アフガン戦争 「責任ある終結」を望む

朝日新聞 2012年05月23日

アフガン情勢 不安定さ直視し支援を

アフガニスタンは、安定にほど遠い。地道な改善のためには現実を直視した支援が要る。

米国など関係国はシカゴで会議を開き、2013年半ばまでに、治安活動の主軸を全土でアフガン部隊に移し、国際部隊は支援にまわることを確認した。

駐留する国際部隊のうち、戦闘部隊は14年末までに撤退し、それ以後は訓練などの役割に徹する。治安の全責任はアフガン自身が担う。15年からの10年間は、この国の「変革の10年」と位置づけられている。

米政府などは、治安状況は改善しつつあり、アフガンの部隊が力をつけてきている、と主張している。だが国連によると、攻撃や戦闘での市民の死者は、一昨年の2790人から昨年の3021人と、増加が続く。

4月には、首都カブールで武装勢力が議事堂や欧米の大使館を攻撃した。武装勢力は主力部隊の撤退を待っている、との見方もある。

アフガンの近代は戦いの連続だ。もともと部族間の抗争が激しいが、外国兵力には強い拒否感があり、19世紀以降、進出してきた英国や旧ソ連に激しい抵抗を続けてきた。

アフガン戦争は01年、当時のタリバーン政権が国際テロ組織アルカイダをかくまっていて起きた。米軍は首謀者のビンラディン容疑者を殺害したが、テロは続き、アフガンの人たちは危険にさらされたままだ。

撤退を急ぐ余り、テロ組織が勢いを取り戻す事態は、避けなければならない。

隣のパキスタンからの武装勢力の越境攻撃も大きな問題だ。こうした勢力と、隣国に親パ政権を作りたいパキスタンの関係も疑われている。だがアフガンの流動化は、やはり政情が不安なパキスタンにも跳ね返る。地域の安定のため、パキスタンにも自制を求める必要がある。

アフガンのカルザイ政権の底の見えない腐敗ぶりは、自立への大きな障害だ。汚職を監視する国際NGOによる公務員の清廉度ランキングでは、183カ国・地域のうち180位だ。いくら諸外国が支援しても、これでは国づくりは進まない。

安定への特効薬はない。教育を広げ、警察や軍を訓練し、粘り強く取り組むしかない。ここ10年のこととはいえ、民間テレビ放送や女性が学べる学校が活動しているのは、自由な社会につながる希望だ。

東京で7月に支援国の会議がある。日本はこれまで40億ドル余(約3200億円)の援助をしてきた。アフガンの人たちが前に進めるよう役立ちたい。

毎日新聞 2012年05月23日

アフガン戦争 「責任ある終結」を望む

勝利への展望は開けないが、これ以上深入りするのも危険だ−−。アフガニスタン情勢に関して北大西洋条約機構(NATO)首脳会議が打ち出した宣言は、そんな苦渋に満ちたものになった。米シカゴで開かれた首脳会議は、アフガニスタンでの戦闘任務を2014年までに終え、24年までにアフガン政府を資金面でも独り立ちさせることをめざす宣言を採択したが、宣言の実行はかなり難しいように思える。

だが、NATO側が終戦への道筋を示したことは意義深い。米同時多発テロの翌月(01年10月)に米国が始めたアフガン攻撃はすでに10年余に及ぶ。泥沼の様相を呈しているアフガン戦争に関する首脳宣言は、たとえ楽観的であろうと終戦への重要な行程表として歓迎したい。

アフガンにはNATOを主体とする約13万人の国際治安支援部隊(ISAF)が駐留している。同部隊は来年半ばまでに戦闘任務の主導権をアフガン国軍に引き渡し、15年以降は国際社会が国軍の訓練に資金援助することになるという。国際社会の戦闘任務は実質的に来年まで、その後は経済面でアフガンの治安維持などを支援しようというわけだ。

読売新聞 2012年05月23日

NATO会議 長期的アフガン支援が必要だ

アフガニスタンからの撤収期限を確認し、同時にアフガンへの長期的な支援継続も約束した。

米国のシカゴで開かれた北大西洋条約機構(NATO)首脳会議が、そんな成果を上げて閉幕した。

採択されたシカゴ宣言は、国際治安支援部隊(ISAF)の戦闘任務は「2014年末に完了する」と明記し、来年半ば以降、アフガン政府の治安部隊が戦闘任務を主導する、とうたっている。

それを可能にするよう、NATOは、アフガン部隊の訓練や装備強化に一層努めるべきである。

ISAF戦闘部隊の撤収期限は示されても、旧支配勢力タリバンとの戦闘が終わる気配はない。予定通り帰還するには、何より治安の改善が必要だ。

ISAFは昨年からアフガン側へ治安権限の本格的な移譲を進めている。アフガン部隊の能力向上と早期自立が求められよう。

戦闘の長期化と犠牲者の増加に伴い、NATO各国では自国軍部隊の早期撤収を求める世論が強まっている。

オランド仏大統領は、選挙戦で、仏軍部隊の撤収を予定より1年前倒しして「年内」と公約し、首脳会議でも明言した。

だが、現地情勢を勘案しないまま早急な撤収に走れば、追随する国が出る恐れもある。NATOの結束が緩むことになって、タリバンを勢いづかせるだけだ。

アフガンを再び国際テロ組織の温床に逆戻りさせてはならない。国際社会の連携が欠かせない。

タリバンは、地元部族社会に深く根を張っている。軍事的に制圧できたとしても、真の平和は訪れまい。米国は引き続き、タリバン穏健派との対話を探る努力を続け、アフガンの国民融和実現へ、環境整備を図らねばならない。

NATOは、15年以降も「強力かつ長期的な支援」を提供することを決めた。アフガンの安定を後押しする政治的意思を表明したものとして意義は大きい。

首脳会議後のNATOとの会合で、玄葉外相は、日本としてもアフガン治安部隊への支援を継続する方針を表明した。7月に東京で開くアフガン支援国際会議の成功に向け、協力も求めた。

日本は、民主党政権になって、09年から5年間で約50億ドル(約4000億円)の支援を約束し、実施中だ。実効ある支援になっているのか、検証が必要である。

汚職体質が問題視されるアフガン政府には、使途の透明性向上を求めていくべきだ。

詠み - 2012/05/24 09:04
「毎日」が前半しか掲載されていません。
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