AIJ社長逮捕 厚年基金の抜本改革を進めよ

毎日新聞 2012年06月20日

AIJ社長逮捕 巨額流用の実態明かせ

巨額の企業年金消失に端を発した問題が刑事事件になった。

警視庁は、AIJ投資顧問社長、浅川和彦容疑者ら4人を詐欺容疑で逮捕した。厚生年金基金などから受託した資産約70億円をだまし取った疑いだ。

同社は多くの企業年金基金から資産を預かっていたが、高リスクの運用で1000億円以上の損失を出した。純資産額が減っていたにもかかわらず顧客にうその実績を示し、新たに受託した資金を解約顧客の払戻金に充てていたとされる。

自転車操業的なこうした行為が詐欺に当たると捜査当局は判断した。露骨な損失隠蔽(いんぺい)の経緯に照らせば、詐欺容疑での立件は当然だろう。

衆参両院で4月、浅川容疑者らへの証人喚問が行われた。浅川容疑者は、解約金への流用について「総額は140億円前後」と述べた。警視庁は、流用の実態についてまず捜査を尽くしてもらいたい。

浅川容疑者は証人喚問で、顧客への虚偽報告は認めながらも「だますつもりはなかった」と釈明した。一方で、勧誘の手口など肝心な点については、はぐらかしたり証言を拒否したりした。

営業先の年金基金の運用担当者に対する過剰な接待攻勢の実態も公になった。3年間で約200回の接待をし、1回に最高で20万円以上を使ったというのだ。

また、浅川容疑者は昨年末時点の個人資産を計1億2100万円と明かした。年収8000万円に対して少ないとの指摘には「使っちゃうタイプだから」などと述べた。

元々は多くの人たちの老後の支えとして運用を委託された資金である。法令に反する支出や、個人の蓄財に使われてはいないか。見逃すことがあってはならない。

逮捕を受け、松下忠洋金融担当相は「投資一任業者による虚偽の報告・勧誘に対する規制強化や、第三者によるチェックが有効に機能する仕組みが必要だ」と述べた。

AIJ投資顧問の問題発覚後、金融庁が投資顧問業者265社を対象にした調査では、監査法人などの外部監査を導入していたのは半数以下にとどまった。

投資顧問業を原則として参入自由な登録制にした以上、適切な情報の開示や事後のチェックに行政が厳しい目を光らせるのは当然だ。違反した場合の罰則強化も検討すべきだろう。

企業年金の運用側の改革については、厚生労働省に有識者会議が設置された。年金の運用は自己責任が原則だ。ただし、適切な運用のため、役職員や担当者の資質向上は必要だ。その方策について議論を尽くしてもらいたい。

読売新聞 2012年06月20日

AIJ社長逮捕 厚年基金の抜本改革を進めよ

年金資金の消失事件で明らかになった厚生年金基金の問題を、早期に解決せねばならない。

警視庁は、AIJ投資顧問の浅川和彦社長らを詐欺容疑で逮捕した。

運用しているファンドで巨額の損失が出たのに、運用実績が好調であるかのように偽って、顧客の厚年基金にファンドを買わせ、資金をだまし取った疑いがある。

AIJが集めた約1500億円の大半が失われたと見られる。証券取引等監視委員会も金融商品取引法違反容疑で強制調査しているが、警視庁は、より刑罰の重い詐欺罪を適用することにした。

「だますつもりはなかった」と強弁し続けてきた浅川社長の姿勢は悪質である。厳正に刑事責任を追及すべきだ。

事件の背景には、厚年基金が直面する構造的な問題がある。

多くの基金は、バブル景気当時と変わらぬ高い予定利率を据え置いたままの支給金額を約束している。このため、高利回りをうたうAIJの勧誘に飛びつき、それが被害を拡大させたと言えよう。

低金利の現在、約束した金額を支給するには母体企業が運用の不足分を埋めなければならない。

その結果、経営が悪化し、倒産すれば、同じ業種の中小企業で作る厚年基金の場合、他の企業がその年金債務を背負わされることになる。連鎖倒産につながった事例も実際に起きている。

基金の財務状況を改善するためには、年金給付を減額するなどの措置が必要になる。ただし、実施するには、受給者や従業員の3分の2以上の同意を得ることが条件となっている。

このハードルは、高すぎるのではないか。

厚生労働省は有識者会議を設置し、赤字基金の救済策を検討している。例えば、公的資金での支援や年金減額の要件緩和などだ。

民主、自民両党も厚年基金の改革案をまとめた。

民主党は、公的融資による資金繰り支援を柱としている。自民党は、連鎖倒産など多大な影響が想定される場合に限って公的資金で穴埋めする内容だ。

自己責任の原則に照らせば、母体企業と従業員、受給者で負担し合うのが筋である。公的資金による過剰な救済は避けるべきだ。

AIJのような悪質業者を再び見逃してはならない。いたずらに規制強化に向かう必要はないが、投資顧問会社の情報開示の徹底など、金融庁によるチェック体制の見直しが急務である。

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