原子力新規制案 40年で廃炉が基本だ

朝日新聞 2012年06月15日

原発40年廃炉 最低限の基準を守れ

新たな原子力規制法案をめぐる民主、自民、公明3党の修正協議で、原発を稼働から40年で廃炉にする条文に、見直し規定が盛り込まれた。

「40年廃炉」は、原発を減らしていくうえで最低限の基準である。老朽化した原発の運転延長がなし崩しに進む余地をつくる与野党合意には、到底、納得できない。

見直し規定は自民党が要求した。40年廃炉の条文は残すものの、9月にも発足する原子力規制委員会が「速やかに」再検討することを付則で明記する。

野田政権は、脱原発依存を具体的にどのように進めるか、今もって示していない。そのなかで唯一、明らかになっていたのが40年ルールだ。

40年で閉めていけば、新増設がない限り、原発の比率は2030年に15%に下がり、50年にはゼロになる。もっとも緩やかな減らし方ともいえる。

「40年には科学的な根拠がない」との指摘が出たというが、どんな設備でも古くなれば故障リスクは高くなる。原発に一定の寿命枠をはめるのは、トラブルの種を徹底的に排除し、二度と福島のような事故を起こさせないという国民の意思に基づく政策だ。純粋に技術的な安全規制とは、性質を異にする。

修正協議に成果がなかったわけではない。規制組織に強い独立性が与えられた。5年後からは、事務局となる原子力規制庁の全職員に出身官庁への復帰が禁じられる。

だが、肝心の部分が骨抜きになっては、原発を推進してきた官庁から規制機関を切り離し、独立性を強化するのは何のためか、という法改正の根幹が揺らぎかねない。新たな安全規制体制そのものが、国民に信頼されなくなる。

自民党内の議論では、40年規定に肯定的な意見や「30年に短縮すべきだ」との声もあったという。にもかかわらず、見直し規定が通ったことは、自民党の変わらなさを象徴する。「政権に復帰したら原発を推進するつもりだ」と有権者に思わせるに十分だ。

情けないのは、あっさりと修正に応じた民主党である。大飯原発の再稼働をめぐる野田首相の記者会見といい、これでは国民には原発維持路線を歩んでいるとしか見えない。

法案は今国会で成立する見通しだ。40年規定の見直しは規制委員会に委ねられるが、委員5人は国会同意人事である。国民を守る側から原子力を規制していく組織になるか。政治の意志が問われる。

毎日新聞 2012年06月15日

原子力新規制案 40年で廃炉が基本だ

原子力の安全規制を担う新組織の設置法案で民主、自民、公明の3党による修正協議がまとまった。国家行政組織法3条に基づく独立性の高い「原子力規制委員会」を設置する。原発の運転期間を原則40年とする政府案の規定は、発足した規制委が「速やかに見直す」という。今国会で成立する見通しだ。独立性の高い新規制組織の誕生は評価できるが、「40年廃炉ルール」を骨抜きにすることは許されない。

東京電力福島第1原発事故を踏まえ、政府は脱原発依存を掲げた。私たちも、原発の新増設はやめ、既存の原発も危険度に応じて閉鎖の優先順位をつけ、減らしていこうと提案してきた。

そのための重要な指標となるのが稼働から40年だった。現在は、稼働から30年で原発の老朽化を評価し、国の認可を受けて10年ごとに延命手続きをとる。しかし、古い原発は安全上の欠点があっても、新たな知識を反映させにくい。

自民からは「一律40年は納得できない」などの異論が出た。原子炉の新旧の違いなどを考慮すべきだということだろうが、現在の新型炉も40年後は旧型炉だ。脱原発の道筋を確かにするためにも、一定年限での廃炉には大きな意味がある。規制委は廃炉の判断基準を明確にし、40年よりも早めることがあってよい。

規制委は委員長以下5人の有識者で構成される。3党協議で、緊急時の技術的な対応も規制委の判断を優先し、首相の指示権は、規制委の決断を促すための限定的なものとされた。それだけに、規制委の責任は非常に重い。国会同意人事だが、原発関連業界や学界、政治からの不当な圧力を許してはならない。設置法案では規制委に情報公開を義務づけるが、国民が活動内容をチェックできる透明性を確保すべきだ。

規制委を事務局として支える原子力規制庁も同様だ。経済産業省原子力安全・保安院を母体に独立行政法人「原子力安全基盤機構」の職員を公務員化し統合する。出身母体に職員を戻さないノーリターン・ルールを徹底する一方で、優秀な人材をきちんと評価する仕組みも整備すべきだ。原子力安全の専門家を育成する部門を大学などに開設してもらう必要もあるだろう。

