国会事故調 今度は菅氏の責任追及だ

朝日新聞 2012年06月12日

国会事故調 何を解明したいのか

福島第一原発事故をめぐる国会の調査委員会(黒川清委員長)が、ひととおりの参考人招致を終えた。今月末までに最終報告書をまとめる。

だが、9日に示された論点整理は、判断の根拠がはっきりせず、説得力に欠ける。

この間おこなわれた政治家や東京電力の首脳陣に対する質疑も、原子力行政の構造的な問題を解き明かすような切り口に乏しかった。

国会事故調は、何を解明したいのか。このままでは、不十分な報告書にしかならないのではないかと心配になる。

今回の論点整理は、事故直後の官邸の対応に焦点をあてている。この中で、もっとも違和感が強いのは東電の「全員撤退」をめぐる見解だ。

事故調は「東電が全員撤退を決定した形跡は見あたらない」と結論づけている。

これは、菅首相(当時)をはじめとする官邸側の数々の証言と真っ向から対立する。

質疑でも、官房長官だった枝野氏が清水正孝社長(同)との電話のやりとりを紹介し、全面撤退と認識したことを証言したのに対し、清水氏は「記憶にない」の一点張りだった。

ところが、黒川委員長は清水氏に対して「肝心なことを忘れている」と述べただけで、記者会見では「官邸と東電のコミュニケーション不足の問題」と分析した。官邸側の言い分はほとんど無視された。

これで納得できるだろうか。問題は東電本社に事故対処への強い意志があったかどうかだ。それによって、その後の菅氏の行動への評価も分かれる。

官邸側に誤解があって、「事故対応に過剰な介入をした」と事故調が論ずるなら、そこに至る根拠や調査で明らかになっている事実を、もっと明確に説明すべきだ。

そもそも、事故調の目的は何か。責任追及も大事だが、最大の主眼は、二度とこうした事故を起こさない教訓をどのようにつかみとるかにある。

その意味で、事故以前の問題への踏み込みも物足りない。

今日の原子力行政をつくってきた自民党への調査をおこなっていないのは、どういうわけだろう。政府の事故調では官邸対応の分析に限界があると意識するあまり、そこに目を向けすぎてはいないだろうか。

憲政史上初めて国会に設けられ、国政調査権の行使まで認められた独立委員会だ。

国民が期待しているのは、国内外からの評価と歴史の検証に堪えうる報告書である。

産経新聞 2012年06月12日

国会事故調 今度は菅氏の責任追及だ

東京電力福島第1原子力発電所の事故を検証する国会の事故調査委員会(国会事故調)が論点整理を行い、菅直人前首相をはじめとする首相官邸の過剰な現場介入が混乱を招いたと指摘した。

菅氏は「官邸として、また原子力災害対策本部長として、直接対応せざるを得なかった」と自らのブログで直ちに反論したが、責任逃れとしか聞こえない。

反論があれば公の場で堂々と行うのが筋だ。国会も事故調の報告書に基づき、菅氏を証人喚問するなどして真相解明に徹底して当たるべきだ。

事故の検証は、今後の原発政策をも大きく左右する。論点整理は政府の初動態勢の遅れにも言及しており、菅政権には取るべき対応を怠った不作為の責任があったとの認識を示した。

東電が事故後間もなく、福島第1原発からの全面撤退を政府に申し出たとされる問題については「東電が全員撤退を決定した形跡はない」と東電側の主張に沿った見方を示した。

菅氏側はこれまで、全面撤退を阻止したことが官邸の介入の成果だと繰り返し主張してきた。2月末に公表された独立検証委員会(民間事故調)の報告書も「結果的に東電に強い覚悟を迫った」と評価していた。

だが、今回の国会事故調の見解は、これを強く否定する内容になっている。菅氏は国民への説明責任を果たすべきだ。

論点整理は、東電への乗り込み以外にも不適切な行為が多々あったことを問題視している。

官邸関係者が第1原発と直接電話でやりとりしたことについては「場違いな初歩的な質問で、現場対応にあたる者が余分な労力を割かれた」と指弾した。「頻繁な介入が、現場の指揮命令系統を混乱させた」とも断じた。

さらに「官邸を含めた危機管理体制の抜本的再構築が必要ではないか」と指摘している。菅氏は事故直後から安全保障会議を開こうとしなかった。緊急事態に対する政府の枠組みも使おうとしなかったことに対する厳しい批判にほかならない。

政府の最高責任者である首相が判断を誤れば、国民に多大な犠牲と負担を強いる。国会事故調の報告書は今月中に国会に提出されるが、菅氏の証人喚問はそれからでも遅くはない。

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