森本防衛相 安保政策をただす機会に

毎日新聞 2012年06月06日

森本防衛相 普天間の現実見据えて

野田佳彦首相は、内閣改造で拓殖大学大学院教授の森本敏氏を防衛相に起用した。防衛政策の責任者に民間人が就任するのは、防衛庁、防衛省を通じて初めてである。

専門は外交・安全保障で、保守派の論客として知られる。野田内閣の防衛相は2代続けて資質が問われ問責決議を受けた。これに懲りて専門家の登用となったのだろう。

安全保障の責任者に民間人を抜てきしたことに、野党や与党の一部から批判や疑問が出ている。その一つが文民統制(シビリアンコントロール)との関係だ。選挙の洗礼を受けない民間出身者に軍事問題の責任が負えるのか、という議論である。

しかし、自衛隊の最高指揮官、軍事の最終決定者は首相であり、防衛予算や法律は国会で審議される。憲法は、閣僚は文民でなければならないと定めているだけで、民間人の防衛担当閣僚起用に問題はない。防衛相も国会議員が望ましいという問題提起は理解できるが、民間出身者という理由でただちに文民統制上、問題があるとは言えないだろう。

また、森本氏が自公政権で防衛相補佐官を務め、インド洋からの自衛隊撤退など民主党の政策を批判していたことから、政権の政策との整合性を問う声もある。だが、野田政権の安保政策は自民党のそれに近づいている。一方、森本氏は、集団的自衛権の行使をめぐる持論を封印することを表明した。森本氏と政権の間に大きな溝があるとは思えない。

安全保障をめぐっては、東アジアの環境変化への対応、日米同盟の深化、国際平和協力活動の強化など課題が多い。豊かな知見を生かして活躍できる機会は多いはずだ。

もちろん、政策の実現には政治力が必要となる場面は必ずある。その場合は首相の説得がカギを握る。

そうした課題の一つが、森本氏自身、意欲を示す普天間問題の解決である。沖縄は、日米合意に基づく名護市辺野古への県内移設に強く反対し、県外移設を求めている。これまで何回も足を運んだ沖縄の政治状況を、森本氏は熟知しているはずだ。辺野古への移設は困難であるという現実から出発して打開策を模索すべきである。森本氏もかつて、海兵隊が必ずしも沖縄にいなくても抑止力は維持できるという趣旨の発言をしたことがある。米国の国防関係者との人脈も生かし、辺野古に固執する両政府の現状を打開してもらいたい。

さらに、普天間移設が実現するまでの間、普天間飛行場の周辺住民の危険を除去する対策についても検討を急がなければならない。

普天間の固定化を回避する道筋について、防衛相就任前と同様、論理的かつ明快な説明を聞きたい。

産経新聞 2012年06月06日

森本防衛相 安保政策をただす機会に

野田佳彦首相が第2次改造内閣で民間人から初めて起用した森本敏防衛相について、「政治家でない以上、責任をとれない」などと文民統制上の問題を指摘する意見が野党を中心に出ている。これはおかしい。

閣僚は文民から選ぶとし、民間人の起用を認める憲法に照らしても、森本氏の起用に何ら問題はない。

むしろ、防衛省内で背広組が制服組を統制する「文官統制」の悪弊の方が問題だ。

制服組トップを含む防衛会議の創設など改善点もあるが、省内の重要な意思決定は背広組が中心に行い、制服組を遠ざけるようなゆがんだやり方を是正すべきだ。

安全保障担当として不適格と指摘される大臣が2代続き、国会でも政府内でもまともな安保政策の議論ができなかった。

森本氏は、米軍普天間飛行場の移設問題で、日米合意に基づく辺野古移設案を「最善」とし、一貫して支持してきた。

北朝鮮の核・ミサイル開発や中国の海洋進出で日本を取り巻く安全保障環境が厳しくなるなかで、森本氏の専門的な知見を生かしながら、防衛政策の強化や必要な防衛力整備を図る必要がある。

中でも根本的な課題は、集団的自衛権の行使容認に踏み込むかどうかである。

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