広島県福山市にあるホテルの火災で7人が亡くなった。客を集める建物なのだから、もっと法や制度で安全になるよう指導できなかったのだろうか。
ホテルの窓は内側から板でふさがれ、廊下の非常用照明はなかった。火災報知機が作動しなかった可能性もある。
この建物は60年代に別々に建てられた木造と鉄筋コンクリートの2棟をつなげた構造になっていた。そのために耐火構造物でなくなり、違法建築になっていた疑いも出ている。
建築基準法に違反しているとわかれば、自治体は建物の使用禁止命令を出せる。
そうした強い権限があった福山市は、改築の経緯について詳しく把握していなかった。
火災原因の特定はこれからだが、警察や消防当局には責任の所在を解明してもらいたい。
福山市の防災査察で、排煙設備などで現行の基準法では不適格となる点も見つかっている。
だが、建築時には法の規定を満たし、その後の改正などで適合しなくなった「既存不適格」と判断して、罰則のある是正命令は出さなかったという。
既存不適格の建物は現行の基準法では違法状態でも、建築時の基準をあてはめるため、改修の義務はないという取り扱いになっている。
だがそれは、多くの人が出入りする建物を危険なまま放置することにつながりかねない。
安全のためにぜひとも必要な基準は、一定の期間をおけば既存の建物にも適用されるよう建築基準法を改正すべきだ。
すでにある建物にも規制が及ぶという考えは、消防法にとりいれられている。
たとえば、04年の法改正で設置が義務化された住宅火災警報器は新築だけでなく、既存の住宅にも適用されている。
その消防法にも見直しが必要だ。消火の決め手になるスプリンクラーの設置基準である。
宿泊施設で設置が義務付けられているのは延べ床面積6千平方メートル以上で、今回のような小規模なホテルは対象になっていない。病院や雑居ビルの現行基準は、3千平方メートル以上が対象だ。
様々な人を集める施設は床面積にかかわらず、スプリンクラーの設置を義務づけるよう改正すべきだ。
法改正には時間がかかるだろう。営業目的の集客施設では、不適格を是正したところの認証制度をつくってはどうか。
それを公表すれば、利用者がより良い施設を選ぶことができる。集客施設が安全を重視することにもつながるだろう。
この記事へのコメントはありません。