スペイン危機 もう失敗は許されない

毎日新聞 2012年06月03日

スペイン危機 もう失敗は許されない

欧州の信用不安が一段と深刻化し、単一通貨ユーロが急落している。日本を含め、世界各国の株式市場も動揺が止まりそうにない。今度の震源はスペインだ。ギリシャやアイルランドのように、スペインも国際支援を仰がざるを得ない、との見方が急速に広がっているのである。

スペインからの資金流出はすでに本格化している。国債の利回りは危険水域に入った。スペインとユーロ加盟国の政府は、急ぎ対応を決める必要がある。崖っ縁のユーロに失敗を重ねる余地は、もはやない。

市場が再び緊迫するきっかけとなったのは、スペインの大手銀行、バンキアに新たな資本注入の必要性が生じたことだ。しかし、緊縮財政下で、市場からの資金調達も困難となっているスペインに銀行を救済する力は乏しい。外部からの支援抜きでは立ち行かない状況に近づいているが、スペイン政府はその必要性を否定し続けている。

おなじみのパターンではないか。ギリシャにせよ、アイルランドにせよ、政府は当初、問題を過小評価し、自力での立て直しを主張した。欧州全体としても、本格的な手を打たないまま、市場の大混乱を招き、ピンチとなって初めて政治家が動く。そうした後手、小出しの対応を繰り返した結果が今のユーロ圏だ。

読売新聞 2012年06月04日

ユーロ急落 欧州の努力を促す市場の警告

欧州の信用不安が再燃し、ユーロ安に歯止めがかからない。危機を封じ込めるため、欧州の一層の努力が不可欠だ。

外国為替市場で先週末、ユーロが急落し、11年半ぶりに1ユーロ=95円台に突入した。円相場は対ドルでも1ドル=77円台に急騰し円の独歩高になってきた。

歴史的な超円高が嫌気され、東京株式市場の株価は大幅に下落した。米国の失業率悪化などで、ニューヨーク市場の株価も急落し、世界同時株安が進んでいる。

市場の乱高下が続きかねない深刻な状況と言えよう。

ユーロ急落と、連鎖株安の主因は、欧州債務危機を収束させる見通しが立たないことだ。

今月中旬に再選挙を行うギリシャは、選挙結果によっては、経済再建に行き詰まり、ユーロ圏からの離脱を迫られる恐れがある。そうなれば、大混乱は必至だ。

ギリシャの信用不安は、不動産バブルが崩壊したスペインに飛び火し、大手銀行が公的資金の注入を申請する事態に発展した。

しかし、財政赤字を抱えるスペイン政府はすぐに抜本的な救済ができない。懸念が高まり、スペイン国債が売り込まれている。

国際通貨基金(IMF)と欧州連合(EU)は、欧州の危機国を金融支援する体制を整えたが、ユーロ圏第4位の経済規模のスペインを支えるほど十分ではない。

欧州発の危機に拍車がかかり、世界景気に大打撃を与える事態を警戒する必要がある。

スペインの混乱を乗り切るためにも独仏両国の連携が重要だ。

財政健全化路線のメルケル独首相と、経済成長をより重視するオランド仏大統領の主張の違いは、まだ調整されていない。

独仏は足並みをそろえ、財政と成長を両立させる欧州再生の処方箋を描くべきだ。両国主導でユーロ圏が結束し、スペイン支援策を検討することが急務である。

ギリシャのユーロ残留を求めた5月の主要8か国(G8)首脳会議に続き、今月中旬にメキシコで20か国・地域(G20)首脳会議が開かれる。欧州の迅速な対応を促す圧力がさらに強まろう。

ユーロ危機は日本経済にも悪影響を及ぼす。急激な円高・ユーロ安で輸出企業が打撃を受け、景気に冷や水を浴びせるからだ。

安住財務相が超円高に「断固として対応する」と述べ、円売り介入を示唆したのは妥当だ。政府・日銀は、欧米との連携を強化する必要がある。日銀の追加金融緩和策も検討しなければなるまい。

産経新聞 2012年06月07日

金融市場混乱 今こそドイツが動く時だ

欧州債務問題の再燃で世界の金融市場が混乱に陥っている。日米欧、アジアなどの株式、ユーロ、ドルの下落幅やその速度は危険水域といわざるを得ない。

先進7カ国(G7)の財務相・中央銀行総裁が緊急電話協議を開き、欧州危機対応での協調を確認したことで市場はやや落ち着きを取り戻しているが、混乱収束にはほど遠い。

きっかけは、ギリシャのユーロ離脱観測に続く、スペイン大手銀行の経営悪化による信用不安の拡大だ。これに米経済の腰折れ懸念、中国やインドなど新興国経済の減速が重なった。この結果、株、ユーロ、ドルが売られ、日米、ドイツなどの国債や、経済が米欧に比べて堅調な日本円が買われる構図になっている。

このように複数の要素が絡み合った危機を一気に解決できる特効薬はない。緊急性の高いものを直ちに実行し、中長期的な経済再建策を着実に進めるしかない。

主役はいうまでもなく欧州だ。緊急策として、欧州金融安定化基金や欧州中央銀行(ECB)によるスペイン支援が考えられる。

中期的な対応として、金融機関の破綻に備えた欧州預金保険機構の設立、ユーロ共同債の発行も真剣に議論すべきだ。欧州連合(EU)内で検討が始まった緊縮財政と成長の両立も、具体化が急がれよう。

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