裁判員法の施行から丸3年となる。この間、約2万8000人が裁判員や補充裁判員を務め、約3600人の被告に判決が出された。
最高裁が実施した裁判員裁判の量刑に関する調査では、強姦致傷や強制わいせつ致傷など性犯罪事件に対する厳罰化の傾向が浮かび上がった。
強姦致傷事件の場合、裁判員制度スタート前は「懲役3年超、5年以下」の判決が最多だったが、裁判員裁判では「5年超、7年以下」が最も多くなっている。卑劣な性犯罪に対する裁判員の厳しい姿勢が表れていると言えよう。
逆に、殺人や放火、強盗致傷では刑に執行猶予が付くケースが増えた。被告の更生を期待したり、介護疲れによる殺人などで被告の事情を酌んだりしたためだ。
判決に市民感覚を反映させるという制度の主眼が、こうした点で具体化しているのではないか。
裁判員法は、施行後3年で、必要があれば制度の改善を検討するよう付則で定めている。制度を根付かせるには、最高裁や法務省が中心になって現状を分析し、問題点を洗い出す必要がある。
各地裁が、裁判員経験者との意見交換会を開催しているのも、その一環だ。
東京地裁で16日に開かれた会合では、「専門知識がないので、量刑の判断に悩んだ」「評議の時間がもう少しほしかった」といった意見が出た。会社を休むのに苦労したという声もあった。
「命に関わること。負担に感じなかったわけではない」「証拠判断が難しかった。つらかった」。これは死刑か無罪か、の判断を迫られた裁判員が、死刑判決後の記者会見で語った言葉だ。
裁判員制度が、裁判員の心身にかかる大きな負担の上に成り立っていることは確かである。
事件現場の凄惨な写真などを見ることもある。裁判員の心のケア対策は十分だろうか。
最高裁が設けている裁判員経験者向けの窓口には、これまでに約150件の相談が寄せられた。カウンセラーらが対応にあたっている。相談内容を分析し、制度の改善に生かしてもらいたい。
証拠を事前に絞り込む公判前整理手続きで審理がスピードアップするなど、刑事裁判は大きく変わった。市民が主体的に司法と関わる意識を持つようになったことも成果と言える。
裁判官、検察官、弁護人は、今後も裁判員に分かりやすい審理を心がけることが肝要だ。
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