消費税率引き上げ関連法案などの衆院採決を巡って、与野党の攻防が激しさを増してきた。
国会会期末まで20日足らずだ。駆け引きにかまけている場合ではない。民主、自民両党は歩み寄り、法案の修正協議に臨むべきだ。
野田首相は1日、民主党の輿石幹事長と約1時間会談した。
会期内の法案採決を目指す首相が、輿石氏と2人きりで語り合ったのは、党執行部の動きに不安を覚えるからだろう。
自民党は、修正協議の前提条件として「会期末までの法案採決日程の提示」などを求めている。
だが、輿石氏は、「修正協議がいつ終わるのかを見ずに『この日採決する』と言う方がおかしい」と拒んでいる。国家公務員制度改革関連法案も、自民党の反対を押し切って審議入りさせた。
長妻昭・元厚生労働相が座長の民主党厚労部門会議は、政権公約(マニフェスト)に基づく「後期高齢者医療制度廃止法案」の素案をあえてこの時期に決定した。
野党に対し、消費増税法案の修正協議を働きかけ、協力を要請する一方で、その神経を逆なでするような動きに出るのは理解しがたい。自民党の谷垣総裁が「与党がどっちを向いているのか分からない」と言うのは、もっともだ。
消費増税法案の採決では民主党の小沢一郎元代表グループらの造反が予想される。党分裂を恐れる輿石氏は、大幅な会期延長による採決の先送りか、次国会への継続審議を狙っていると言われる。
だが、それでは「決められない政治」が延々と続くことになる。日本の財政悪化に対する市場の見方は、ますます厳しくなろう。民主党政権は、これ以上、国政を停滞させてはならない。
首相は、国会対応を輿石氏任せにせず、消費増税法案の今国会成立へ陣頭指揮をとるべきだ。
自民党の賛成を得るためであれば、参院で問責決議を受けた田中防衛相、前田国土交通相の交代も考慮せざるを得まい。
自民党が発表した次期衆院選公約案には消費税10%が明記され、年金など社会保障政策も、マニフェスト関連の政策以外は政府・民主党の案とほぼ同じ内容だ。
しかも、自民党は、「社会保障制度改革国民会議」を設け、対立する政策を時間をかけて議論しようと呼びかけてもいる。
民主、自民両党は、消費増税で社会保障制度改革を実現するという基本線は一致している。千載一遇の機会を逃してはならない。
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