裁判員制度3年 経験者の声を生かした改善を

毎日新聞 2012年05月21日

裁判員制度3年 審理の改善が必要だ

裁判員制度施行から21日で丸3年がすぎた。国民の司法参加は社会に定着したのだろうか。

最高裁が公表した刑の重さ(量刑)の分布を見ると、裁判官だけの裁判だった時代と比較して、性犯罪や傷害致死事件などで刑が若干重くなる傾向が表れた。

なぜか。性犯罪は「被害者は心の傷も大きく、これまでの刑が軽すぎた」との裁判員の声に代表されそうだ。傷害致死事件では、殺意の有無ではなくどんな事情で人の命を奪うのかを重くみるのだろう。親が子供を虐待死させたとされる事件で、求刑の懲役10年を超える懲役15年が言い渡された例が典型だ。

一方で、放火や殺人などの事件では執行猶予を付ける割合が増えた。中には介護殺人のケースも含まれる。執行猶予の場合、保護司との定期的な面談を義務づける「保護観察」を付ける割合が大きく増えた。

やむにやまれぬ事情は時に最大限酌んだうえで量刑を判断し、社会に戻っての更生にも目を向ける。そんな裁判員の姿勢が浮かんでくる。

裁判員制度の導入に当たっては市民の「健全な社会常識」が期待された。裁判官、検察官、弁護士ら法曹三者は、3年間の実績を好意的に受け止めている。被告が控訴した場合、2審で1審の判決が破棄される割合は、裁判官だけの裁判だった時代よりも減った。判決内容がおおむね適切との評価の下、1審尊重の流れが強まっていると言える。

読売新聞 2012年05月18日

裁判員制度3年 経験者の声を生かした改善を

裁判員法の施行から丸3年となる。この間、約2万8000人が裁判員や補充裁判員を務め、約3600人の被告に判決が出された。

最高裁が実施した裁判員裁判の量刑に関する調査では、強姦(ごうかん)致傷や強制わいせつ致傷など性犯罪事件に対する厳罰化の傾向が浮かび上がった。

強姦致傷事件の場合、裁判員制度スタート前は「懲役3年超、5年以下」の判決が最多だったが、裁判員裁判では「5年超、7年以下」が最も多くなっている。卑劣な性犯罪に対する裁判員の厳しい姿勢が表れていると言えよう。

逆に、殺人や放火、強盗致傷では刑に執行猶予が付くケースが増えた。被告の更生を期待したり、介護疲れによる殺人などで被告の事情を酌んだりしたためだ。

判決に市民感覚を反映させるという制度の主眼が、こうした点で具体化しているのではないか。

裁判員法は、施行後3年で、必要があれば制度の改善を検討するよう付則で定めている。制度を根付かせるには、最高裁や法務省が中心になって現状を分析し、問題点を洗い出す必要がある。

各地裁が、裁判員経験者との意見交換会を開催しているのも、その一環だ。

東京地裁で16日に開かれた会合では、「専門知識がないので、量刑の判断に悩んだ」「評議の時間がもう少しほしかった」といった意見が出た。会社を休むのに苦労したという声もあった。

「命に関わること。負担に感じなかったわけではない」「証拠判断が難しかった。つらかった」。これは死刑か無罪か、の判断を迫られた裁判員が、死刑判決後の記者会見で語った言葉だ。

裁判員制度が、裁判員の心身にかかる大きな負担の上に成り立っていることは確かである。

事件現場の凄惨(せいさん)な写真などを見ることもある。裁判員の心のケア対策は十分だろうか。

最高裁が設けている裁判員経験者向けの窓口には、これまでに約150件の相談が寄せられた。カウンセラーらが対応にあたっている。相談内容を分析し、制度の改善に生かしてもらいたい。

証拠を事前に絞り込む公判前整理手続きで審理がスピードアップするなど、刑事裁判は大きく変わった。市民が主体的に司法と関わる意識を持つようになったことも成果と言える。

裁判官、検察官、弁護人は、今後も裁判員に分かりやすい審理を心がけることが肝要だ。

産経新聞 2012年05月24日

裁判員3年 よりよい制度に見直しを

裁判員制度の施行から3年がたった。国民の司法参加は、予想を超える速度で定着しているようにみえる。勤勉で真面目な国民性が制度を支えているといえるだろう。

裁判員法には、施行から3年を経過後、必要に応じ制度の見直しを行う規定がある。国民の間にさらに制度を根付かせるため、改善を図る必要がある。

施行以来、これまでに約2万8000人が裁判員・補充裁判員を務め、3600人を超える被告に判決を出した。裁判員経験者の95%以上がアンケートに「よい経験だった」と答えている。

14人の被告に死刑判決も下された。それぞれ国民から選ばれた裁判員が真剣に審理と向き合い、苦悩の末に選択した結論である。重い判断だと受け止めたい。

最高裁によると、裁判員裁判の量刑では強姦(ごうかん)致傷や強制わいせつ致傷といった性犯罪事件で厳罰化の傾向がみられた。一方で介護疲れなどが事件の背景にある場合は、事情を酌んで執行猶予がつく割合も増えている。それが、国民感覚ということだろう。

裁判員裁判の対象は、法定刑に死刑や無期懲役が含まれるか、故意に人を死亡させた事件だ。

このため最高刑が無期懲役となる覚醒剤の密輸事件も含まれるが、3年間で8件の1審無罪判決が相次いだ。

覚醒剤の密輸は特殊な組織犯罪であり、専門的な知見や判断が必要とされる部分がある。罪種によって、裁判員裁判の対象から外すことも検討課題となる。

裁判員には、判決に向けた評議の中身について秘密を守るよう定められ、罰則もある。一方で感想については語ってもよいとされており、分かりにくい。

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