原子力規制 原発潰しの道具にするな

毎日新聞 2012年06月01日

再稼働と原発の安全 「私の責任」という無責任

関西電力大飯原発の再稼働を関西広域連合が事実上容認した。政府の安全基準や、それに基づく判断を「暫定的」と位置づけた上で、「限定的」な再稼働に理解を示した。これを受け、政府が近く最終判断するとみられる。

客観的状況が変わらない中での同連合の再稼働容認は釈然としない。しかし、それ以上に納得できないのは野田佳彦首相の言動だ。

東京電力福島第1原発の過酷事故から1年2カ月。これほどの事故を経験しながら、国の原子力政策についても、原発のリスク軽減についても、国民の心に響くメッセージを発していない。にもかかわらず「私の責任で判断する」といった具体性に欠ける言葉で再稼働を推し進めようとしている。

私たちは原発再稼働のためにはいくつかの条件を満たす必要があると考えている。事故の検証を踏まえ、新しい規制組織が再稼働の判断基準を示すこと。その基準は各原発の弱点を比較できるようなものであること。免震棟のように時間のかかる対策が未整備であることのリスクも評価すること。原発を動かさないリスクが動かすリスクを上回ることをきちんと示す、といったことだ。

しかし、いずれも納得のいく状況ではない。

読売新聞 2012年05月31日

原子力規制組織 緊急時には首相指示が要る

原子力規制行政を担う組織はどうあるべきか。与野党が知恵を出し、緊急事態にも迅速に対応できる体制を整えなければならない。

「原子力規制庁」を環境省の外局として設置する政府提出法案と、より独立性の強い「原子力規制委員会」を設ける自民、公明両党案の審議が、ようやく衆院で始まった。

経済産業省の原子力安全・保安院に代わる新組織の発足は、当初予定した4月1日から大幅に遅れている。野田首相が「一日も早く規制制度と防災体制を整えるのが急務」と強調したのは当然だ。

政府・与党は、自公案を大筋で受け入れる姿勢をみせている。衆参ねじれ国会の下、規制行政を早急に立て直すには野党の協力が欠かせないとの判断だろう。

だが、自公案には問題が少なくない。原子力規制委は5人の専門家で構成される。公正取引委員会のように、首相や他の府省の指示を受けず、独立して規制行政を担う仕組みだ。

自民党は、保安院を「独立性が欠如し、安全を軽んじてきた」と批判し、東京電力福島第一原発事故を防げなかった失態を繰り返してはならないとしている。

ただ、一刻の猶予も許されない災害対応の際、合議制を原則とする原子力規制委で、スピーディーに意思決定できるかどうか。自公案が緊急時のルール作りを規制委に委ね、具体的に定めていない点は詰めが甘い。

しかも、規制委のメンバーは国会同意人事だ。時に政治的妥協で選ばれることになると、必ずしも適任者がそろうとは限らない。

政府の体制にも課題がある。

自公案によると、原子炉への対応策は規制委が所管し、住民避難や自衛隊の派遣などは首相を長とする原子力災害対策本部が担当するという。役割を分断し、首相が電力会社に関しても指示できるとする現行規定を廃止する。

これに対し、野田首相が「危機管理上の最後の手段」として首相の指示権を残す必要性を指摘したことは理解できる。細野原発相も「国家の命運を誰に託すかということだ」と強調した。

菅前首相が行ったような電力会社への過剰な介入は論外だが、規制委の専門家に任せきりにするわけにはいくまい。

自公両党内には、政府の主張に理解を示す声もある。未曽有の原発事故の教訓を生かせるよう、与野党が譲り合い、実効性のある組織にしてもらいたい。

産経新聞 2012年06月01日

大飯原発 再稼働へ「決断」ぶれるな

野田佳彦首相がようやく関西電力大飯原発3、4号機の再稼働を決断したようだ。5月30日の関係閣僚会合で首相が「立地自治体の判断が得られれば、最終的に私の責任で再稼働を判断する」と言明したからだ。

地元の福井県議会や西川一誠知事の同意取り付けなどのハードルは残るが、首相が「エネルギー安全保障や日本経済の安定と発展のために原発は引き続き重要だ」と語ったことを高く評価したい。これを後戻りさせることは許されない。

