東京スカイツリー 都市を考える新名所に

毎日新聞 2012年05月20日

東京スカイツリー 都市を考える新名所に

自立した電波塔としては世界一の高さ(634メートル)を誇る東京スカイツリー(東京都墨田区)が22日、開業する。スカイツリータウン(商業施設や水族館、プラネタリウムを含む)で初年度、約3200万人の人出が見込まれている。

地上デジタル放送の送信がこの塔の大きな役割だ。林立する高層ビルが及ぼす影響を受けないために、高さが必要だったという。

まず、空に伸びる大樹をイメージした形が目をひく。地上では三角形の平面が、上に行くにつれ円形に変化する。日本刀の「そり」や寺社の柱のふくらみである「むくり」など、日本の伝統的なデザインが取り入れられている。見る角度によって微妙に姿が変化するのが楽しい。機能美の東京タワー(東京都港区)とはまた違った味わいだ。

塔の建つ場所に注目したい。建築評論家の馬場璋造(しょうぞう)さんは「都市というのは東西南北、各方向で引っ張り合っている」と指摘する。そして、片方にだけ引っ張られると都市全体が単調になり、活力が失われていくというのだ。逆に多方向に引っ張られると都市が活性化し、多彩な表情を見せるという。それは人々の多様な楽しみや夢につながる。

読売新聞 2012年05月21日

東京スカイツリー 世界一の塔が日本を元気に

いよいよ、あす22日、「東京スカイツリー」がオープンする。

高さ634メートル。東京タワーの2倍に近く、自立式電波塔では世界一となる。地上350メートルと450メートルの展望台から望む光景には、誰もが息をのむことだろう。世界に誇るべき建築物の開業を祝いたい。

ツリー工事中の昨年3月、最高点に達する直前に、東日本大震災の激しい揺れに見舞われた。だが、作業員にもツリーにも被害はなく、建設は着々と続けられ、1週間後に634メートルに到達した。

耐震建築技術の確かさを証明した出来事であると同時に、日本と日本人の、困難に屈しない姿を、そこに重ね見た人も多かったのではないか。

高度成長期の象徴として記憶された東京タワーのように、スカイツリーは、東日本大震災の試練を乗り越えていく、新たな時代の象徴となろう。

過去から現在に至る、日本の建築技術の結晶でもある。

天高く組み上げてもほとんどゆがみのない鋼管など、最新鋭の技術と職人技によって作られた建材が、全国から厳選された。

限られた広さの敷地に建設するため、塔の横断面が足元の正三角形から、上に行くにつれて円形に変わる。そこに「反り」「むくり」といった、寺社建築や日本刀などの造形が生かされた。

中心に「心柱」を通すという、地震の揺れを減じるための構造も五重塔の技法に学んでいる。

建設に携わった人たちは、東京タワーを作った先輩技術者を乗り越える意気込みで取り組んだという。その姿が今度は、未来の技術者の目標となるだろう。

テレビ電波などを発信する役目は、来年初めにも東京タワーから引き継ぐ予定だ。

ツリーと関連施設で年間3200万人の集客を見込む。地元・墨田区は経済波及効果を区内だけで880億円と試算している。

周辺には東京ゲートブリッジなど、新たな観光スポットが相次いで誕生している。相乗効果によって、外国からの観光客を大勢呼び込めるのではないか。

ただ、これほどの人が集まる新施設に対して、歩道や駅など周辺整備が十分に追いついているとは言えない。東京都と墨田区、施設関係者は、事故や混乱が起きぬよう万全を尽くしてもらいたい。

東京スカイツリーに近づく人たちの顔は、おのずと上を向く。日本全体を元気づける、新たな拠点になることを期待したい。

産経新聞 2012年05月23日

スカイツリー タワーが希望を作り出す

金環日食から2日続けて、多くの人が空を見上げたのではなかろうか。東京スカイツリーの開業である。

高さは634メートルと、自立式電波塔としては世界一だ。東京タワーが敗戦の荒廃から立ちあがり、高度経済成長へと向かう象徴だったように、スカイツリーには東日本大震災を乗り越えた、21世紀の日本の明るい未来を託したい。

スカイツリーが建てられた墨田区は、典型的な東京の下町だ。そこに最新のツリーが誕生した。新鮮で刺激的な取り合わせだ。

初日から見物客が殺到し、関連商業施設を含めると、同区で年約880億円の経済効果が試算されている。落ち込んだ外国人観光客の呼び戻しにも期待がかかる。

何よりも、スカイツリーには日本全体を明るい気分に包み込み、うつむきがちの日本人を勇気付ける効果がある。

現在の日本は、長引く不況に加え震災や原発事故の災禍からも抜け出せないでいる。国も国民も沈滞気味なこの時期に「平成の新塔」が誕生したことは、偶然としても意義深い。

というのも、塔やタワーには実用的機能のほか「精神的支柱」としての役割があるからだ。仏舎利(釈迦の遺骨)を納める五重塔など日本の古塔も、信仰の対象としてだけでなく、それを仰ぐ人々に安らぎや希望を与える建造物として存在してきた。

スカイツリーは平成20年7月に着工し昨年3月、約620メートルに達したときに大震災に見舞われた。しかし、法隆寺五重塔などにみられる「心柱」を参考にした耐震構造で、震度5弱の激しい揺れを凌(しの)いだ。将来、首都直下地震が発生しても「損傷はほとんどないはず」と関係者は胸を張る。

鉄骨も一本一本、職人の手作業で溶接された。根元の断面の正三角形が上に向かうにつれ円形となる複雑な構造だが、塔高に対するゆがみがわずか0・003%と、驚異的な正確さだ。

昭和33年の東京タワー完成から54年、平成の東京スカイツリーが希望のバトンを引き継ぐ。

伝統的建築技法にも学んだ現代日本の「モノ作り技術」の優秀さに自信を持とう。

再び上を向いて歩き始めた日本と日本人の象徴として、スカイツリーが後世まで仰がれる塔となることを祈りたい。

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