、政党同士が必要以上に違いを強調し、足の引っ張り合いが激しくなるのが永田町の通例だからだ。

実際、小沢氏らの造反で弱まった野田政権の足元を見るかのように、自民党はさっそく早期の解散・総選挙を求める声を強めている。

国民そっちのけの政争で、政治を停滞させる愚を繰り返してはならない。

逆の不安もある。3党が巨大な「数」をたのみに、手前勝手な方向に走り出すことだ。

その芽はすでに現れている。

原子力規制法案をめぐる3党の修正協議で、原発を稼働40年で廃炉にする条文を骨抜きにしかねない規定が盛られた。

3党はまた、原子力の利用は「我が国の安全保障に資する」ために確保するとの文言を原子力基本法に追加した。「原子力政策の憲法」が、十分な議論もないままに変更されたのだ。

自民党は、3年で15兆円の巨費を道路整備などにあてる国土強靱(きょうじん)化法案を提出している。この時代錯誤の提案に、民主党が歯止めをかけられるかどうかが問われる。

3党協力の枠組みは「両刃(もろは)の剣」である。

なれ合うことなく、緊張感をもって協力すべきは協力する。政権交代の時代にふさわしい政治文化を築く第一歩としたい。

政治がいま、回答を迫られている課題は山ほどある。

たとえば、たなざらしのままの赤字国債発行法案や、最高裁に違憲状態と指弾された衆院の「一票の格差」是正だ。延長国会でこれら喫緊の課題を決着させる。それが最優先だ。

3党は、社会保障政策について「国民会議」で1年間、話し合うことで合意した。政権交代で与野党が入れ替わっても、多様な分野で政治を前に進めていく責任を分かち合う。そんなルールと仕組みも整えたい。

消費増税をめぐる政争の陰で先送りされてきた原子力政策、貿易自由化、震災復興など、日本の未来図にかかわる議論も加速しなければならない。

一体改革は必要だが、民主党政権が消費税は上げないという国民との約束に背いたのは間違いない。「予算の組み替えなどで16.8兆円の新規財源を生み出す」とした、政権公約の根幹が実行不能な幻にすぎなかったことはいまや明らかだ。

筋から言えば、ここは早期の解散・総選挙で信を問い直すべしという声が出るのは自然だ。

とはいえ、衆院の「一票の格差」を正さなければ、解散・総選挙はできまい。それには区割りと周知に数カ月かかる。

各党は、総選挙を行うための環境を早く整える必要がある。

そしてそれまでの間に、各党がしっかりした財源の裏づけのある公約を練り直すべきだ。

「国民会議」の議論は半ばになろうが、各党の主張は公約に反映させればいい。

毎日新聞 2012年06月30日

離党問題の混迷 けじめ無き政党の醜態

消費増税法案など一体改革法案の衆院採決で事実上分裂状態に陥った民主党で小沢一郎元代表らの離党をめぐりこの期に及んでなお、内向きな駆け引きが続いている。

造反議員を除籍できない野田佳彦首相、さっさと離党しない小沢元代表、双方の締まりのなさにあきれる。歩み寄りの余地がないことは明らかだ。一日も早くたもとを分かつことが最低限の節度である。

政権の命運がかかるテーマで大量造反が起きた重大さが首相も小沢元代表もよくわかっていないのではないか。そう、勘ぐってしまう。

まず、解せないのが小沢元代表と輿石東幹事長の会談だ。造反議員の処分は首相と輿石氏に一任されている。本来は速やかに輿石氏が処分を伝え、小沢元代表らは離党など自らの決断を表明すべきだ。

ところが、輿石氏は党を割らぬよう要請し、小沢元代表は法案の撤回を要求している。「処分する側が逆に右往左往している」との批判が党内から出るのは当然だ。

増税法案に反対した小沢元代表らの主張は理解できない。一方で反対する以上は党を離れ活動すべきだと私たちは主張してきた。それが政党人のけじめと考えるためだ。

小沢元代表は参院で法案が採決されれば「民主党の枠を超えて、直接国民に訴える」という。首相が増税法案を撤回することはあり得ず、小沢元代表が協力に転じる以外に接点はない。それを知りつつなぜ、輿石氏と協議を続けるのか。同調した議員にも離党に慎重論があり、世論の動向も読み切れず、時間かせぎをしているのが実態ではないか。

