原子力発電所の使用済み核燃料を再処理して使う「核燃料サイクル」政策について、内閣府の原子力委員会が、見直しの選択肢を提示した。
昨年の原発事故を受けて、政府のエネルギー・環境会議がエネルギー戦略を再検討している。その議論の材料という。
選択肢は、2030年の原発比率を、0%、15%、20~25%に分け、それぞれの場合について使用済み核燃料の扱いを示した。
現実的なのは、今後も原発を利用する選択肢である。この場合、核燃料サイクルも継続すると判断しており、これまでの原子力政策を踏まえた妥当な内容だろう。
核燃料サイクルによって、ウラン資源を有効利用でき、廃棄すべき放射性物質の量を減らせる。日本が全量再処理を国策として位置づけてきたのは、このためだ。
ただ、原発比率が15%まで減れば、全量を再処理しても使い道に困る。このため、原子力委は、再処理しない分を地中に埋めるなど直接処分するのが適切とした。
一部とはいえ、直接処分を想定したのは今回が初めてだ。原発が増えることは当面考えにくく、国策の修正は、やむを得まい。
一方、使用済み核燃料をすべて直接処分する0%の選択肢は、代替電源の見通しがつかない厳しいエネルギー事情を考えれば、非現実的だ。これまで培ってきた関連技術も無に帰してしまう。
エネ環会議は、8月にも結論を出す。原発と核燃料サイクルの継続を将来にわたるエネルギー戦略にしっかり位置づけるべきだ。
だが、課題も山積している。
再処理を経た燃料を、どの原発で燃やすかを、地元の理解も得て決めねばならない。
核燃料サイクルの拠点として建設中の日本原燃の再処理工場(青森県六ヶ所村)は、完成間際で技術的難関にぶつかっている。
核燃料サイクルを効率化できる高速増殖炉「もんじゅ」も、トラブルが続いている。
確固たる原子力政策なしには、こうした難題に対処できまい。
原子力委は、選択肢を巡って、「国際的視点が不可欠」と、安全保障面での検討も求めている。
新興国などで原発に期待が高まる中、日本の技術は、核不拡散などにも貢献できるだけに、重要な論点と言えよう。
新たに成立した原子力規制委員会設置法と、改正原子力基本法にも「安全保障に資する」の文言が明記された。原子力技術の役割を考えれば、当然のことである。
この記事へのコメントはありません。