核燃料サイクル エネルギー戦略の重要な柱だ

毎日新聞 2012年06月26日

使用済み核燃料 直接処分に道筋つけよ

日本はこれまで原発から出る使用済み核燃料を全量再処理し、再び原子炉で燃やす「核燃料サイクル」を国策としてきた。半世紀にわたりこだわり続けてきた硬直化した政策で、現実に即して見直す努力がなされてこなかった。

福島第1原発の事故を経験した今、思い切った政策変更が必要だ。

政府の原子力委員会は先週、将来の原子力比率に応じた核燃料サイクルの選択肢をまとめた。30年に原発ゼロの場合は「全量直接処分」、15%の場合は「直接処分と再処理の併用」、20~25%の場合は「併用」もしくは「全量再処理」が適切で、原発ゼロの場合は高速増殖原型炉「もんじゅ」も中止としている。

私たちはこれまで、コストや技術、安全面から、再処理をやめ、核燃料サイクル政策に終止符を打つべきだと指摘してきた。今回の選択肢は政策変更に道を開いたが、再処理にこだわり続けることは疑問だ。

日本原燃が青森県六ケ所村に建設する再処理工場の処理能力は全国の原発から出る使用済み核燃料に追いつかない。そもそも「全量再処理」は非現実的だった。政府が「脱原発依存」の方針を掲げている以上、「併用」にも疑問がある。コストはもちろん、生じるプルトニウムを燃やして消費できる見通しがないまま、再処理を続けることは核不拡散の点でも問題が大きい。

原子力委の報告で注目すべきは、むしろ、どの選択肢を選ぶにせよ取り組みが必要な課題かもしれない。

直接処分のための技術開発や制度の検討は、従来の政策の中で置き去りにされてきたものであり、早急に道筋をつけるべきだ。使用済み核燃料の乾式貯蔵も真剣に検討しなくてはならない。プール貯蔵のリスクを軽減するためだけではなく、直接処分を進めるための「中間貯蔵」を考える上でも重要となる。

直接処分への政策変更が日本原燃や地元に与える影響を懸念する声があるが、これを解決していくのは政治の責任だろう。日本原燃が廃炉など別の役割を担うことはできないか。受益者も使用済み核燃料保管の責任の一端を担うことはできないか、検討を進めてほしい。

高レベル放射性廃棄物の最終処分も、どの選択肢を選ぶにしても重要課題で、国が本気で取り組む必要がある。あてのないままに原発を動かし続けることは、子孫にツケを回すことに他ならない。

核燃料サイクルの選択肢を検討していた原子力委の小委員会が、利害関係者が参加した非公開の会議を開いていた問題については、検証作業が進められている。その結果次第では今回の報告自体を見直す必要があることは言うまでもない。

読売新聞 2012年06月23日

核燃料サイクル エネルギー戦略の重要な柱だ

原子力発電所の使用済み核燃料を再処理して使う「核燃料サイクル」政策について、内閣府の原子力委員会が、見直しの選択肢を提示した。

昨年の原発事故を受けて、政府のエネルギー・環境会議がエネルギー戦略を再検討している。その議論の材料という。

選択肢は、2030年の原発比率を、0%、15%、20~25%に分け、それぞれの場合について使用済み核燃料の扱いを示した。

現実的なのは、今後も原発を利用する選択肢である。この場合、核燃料サイクルも継続すると判断しており、これまでの原子力政策を踏まえた妥当な内容だろう。

核燃料サイクルによって、ウラン資源を有効利用でき、廃棄すべき放射性物質の量を減らせる。日本が全量再処理を国策として位置づけてきたのは、このためだ。

ただ、原発比率が15%まで減れば、全量を再処理しても使い道に困る。このため、原子力委は、再処理しない分を地中に埋めるなど直接処分するのが適切とした。

一部とはいえ、直接処分を想定したのは今回が初めてだ。原発が増えることは当面考えにくく、国策の修正は、やむを得まい。

一方、使用済み核燃料をすべて直接処分する0%の選択肢は、代替電源の見通しがつかない厳しいエネルギー事情を考えれば、非現実的だ。これまで培ってきた関連技術も無に帰してしまう。

エネ環会議は、8月にも結論を出す。原発と核燃料サイクルの継続を将来にわたるエネルギー戦略にしっかり位置づけるべきだ。

だが、課題も山積している。

再処理を経た燃料を、どの原発で燃やすかを、地元の理解も得て決めねばならない。

核燃料サイクルの拠点として建設中の日本原燃の再処理工場(青森県六ヶ所村)は、完成間際で技術的難関にぶつかっている。

核燃料サイクルを効率化できる高速増殖炉「もんじゅ」も、トラブルが続いている。

確固たる原子力政策なしには、こうした難題に対処できまい。

原子力委は、選択肢を巡って、「国際的視点が不可欠」と、安全保障面での検討も求めている。

新興国などで原発に期待が高まる中、日本の技術は、核不拡散などにも貢献できるだけに、重要な論点と言えよう。

新たに成立した原子力規制委員会設置法と、改正原子力基本法にも「安全保障に資する」の文言が明記された。原子力技術の役割を考えれば、当然のことである。

この記事へのコメントはありません。

この社説へのコメントをどうぞ。
お名前
URL
コメント

この記事へのトラックバックはありません。

トラックバックはこちら
http://shasetsu.ps.land.to/trackback.cgi/event/1082/