米国で開かれた日米など主要8か国(G8)首脳会議(サミット)は、首脳宣言を採択した。
G8宣言が、最大の焦点となった欧州債務危機の克服に向け、「強くまとまりのあるユーロ圏が重要」と指摘し、震源地のギリシャにユーロへの残留を促した意義は大きい。
政局が混迷するギリシャは、来月17日に再選挙を実施する。その結果によっては、経済再建に行き詰まり、ユーロからの離脱を余儀なくされる恐れがある。
そうなると、危機拡大でユーロが急落し、世界の市場の混乱に一段と拍車がかかりかねない。
宣言が、「世界経済は強い向かい風である」と危機感を示し、ギリシャと、独仏など欧州に自助努力を求めたのは当然だ。
ギリシャ国民が再選挙で、賢明な選択をするよう期待したい。
とはいえ、ギリシャでは、財政再建に向けた緊縮策への反発が根強い。仏大統領選でも、緊縮財政見直しを掲げたオランド氏が当選し、今回のG8に初参加した。
宣言が「成長と雇用の促進が必要不可欠だ」と明記し、経済成長と財政健全化を両立させる方針を打ち出したのは、これまでの緊縮策一辺倒への反省と言える。
各国が財政規律を守るだけでなく、景気回復を実現する成長戦略を重視することは大事だ。だが、そのバランスは難しい。
欧州の対応がまず焦点になる。緊縮策を重視するドイツと、軌道修正に動いたフランスが協調し、欧州再生の道筋を描くべきだ。
日本も対岸の火事ではない。消費税率引き上げ関連法案を早期に成立させ、財政再建と景気拡大をともに目指さねばならない。
世界経済の懸念材料である原油高騰に備え、宣言が、国際的な連携の姿勢を示したのも妥当だ。
一方、G8は北朝鮮問題について、核実験に踏み切れば国連安全保障理事会に「行動」を取るよう求めることで一致した。野田首相が「国際社会として北朝鮮の悪行に対価を与えない」と、強い姿勢で論議を主導した。
核実験の阻止には、北朝鮮に自制を促す中国の役割が欠かせない。G8は引き続き、中国に強力に働きかけるべきだ。
依然として緊迫するシリア情勢についてもG8が憂慮し、必要に応じ国連による措置を検討する、としたのは適切である。
混乱が続くアフガニスタンの自立も急務だ。7月に支援会議を開く日本は、国際的な体制作りに積極的な役割を果たすべきだ。
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