国会事故調 目に余る菅氏の責任逃れ 解明に証人喚問が不可欠だ

毎日新聞 2012年05月29日

国会原発事故調 焦点が散漫ではないか

国会に設置された福島第1原発事故の調査委員会(国会事故調)が、事故当時首相だった菅直人氏と官房長官だった枝野幸男経済産業相を相次いで聴取した。国の危機管理や国民への情報提供の要だった2人だ。

事故の原因究明や対応については政府の事故調も検証を進めている。民間の独立検証委員会(民間事故調)も報告をまとめた。両者とも2人に話を聞いているが、ヒアリングは非公開で行われている。

今回の聴取は公開で行われネット上でライブ中継もされた。英語の同時通訳もある。国内外に彼らの生の言葉が伝わった意味はあるだろう。

2人の話には可能な限りのことはやったという弁明が目立った。だが、危機的状況に対する政府や東京電力の当事者能力の欠如が改めて見えてきたというべきだろう。

事故の原因解明と責任の追及はもちろん、ここから何を学びとり、今後の危機管理体制作りにどう生かしていくか。それが事故検証の焦点のはずだ。強い権限を持ち、政府からも独立した組織である国会事故調に課せられた役割は大きい。

事故当時、官邸に判断材料を提供する役割を担っていたのは経産省の原子力安全・保安院と内閣府の原子力安全委員会、東電だった。しかし、菅氏によるといずれも機能しなかった。枝野氏も「情報を政府として集約し、それに基づく予想、想定ができなかった」と述べている。

読売新聞 2012年05月30日

国会事故調 反省なき菅前首相の脱原発論

東京電力福島第一原子力発電所の事故に対応する政府中枢の混乱と無策ぶりが、改めて明確になった。苦い教訓を生かさねばならない。

国会の事故調査委員会が、菅前首相、当時の閣僚、佐藤雄平福島県知事らからの聴取を終えた。来月をめどに報告書をまとめる。

菅氏は、「(経済産業省原子力安全・保安院、東電などから)原子炉の状況についての説明は一切なかった」「手の打ちようがない怖さを感じた」などと述べた。

当時官房長官だった枝野経産相らも同様の証言をした。

情報収集と事故対応で中心的な役割を担うはずだった保安院は、職員が早々に原発と首相官邸から退去していた。

政権の危機管理能力が欠如していたことを露呈したと言える。

本来なら、政府組織が一丸となって情報を集め、確立した指揮命令系統の下で動くべきだった。

だが、菅氏は思いもよらない行動に出た。枝野氏の反対を押し切って、ヘリで原発を視察し、担当者に説明を求めた。「(現場に)40分くらいいた」という。それが火急の事態に、責任者の時間を浪費させてしまった。

佐藤知事が「国が司令塔の役割を果たせなかった」と批判した意味は重い。

さらに、菅氏は外部の有識者を次々と内閣官房参与に任命し、個人的な助言を求めた。枝野氏が「プラスとは思えない」と批判したのは当然である。

菅氏が誤った「政治主導」を掲げ、過剰に介入したことが現場に負担をかけ、官僚組織を萎縮させた。猛省すべきだろう。

真相がなお不明な点もある。

菅氏は、原発から作業員を全面撤退させるという東電社長の意向を伝えられたと主張した。これに対し、勝俣恒久会長は「事実ではない」と否定している。

国会事故調は、さらに事実の徹底解明を進める必要がある。

菅氏は最悪の場合、3000万人の避難が必要だったとした上で「国家崩壊リスクに対応できる確実な安全確保は不可能だ」と述べた。自ら言い出した「脱原発」を正当化したいのだろう。

しかし、自身の失態を棚に上げて、エネルギー政策に関し、「原子力ムラは深刻な反省もないまま原子力行政の実権を握り続けようとしている」などと自説を振りかざすのは論外である。

原発再稼働に向けた政府の判断は最終局面を迎えている。菅氏の発言は混乱を拡大しかねない。

産経新聞 2012年05月29日

国会事故調 目に余る菅氏の責任逃れ 解明に証人喚問が不可欠だ

「原子力ムラは戦前の軍部と同じ」-。東京電力福島第1原子力発電所事故当時の政府最高責任者として菅直人前首相が国会事故調査委員会(国会事故調)の参考人聴取にこう語った。菅氏は政府や東電などによる原子力行政を「戦前の軍部」に例えて全面解体を求めるなど、国家エネルギー政策を担う責任はみじんも感じられず、唖然(あぜん)とせざるを得ない。

菅氏は事故直後の強引な現場視察を「直接見ることで状況が把握できると考えた」と正当化した。事態を悪化させたとされる海水注入問題でも自らの責任を全面否定するなど「政府の対応を混乱させた」とする海江田万里経済産業相(当時)らの証言と食い違い、国民に重大な疑問を残した。

≪不作為の責任も追及を≫

国会事故調は菅氏の証人喚問など与えられた国政調査権を活用して事実関係を究明し、責任を徹底追及すべきだ。

また今回の聴取で、安全保障会議開催や災害緊急事態布告など首相として当然なすべき対応を取らなかった「不作為の責任」を解明しなかったのはおかしい。事故の再発を防ぐためにも、その究明は国会の責務である。

今回、注目されたのは、2月末に公表された独立検証委員会(民間事故調)の報告で、視察の際に「俺の質問にだけ答えろ」と菅氏が班目(まだらめ)春樹原子力安全委員会委員長を一喝したとされる問題や、昨年末の政府事故調査・検証委員会(政府事故調)の中間報告で政府の情報集約・伝達・公開の不備が指摘されたことへの対応だ。

この記事へのコメントはありません。

この社説へのコメントをどうぞ。
お名前
URL
コメント

この記事へのトラックバックはありません。

トラックバックはこちら
http://shasetsu.ps.land.to/trackback.cgi/event/1052/