大飯原発は、東日本大震災後に国内の全原発が停止する異常事態に陥った中で、初の運転再開となる。電力の安定供給に対する政府の責務を果たすことが重要だ。

再稼働に慎重だった橋下徹大阪市長らで構成する関西広域連合は30日、再稼働を事実上容認する声明を発表した。電力需要期を控えて、地元産業界などに計画停電などへの危機感が急速に高まり、首長らもこれを共有して現実的姿勢に転じたといえよう。

問題は、再稼働に反対する勢力などが「安全性の確保」を理由に再稼働の流れを巻き返そうとしていることだ。忘れてならないのは、政府がストレステスト(耐性検査)などを経て既に大飯原発の安全性を確認したことである。

毎日新聞 2012年06月01日

再稼働と原発の安全 危機対応は政治主導で

原子力の安全規制を担う新たな組織をめぐる国会審議がようやく始まった。政府案の提出を受けてから約4カ月。現行の内閣府原子力安全委員会や経済産業省原子力安全・保安院は国民の信頼を失っており、与野党は実効性の高い規制体制の確立に向け審議を尽くしてほしい。

政府・与党案は経産省から保安院を分離・統合、環境省の外局として「原子力規制庁」を設置し、同庁をチェックする「原子力安全調査委員会」を新たに設ける。それでは独立性が保てないとして、自民・公明両党は予算や人事の管理権を持つ国家行政組織法3条に基づく「原子力規制委員会」を設置し、規制庁はその事務局とする対案を示していた。

独立性の確保のためには自公案の方が望ましい。政府・与党もその枠組みを受け入れる方針だが、緊急時の指揮権をどこに持たせるかをめぐって、意見が対立している。

政府は、首相の指揮権は危機管理に不可欠だと強調する。

産経新聞 2012年05月31日

原子力規制 原発潰しの道具にするな

原子力発電の新しい規制組織を設置するための法案審議が国会で始まった。原発の安全性向上だけでなく、国のエネルギー安全保障を左右する組織である。国民は規制と活用の両面を冷静に見極めることが肝要だ。

国会では2案が審議されている。政府による「原子力規制庁設置関連法案」と自民、公明両党の「原子力規制委員会設置法案」だ。

両法案に一長一短はあるのだが、厳格度でみれば、自公案の方がより強い。民主党が野党時代に主張していた原子力安全規制への取り組みを、今回の法案では現実路線に戻しているのに対し、自公案は、かつての民主党案に近いものとなっているからだ。

その最たる部分が規制組織の性格だ。政府案は原子力規制庁を環境省の外局としている。これに対し、自公案では国家行政組織法第3条に基づく高い独立性が付与された原子力規制委員会だ。

規制組織の独立性が高ければ、原発の運用サイドにいる経済産業省などの圧力に対抗することが可能になろう。しかしその半面、危うさも生じる。

5人の委員で構成される原子力規制委員会は、メンバーの人選次第では、極端な規制や「原発潰し」に向かって走りかねないからだ。そうなれば、誰も規制の暴走の手綱を締められない。

毎日新聞 2012年05月30日

30年の原発比率 15%以下に抑えられる

経済産業省の総合資源エネルギー調査会基本問題委員会が、2030年を目標にした電源構成に関する報告書をまとめた。

総発電量に占める原発の比率は、0%から25%までの数値を示した3案と数値目標を定めない案が併記された。政府は、「国民的議論」を経て一本化し、8月をめどに新しいエネルギー基本計画を決める。

国論が分かれる中、政府には「脱原発依存」の道筋をしっかりと示す責任がある。

委員会は昨年10月以降、25回開催された。当初は目標とする原発比率の一本化を目指したが、脱原発派と原発推進派委員との溝は最後まで埋まらなかった。

「原発事故のリスクはなくせるのか」「発電コスト上昇による経済への悪影響を回避できるのか」。それぞれの立場から投げかけられた問題に、双方とも説得力ある答えを用意できなかったからだ。

一本化の決断を迫られる政府は、原発の運転期間を40年とし、新増設がない場合の試算値である15%を軸に検討する見通しだ。そうであれば、立場の違う委員が提起した双方の難問に答える努力が求められる。

再稼働の際の安全を確保するには、設置法案がようやく審議入りした新たな規制機関を早く発足させ、今回の事故の検証結果を踏まえた安全基準を作り直す必要がある。

民間の電力会社に原発の運営を任せるのであれば、事故の際に無過失でも無限の損害賠償責任を負わせる原子力損害賠償法も見直すべきだ。

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