党内には政党交付金の受け取りが可能な「分党」をめぐる交渉が主眼、との冷めた見方すらある。どれほどの覚悟で造反を主導したのかが問われよう。

首相にも小沢元代表以上に責任がある。「厳正な処分」を強調していたが除籍処分をするような決意はあまり感じられない。

小沢元代表らの大量離党をはずみに仮に今後衆院で少数与党に転落すれば、内閣不信任決議案の可決が現実味を帯びる。輿石氏が辞任したり、衆院解散を迫られる展開をおそれての弱腰とすれば、情けない。輿石氏に小沢元代表への対応を「お任せしたい」と言ったとされるが、信じがたい無責任さだ。増税に複雑な思いを抱きつつ賛成した議員にどう、説明する気なのか。

こんな状況に自民党が不信感を募らすのも無理はない。3党合意をよそに民主党が勝手に法案再修正を小沢元代表に確約するような妥協など、断じてあってはならない。参院審議の環境整備を急ぐべきだ。

読売新聞 2012年06月26日

一体法案採決へ 首相は造反の抑制に全力を

ねじれ国会では、与野党の合意によって初めて政治が前に進む。財政再建と社会保障制度改革を民主、自民、公明の3党主導で実現すれば、その意義は大きい。

消費税率引き上げを柱とする社会保障・税一体改革関連法案が、きょう午後、ようやく衆院本会議で採決される。

野田首相は衆院特別委員会で、3党による法案の修正合意について「国論を二分するテーマで、立場を乗り越え、合意できたことは大きな前進だ」と強調した。

民自公3党などの賛成で、衆院での法案可決は、間違いない。与野党は、参院で確実に成立させなければならない。

ここに至るまで、合意形成に長い時間がかかった。民主党執行部も党内調整に努力した。

にもかかわらず、その最終段階で、首相を支えるべき民主党議員が相当な規模で造反する意向を示している。極めて残念である。

小沢一郎元代表は、法案への反対―新党結成を視野にグループの結束を図っている。「反増税、反原発」だけで次の選挙は勝てる、と周辺に語ったとされる。

そうであるなら、小沢氏の言動は、国難を招く権力闘争、と言うほかない。

問題は、小沢氏ら離党する衆院議員が42人以上を数える場合だ。民主党から昨年末に集団離党して生まれた新党きづなと組めば、野田内閣に対する不信任決議案の提出が可能になる。

安倍元首相は、小沢氏が主導して不信任決議案を提出した場合、自民党も賛成を検討すべきだとの考えを示している。

自民、公明両党は、対応に苦慮することになろう。参院で法案が成立する前に、不信任案が可決されて、衆院解散・総選挙という事態になれば、せっかくの3党合意はご破算になってしまう。

そんな事態は、避けなければならない。

首相は、民主党の代議士会で、「改革を先送りしたら、この国は持たない。国難から逃げるのではなく立ち向かう、こういう政治を実現したい」と述べ、結束して法案に賛成するよう要請した。

小沢氏や鳩山元首相のグループに属していても、倒閣を目指す議員ばかりではあるまい。危機的な財政と社会保障制度を立て直す必要性を認識し、法案賛成を検討している議員も少なくなかろう。

首相と輿石幹事長ら党執行部は説得に全力をあげるべきだ。野田政権の力が、採決で試される。

産経新聞 2012年06月27日

増税大量造反 3党合意これで持つのか 首相は除名処分を決断せよ

野田佳彦首相が政治生命を懸けると表明した社会保障・税一体改革関連法案は、民主、自民、公明3党などの賛成多数で衆院を通過した。だが、57人という多数の民主党議員が反対票を投じた。

民主党は事実上分裂したが、最重要法案に反対した分裂の張本人である小沢一郎元代表は、「党にとどまり再生に努める」と語った。これは筋が通らない。

社会保障の安定財源確保に消費税増税は避けられず、法案の衆院通過は評価したい。

問題は、衆院本会議で支持議員らとともに反対した小沢氏が当面、離党しないとし、首相がこれを容認するかのような態度を見せていることである。これで3党合意が持つのだろうか。

≪筋通らぬ小沢氏の行動≫

小沢氏は支持議員らから離党届を集め、新党結成も視野に造反に踏み切ったのではなかったか。

首相は26日の記者会見で、造反者らへの処分について、「輿石東幹事長と相談し、党のルールに従って厳正に対応する」と述べた。法案採決をめぐる造反では過去、除名処分はない。発言通りなら党員資格停止処分止まりとなり、「茶番劇」に終わりかねない。

一体改革関連法案は、素案、大綱など党内論議を重ねて国会提出にこぎつけ、ようやく与野党の合意で衆院通過に至った。首相が法案成立を前進させた意義は小さくないだけに、法案阻止を唱える勢力を党内にとどめることは、これまでの議論の蓄積を無にするものである。

