将来の原発比率 現実離れの議論は問題だ

毎日新聞 2012年05月30日

30年の原発比率 15%以下に抑えられる

経済産業省の総合資源エネルギー調査会基本問題委員会が、2030年を目標にした電源構成に関する報告書をまとめた。

総発電量に占める原発の比率は、0%から25%までの数値を示した3案と数値目標を定めない案が併記された。政府は、「国民的議論」を経て一本化し、8月をめどに新しいエネルギー基本計画を決める。

国論が分かれる中、政府には「脱原発依存」の道筋をしっかりと示す責任がある。

委員会は昨年10月以降、25回開催された。当初は目標とする原発比率の一本化を目指したが、脱原発派と原発推進派委員との溝は最後まで埋まらなかった。

「原発事故のリスクはなくせるのか」「発電コスト上昇による経済への悪影響を回避できるのか」。それぞれの立場から投げかけられた問題に、双方とも説得力ある答えを用意できなかったからだ。

一本化の決断を迫られる政府は、原発の運転期間を40年とし、新増設がない場合の試算値である15%を軸に検討する見通しだ。そうであれば、立場の違う委員が提起した双方の難問に答える努力が求められる。

再稼働の際の安全を確保するには、設置法案がようやく審議入りした新たな規制機関を早く発足させ、今回の事故の検証結果を踏まえた安全基準を作り直す必要がある。

民間の電力会社に原発の運営を任せるのであれば、事故の際に無過失でも無限の損害賠償責任を負わせる原子力損害賠償法も見直すべきだ。

読売新聞 2012年05月29日

エネルギー比率 「原発ゼロ」では立ちゆかない

国を支えるエネルギーの将来を左右する重大な選択だ。冷静に現実的な目標を定めることが重要である。

経済産業省の総合資源エネルギー調査会基本問題委員会が、2030年の電源構成に関する選択肢をまとめた。焦点の原子力発電の比率は、0%、15%、20~25%、市場の選択に委ねる――の4案とした。

政府は国民の意見を聴いたうえで、閣僚らのエネルギー・環境会議で今夏、目指すべき最適な電源構成を決める。電力をいかに安定供給していくか。経済性や環境も配慮した検討が求められる。

基本問題委案のうち、東日本大震災前に約30%だった原発を0%とする選択肢は、非現実的だ。

原発分を補うため、再生可能エネルギーの比率を現在の約10%から35%に引き上げる想定だ。

実現するには、太陽光は現在の0・3%から6%へ、風力は0・4%から12%へ、それぞれ20~30倍に増やす必要がある。太陽光パネルなどを設置する広大な用地をどう確保するのだろうか。

発電コストの高騰などで、国内総生産(GDP)は年30兆円も押し下げられる見込みだ。

日照や風の状況で電力が急激に変動する再生エネの欠点を解消するには、さらに巨額の開発費用がかかり、経済の重荷となる。

0%以外の選択肢でも、再生エネの比率を25~30%と高めに見込んでいる。技術革新に過度に期待するのは禁物である。実現可能性を検証すべきだ。

細野原発相は、原発比率の選択肢について、「15%がベースになる」との見方を示した。運転40年で原発を原則として廃炉にする政府方針に沿った発言だろう。

だが、15%案には見過ごせない問題がある。30年以降、原発をさらに減らすのか、更新・新設して活用していくのか、結論を先送りしている点だ。原発の方向性があいまいでは、責任あるエネルギー戦略とはいえまい。

20~25%案が、古い原発を更新する方針を明示しているのは、評価できる。安定した代替電源を確保できるまでは、安全性の高い新型炉を導入し、原子力を火力などと並ぶ基幹電源として使うことが望ましい。

中国をはじめ新興国は原発の新設を計画しているが、日本が「原発ゼロ」に向かえば、原発の輸出ビジネスは展開できなくなる。原子力技術を維持し、安全向上で国際貢献することも、忘れてはならない視点である。

産経新聞 2012年05月26日

将来の原発比率 現実離れの議論は問題だ

平成42(2030)年時点の原子力発電比率を検討している経済産業省の基本問題委員会が、0~35%までの5案を示した。今夏までに政府のエネルギー計画として最終決定する方針だ。

最大の問題は、東京電力福島第1原発事故を受けて、原発ゼロを求める意見が議論に色濃く反映され、料金や安定供給、温暖化対策などを総合的に評価する姿勢が欠けていることだ。

社会・経済を支えるエネルギーの将来像を左右する重要な選択だ。一時の風潮に流されることなく、最適な電源構成を冷静に考えねばならない。

政府が一昨年に決めたエネルギー基本計画は、事故前に26%だった原発比率を42年には約50%に高めるとしていた。だが、昨年の事故で方針は撤回され、夏までに計画を策定し直すことになった。

委員会はゼロから35%までの案ごとに日本経済に及ぼす影響度を試算しているが、原発ゼロの場合の影響は極めて深刻だ。

火力発電向け燃料費の増加に加え、発電コストが高い太陽光や風力などの再生可能エネルギーの調達により電力料金は2倍以上に上昇する。国内総生産(GDP)は5%程度も下がるとされており、国際競争力の低下と産業空洞化を加速しかねない。

また、発電過程で温室効果ガスを排出しない原発をなくすと、二酸化炭素(CO2)の排出削減にも悪影響が出る。原発比率を35%にした場合と比べ、原発ゼロでは温室効果ガスの排出削減効果はほぼ半減する。1990年比で2020年までに温室効果ガスを25%削減するとした民主党政権の国際公約と矛盾はしないか。

原発ゼロのケースは、再生エネルギー比率を35%まで高めることが前提だ。現行では水力を含めても9%にすぎない再生エネルギーをどうやって一気に増やせるのか。道筋は示されていない。原発に代わる主要な電源として現実的な選択肢とはいえまい。

細野豪志原発事故担当相は25日の記者会見で、「原発比率は15%がベースになる」との見方を示した。40年の耐用年数が来た時点で段階的に廃炉にするという政府の方針に沿ったもので、新規増設は考慮していない。電力の安定供給は政府の責務だ。理想論だけではなく、現実を踏まえた議論が問われている。

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