太陽光発電 負担増の理解得られるか

毎日新聞 2009年11月03日

太陽光発電 一歩踏み出す姿勢で

太陽光発電で余った電力を2倍の価格で電力会社が買い取る制度が今月から始まった。地球温暖化対策の柱のひとつが再生可能エネルギーの活用で、家庭の屋根を利用できる太陽光発電は、一般の人も比較的参加しやすい省エネの取り組みだ。

日本は太陽光発電用パネルの開発で先行してきた。しかし、08年の年間発電導入量は6位に下がってしまった。累積導入量でも05年に、世界一の座をドイツに明け渡している。

政府が住宅用太陽光発電に対する国の補助を打ち切り、設置が伸び悩んだためだ。

そこで政府は、補助制度を復活したうえ、家庭や学校などが余った電力を売却する際の価格を、11月から1キロワット時当たり24円程度から同48円に引き上げた。

電力会社は10年間買い取りを義務付けられており、この期間に設置費用を回収できるようにしようというわけだ。

買い取り価格が上昇する分は、全体の電気料金に上乗せされ、国全体で広く薄く負担する仕組みになっているが、こうした施策の結果、太陽光パネルの設置の申し込みが大きく増えている。

太陽光の利用は世界的に拡大が見込まれている。この分野で日本がリードを続けるためにも、積極的な施策が必要だ。

そこでポイントとなるのが、与党となった民主党が、太陽光だけでなく風力なども含めた再生可能エネルギーを買い取る新制度の創設を公約している点だ。

これについて菅直人国家戦略担当相は「来年度からやろうと思っている」と述べ、再生可能エネルギーによる発電について、全量を電力会社に買い取らせる仕組みの早期実施を表明した。

余剰分だけでなく全量買い取りとなると、自分で使う電力は電力会社から安く買う一方、発電した電力は高く売ることによって利益を得ようとする人たちも出てくるだろう。

ドイツはこうした仕組みの導入により、太陽光発電で首位に立ったわけだが、そのコストも国全体で負担することには異論もあるだろう。また、再生可能エネルギーによる発電量が増え過ぎると、電力供給が不安定になるという指摘もある。

しかし、太陽光発電で日本の順位が下がったのは、導入に伴うさまざまなコストを誰が負担するのかについて、結論を出せなかったからではなかったか。

再生可能エネルギーの利用拡大によりビジネスが活性化すれば、経済浮揚効果も期待できるはずだ。まず一歩踏み出すという姿勢で、この問題には取り組んでもらいたい。

産経新聞 2009年11月01日

太陽光発電 負担増の理解得られるか

太陽光発電の余剰電力について、従来価格の2倍で電力会社がすべて買い取る制度が1日スタートした。太陽光発電の導入を促すことで温室効果ガスの排出削減につなげる狙いがある。

ただ、買い取るコスト分は電気料金に転嫁されるため、今後料金は段階的に引き上げられる。太陽光など自然エネルギーの利用拡大は地球温暖化防止に不可欠ではあるが、負担増については国民の納得できる説明が求められる。

今回の制度は、住宅や工場などが太陽光で発電した電力のうち、使い残した分を電力会社が従来の2倍にあたる1キロワット時48円で買い取る仕組みだ。一般家庭では年間約10万円の収入になるとされ、太陽光パネルの設置費用が10年程度で回収できる計算だという。

すでに家電量販店などでは太陽光パネルの専用売り場が設けられるなど、導入機運は徐々に高まりつつある。

一方、買い取り費用はすべての電力利用者が全体として負担する仕組みとなっている。平成23年度からは、一般家庭で月額平均の電力料金は約30円値上げされ、最大で同100円程度まで引き上げられる見通しだ。

この制度は自民党政権時代に決定されたが、民主党は政権公約で太陽光だけでなく、風力や地熱などについても買い取る方針を盛り込んだ。経済産業省は来年3月までに、買い取る対象や価格などの概要を決める方向だ。

ただ、こうした自然エネルギーは太陽光を含め発電コストが割高で、電力料金はさらに引き上げられる可能性がある。

こうしたコスト増分を、すべて電気料金の引き上げのかたちで利用者の負担に回す現在の制度がはたして適正なのかどうか、再検討する必要はあるだろう。

いずれにせよ、太陽光を含めた自然エネルギーは発電量全体の1%にすぎず、今後比率が高まったとしても、せいぜい数%のレベルとみられている。自然エネルギーへの過度な期待は禁物だろう。発電過程でCO2をほとんど排出しない原子力発電を含めたバランスある電源構成を目指すべきだ。

東京電力の柏崎刈羽原発は、新潟県中越沖地震の影響で7基中6基が今も運転を停止している。安全の確保は当然だが、原発の稼働率向上は温室効果ガスの排出量削減に直結する。政府の積極的な取り組みが求められている。

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