自民党は造反者への厳しい処分を求めており、民主党がそれに応えなければ参院審議の行方も不透明になる。首相は除名処分を決断し、「決められない政治」からのさらなる脱却を目指すべきだ。

小沢氏の政治行動に疑問を呈したい。

小沢氏らは、修正合意を通じて、最低保障年金創設や後期高齢者医療制度廃止などマニフェスト(政権公約)の政策が後退したと批判してきた。問題は、小沢氏も内容に責任のあるマニフェストで無駄の削減により16・8兆円の財源を捻出すると謳(うた)いながら、できなかったのに、なおもできるかのように言い続けていることだ。

今月14日発売の「週刊文春」では、小沢氏の妻、和子さんが支援者に宛てた手紙が掲載され、東日本大震災発生直後、小沢氏が放射能が怖くて東京から逃げ出そうとしたことも書かれている。

小沢事務所は否定しているが、事実なら被災地を選挙区に持つ政治家として許されない行動だろう。小沢氏自ら説明すべきではないのか。

関連法案は、現行5%の消費税率を平成27年10月までに2段階で10%に引き上げるのが柱だ。

国の借金は国内総生産(GDP)の約2倍に相当する1000兆円規模に達する。財政再建を行う意思を明確にできなければ、日本の国債に対する国際的な信認を失いかねない。法案の成立は急務である。

≪社会保障の見直し急げ≫

3党合意に基づく法案の内容には多くの問題点が残されている。本格的な高齢社会に対応するため、増税と同時に社会保障費の伸びに歯止めをかけることが不可避だが、法案では社会保障分野の改革が置き去りにされた。

70~74歳の医療費窓口負担の2割への引き上げや、デフレ下で年金額を下げる自動調整の仕組みの導入、年金の支給開始年齢の引き上げなど、国民に痛みを求める項目は軒並み外された。むしろ、低所得の高齢者向けに「給付金」をばらまくなど社会保障費の膨張を加速させている。

高齢者を含め、支払い能力に応じて負担する仕組みに改めない限り、社会保障制度自体が維持できなくなる。

法案は、受益と負担の均衡がとれた制度を確立するための改革を、「社会保障制度改革国民会議」を設置して1年以内に実施するとしている。

国民会議では、最低保障年金や後期高齢者医療制度の廃止といった民主党マニフェストの見直しが議論の中心になろう。これらの政策は莫大(ばくだい)な費用を要するなど現実的ではなく、国民会議で実効性のある政策論議を行うためにも、民主党の白紙撤回が先決だ。

切り込み不足に終わった今回の法案の再修正なども国民会議でまとめ上げなければならない。

毎日新聞 2012年06月27日

大量造反で通過 民主はきっぱり分裂を

民主党から大量に造反者が出る中、消費増税法案を柱とする税と社会保障の一体改革関連法案が衆院を通過した。民主党内の亀裂は、もはや修復不能であるのは誰の目にも明らかだ。ところが野田佳彦首相は造反者の処分について「輿石東幹事長と相談しながら厳正に対応したい」と語るのみで具体的に言及しなかった。一方、造反した小沢一郎元代表も直ちに離党はせず、「近く決断する」と述べただけだった。

もはや、きっぱりと分裂する時ではないか。その方が有権者にも分かりやすいし、そうでなければ政党政治の根幹が揺らいでしまう。

小沢元代表のグループの中にも離党して新党を結成するのは処分の行方や、衆院解散・総選挙の時期を見極めてからの方がいいとの意見がある。元代表は大量造反者の「数」を盾に、野田首相を揺さぶりたいのかもしれない。このため、なおしばらく党内抗争が続く可能性がある。

こうした国民そっちのけの主導権争いに有権者はうんざりし、かつてない政治不信につながっていることになぜ気がつかないのか。

一連の法案は、党の代表として選んだ野田首相が政治生命をかけると明言し、何度も党の手続きを重ねてきた。自民、公明両党との間で修正合意した政党間の信義もある。そんな法案に造反しても処分しないというのなら政党の体をなさない。

今回の小沢元代表らの行動に大義は乏しい。元代表のグループは「増税する前にすることがある」「マニフェストを守れ」という。だが、予算の無駄遣いをなくすなどして最終的に16・8兆円の財源を捻出すると約束して政権交代を果たしてからもう3年近くになる。この間、元代表らはどれだけ無駄の削減に努力したというのだろう。

