初めて海外から受注した韓国の衛星など4基を載せたH2Aロケット21号機が、打ち上げに成功した。
いずれの衛星も予定軌道に乗った。
すべてスケジュール通りで、極めて順調だった。
注目された衛星は、韓国航空宇宙研究院の「アリラン3号」だ。高解像度のカメラを搭載し、地上を精密撮影できる。
日本の宇宙関係者が悲願としてきた、海外衛星の打ち上げビジネスへの参入に一歩をしるした。成功を商機拡大につなげたい。
H2Aの打ち上げも、2003年の6号機失敗後、15回続けての成功となった。成功率95・2%は世界のトップクラスだ。
ただし、打ち上げ回数では、日本の強力なライバルである欧州のロケット「アリアン」が約200回に達している。成功率も約95%だ。21回のH2Aは、世界水準には、まだまだ遠い。
それだけに、日本の打ち上げビジネスの前途は険しい。
H2Aを製造している三菱重工業は、07年ごろから打ち上げ契約獲得を目指してきた。打診は100件を超えるが、成約に至ったのは、今回の衛星以外にない。
打ち上げ費用を低減する取り組みを強化するなど、さらなる営業努力が必要だろう。
韓国側は、打ち上げにH2Aを選択した理由として、費用の「安さ」を挙げている。
H2Aの打ち上げには、通常100億円前後かかるが、韓国の衛星は、地球の水環境を詳細に観測する日本の宇宙航空研究開発機構の衛星「しずく」と相乗りのため料金が軽減されたという。
ロケット製造コストの一層の削減も必要だ。三菱重工業も部品調達の見直しなどで、将来の費用半減を目標に掲げている。
政府も、産業界の取り組みを積極的に後押しすべきだろう。
地球観測や通信など様々な政府の衛星を、今後もH2Aで切れ目なく打ち上げることで、実績作りにも貢献する必要がある。
H2Aの次の国産ロケット開発についても、本格的に検討を始めるべきではないか。新規の研究開発がなければ、優秀な技術者はいなくなる。H2Aに携わった技術陣はすでに引退し始めた。
米国では、民間企業主導で、打ち上げ費用がH2Aの半額程度という安価なロケットも登場している。実績はまだ少ないが、新たなライバルになろう。
国産ロケット技術の維持、強化へ産官学の協力が重要だ。
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