3党は政府に原子力防災会議を新設することでも合意した。首相が議長、官房長官と規制委員長らが副議長を務め、原発敷地外での平時の防災計画や訓練を推進する。東日本大震災と福島第1原発事故では、関係省庁や自治体との調整などに手間取ったが、事故が起きることを前提とした原子力防災体制の構築も欠かせない。

読売新聞 2012年06月16日

原子力規制法案 緊急時の首相指示権は妥当だ

新しい原子力規制組織がようやく発足する見通しとなった。原子力発電所事故の反省を踏まえ、原発の信頼性を向上させることが求められる。

原子力規制委員会設置法案が衆院を通過した。民主、自民、公明の3党が政府案と自公両党案を修正し、成案をまとめた。法案成立を急いでもらいたい。

3党修正協議の焦点の一つが原発事故時の対応だった。原子力規制委の独立性を重視する自公両党が、原発内の事故対策に関し、首相の関与を完全に排除するよう求め、民主党と対立した。

最終的に、規制委の「技術的及び専門的」な知見に基づく判断を除き、首相の指示権を認めた。

例えば、規制委が被害抑止に必要な措置を迅速に取ろうとしない場合、首相が規制委に指示することなどを想定している。首相の関与を「危機管理上の最後の手段」とする民主党の主張に自公両党が歩み寄ったことは評価したい。

5人からなる規制委は、合議が原則だが、緊急時には委員長が単独で意思決定できるとした規定を加えた。これも妥当である。

規制委の人選は、国会同意人事となった。

与野党内には「反原発派」の起用を求める声がある。しかし、規制委は、原発の是非の判断ではなく、安全性向上が任務である。人選を誤れば、規制行政が混乱し、その信頼性を損ないかねない。

平時の防災体制を強化するために、首相を議長とする「原子力防災会議」が新設されることも修正協議の成果と言えよう。

規制委と関係府省、電力会社、自衛隊、自治体などが普段から緊密に連携し、信頼関係を築くことが重要である。

事故が発生した場合、防災会議を母体として、首相がトップを務める原子力災害対策本部が発足する。迅速かつ円滑な事故対応ができるようにする必要があろう。

規制委の事務局となる原子力規制庁は、経済産業省や文部科学省などに分かれている規制関連組織を一元化した組織となる。

専門性を有し、意欲のある人材を集めることが大切だ。

それには政府が「脱原発」と一線を画し、将来も原発を有力な電源として維持し続けることを明確にしなければなるまい。

法案は原発の運転期間について、一律40年を原則としながらも、見直し規定を盛り込んだ。

結論を事実上規制委に委ねたことになる。やはり、廃炉か否かは個別に判断するべきだ。

産経新聞 2012年06月15日

原子力規制委 国益守り抜く人選めざせ

原子力の安全規制を担う新組織、「原子力規制委員会」の設置法案が今国会で成立する見通しとなった。新体制の下、福島第1原発事故で失墜した原子力安全行政への信頼を回復できるよう万全を期してもらいたい。

民主、自民、公明3党の協議は国家行政組織法3条に基づく独立性の高い規制委を設け、首相の指示権を強く制約することで合意した。

規制委の最大の責務は、原発のより高い安全性の確立にある。そのため、5人の委員には、専門知識だけでなく規制と活用の両面から国益を冷静に見極める見識が求められる。委員は国会同意人事であり、立法府の責任も重い。

現在の原子力安全・保安院は、原発を推進する経済産業省の下に置かれたため、監視機能が十分に働かない実態があった。規制委を独立性の高い三条委としたのは、その弊害をなくす狙いだ。

ただし、委員の人選が規制に偏ると、「原発潰し」が自己目的化した「脱(反)原発至上主義」の道具になる危険もはらむ。

国民生活の維持・向上と日本経済の再生・成長、さらには国際貢献のため、「安全性の確保を大前提として原発の利活用を図る」という共通認識を、規制委の出発点として確認すべきだろう。

大飯原発の再稼働は「暫定的な安全基準」に従って行われ、後続の再稼働は規制委がまとめる安全基準で判断される。規制委の発足と基準策定が遅れれば、再稼働はさらにずれ込んでしまう。

原発の運転を原則40年に制限する現在の政府方針は、新設の規制委で再検討されることになった。科学的根拠が示されないまま既成事実化した「40年ルール」の見直しは当然で、規制委は発足後、直ちに議論を始めてほしい。

3党協議で大きな焦点となった首相の指示権については、原発事故への緊急対応時に、首相は規制委の専門的な判断を覆して現場に介入することができないということを明確にした。

福島原発事故では、菅直人前首相の過剰介入が現場の混乱を拡大させた。その過ちを繰り返さないという意味では、首相指示権の制限は理解できるが、危機管理の最高責任者の権限を制約し過ぎることは、本来、好ましくはない。

専門的な判断は規制委に委ねるとしても、国民を守る責任は政治が負う。それが大原則である。

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