そもそも前回衆院選のマニフェスト作りを主導し、「政権交代すれば財源はいくらでも出てくる」とばかりに財源論を放置したのは小沢元代表と鳩山由紀夫元首相だ。しかも鳩山首相時代の09年末、マニフェストの柱の一つだった「ガソリン税の暫定税率廃止」をあっさり撤回させたのは小沢元代表だ。これでは、ご都合主義といわれても仕方がない。

小沢元代表らが今後、新党を結成するにせよ、民主党内で再び主導権争いをする道を選ぶにせよ、どうすれば増税をせずに社会保障制度を維持していけるのか、具体的に提示するのが最低限の責任だ。それができなければ「国民の生活が第一」どころか、「自分の選挙が第一」、つまり「ともかく増税に反対すれば選挙で有利になるかもしれない」というのが造反の理由だったことになる。

93年に自民党を離党して以来、小沢元代表は新党を作っては壊してきた。03年秋、元代表率いる自由党が民主党と合併した後も、民主党内では「小沢対反小沢」の対立が繰り返されてきた。私たちは政策論争より権力闘争が優先される政治から一刻も早く決別したいと思う。

もちろん、消費増税に対する国民の理解は進んでいない。一体改革といいながら、年金など肝心の社会保障の具体論はほとんど棚上げされ、増税ばかりが先行しているのも事実だ。低所得者対策として有効と思われる軽減税率導入などは今後の検討対象とはなったが、これもまた結論を得ていない。参院での審議では、法案の賛否だけでなく、これらの点に関しても議論を進めるべきだ。

首相は一連の法案が成立した後に国民の信を問うと語ってきた。衆院解散・総選挙に臨む覚悟も求められる時だ。ところが首相らが造反者への処分をためらうのは造反組と野党が共闘して内閣不信任案が可決される事態を避けたいためではないか。解散を恐れていては「増税は国民のために必要」「将来世代にツケを残さない」という信念は伝わらない。

いずれ、あと1年余で衆院議員は任期満了となるというのに、衆院小選挙区の「1票の格差」是正議論は進んでいない。再三指摘してきたように定数削減と1票の格差是正を同時決着させるのは困難だ。まずは小選挙区の「0増5減」に向けた立法措置を講じることを優先すべきだ。

既に民主党は分裂状態で、有権者が選択した政権の姿は大きく変容している。可能な限り早急に国民の信を問い直すべきだと考える。

産経新聞 2012年06月26日

きょう衆院採決 首相は「処分」で覚悟示せ

26日の社会保障・税一体改革関連法案の衆院採決を控え、野田佳彦首相は「国難に立ち向かい、国民に説明していく政治を実現したい」と結束して賛同するよう民主党代議士会で呼びかけた。

法案への反対を表明している小沢一郎元代表ら造反者は、反対と棄権を合わせて70人規模に拡大する可能性もあるという。離党者が54人以上になれば民主党は少数与党に転落し、首相にとって政権運営は極めて難しくなる。

だが、ここが首相の正念場である。造反者への厳しい処分も辞さず、消費税増税を柱とする一体改革を成し遂げる覚悟をいかに貫けるかである。

首相は法案採決について「党議拘束がかかる」と述べたが、造反に対する処分方針を明らかにしていない。曖昧にしているのは、執行部が処分を甘くすることで、分裂を回避しようとする動きと軌を一にしているようにみえる。

問題は、民主党が反対者を抱え込んで、これからも「決められない政治」を続けていくのかだ。

輿石東幹事長は、「党を割らないでほしいという声が党内の大勢だ」として、分裂回避に全力を挙げる考えだ。法案賛否をめぐる重い処分は行わない姿勢を示している。相変わらずの党内融和路線を改める姿勢はみられない。

これに対し、自民党の谷垣禎一総裁は25日の講演で「造反者を処分できないようでは、参院で一緒に審議を進めていけるのか疑問だ」と指摘した。造反者に曖昧な処分をとるのであれば、参院で協力しにくくなり、法案審議が難航すると牽制(けんせい)したものだ。

法案が衆院を通過しても、参院で与党は過半数を得ていない。関連法案成立を図るには、自民、公明両党との3党合意の堅持は不可欠だ。民主党が公党間の約束よりも党内事情を優先させている現状を、首相が断ち切るしかない。

造反者らは今後、「増税の前にやるべきことがある」との主張をさらに強めるだろう。これに対して、首相や政府・与党が説得力をもって反論できるかどうかも重要になる。

消費税増税に対する国民の慎重論の背景にも、政府がデフレ脱却への具体的道筋を十分に示していない点があることは否めない。行政改革や政治改革への取り組みと合わせて、経済活性化への実効ある対策を講じる必要がある。

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