米軍基地の存在は、沖縄の経済的な自立を阻んできた。
だが、県民総所得に占める軍用地料など基地関連収入の割合は年々、相対的に減っている。復帰時には16%あったが、いまや5%ほどだ。
こんな実情を反映して、10年ごとの沖縄振興計画を、今回初めて県が主体的につくり、きょう正式決定する。
これまでの国まかせから脱却し、県が具体策を練る。それこそが真の自立に向けた出発点になるはずだ。
沖縄県の1人あたりの県民所得は全国最少の部類で、東京都民の半分ほどだ。
完全失業率は最も高い。
経済の疲弊ぶりを示す数字に読めるが、沖縄を「一番元気を失っていない都道府県」(「デフレの正体」、藻谷浩介氏)とみる見解もある。
それは就業者の絶対数が増える傾向が沖縄に顕著なためだ。バブル経済崩壊の90年を起点に、直近のデータと比べれば、個人所得は1.4倍、小売販売額が1.2倍を超えている。
このほか、平均年齢40.5歳は最も若く、15歳未満の人口割合の多さや、女性の平均寿命の長さも日本一だ。
人口千人あたりの出生率は、12.2あり、全国で唯一、2けた台に乗っている。
こんな元気な沖縄でいま、環境に優しいエネルギーの試みが注目されている。
そのひとつが、県レンタカー協会などによる「EV(電気自動車)普及プロジェクト」だ。
昨年2月、約200台のEVをレンタカーに導入した。県別では全国トップの多さだ。充電設備会社も設立して、沖縄本島全域に27基の高速充電施設を備えた。
沖縄本島は南北120キロある。1回の充電での走行距離が160キロ程度のEVの普及実験場としては最適な規模なのだ。10年目には県内のレンタカーの約1割に当たる2500台のEV化をめざすという。
実績を重ねて、将来は海外の島しょ国に沖縄発のEV普及戦略を広げていくのが県レンタカー協会の描く構想だ。
県や市町村も公共施設に充電施設を整えたり、EVを公用車にしたりして、構想に協力したらどうだろう。
沖縄電力は全国10電力会社でただひとつ、原子力発電所を持っていない。そんな事情もいまでは、環境先進地をめざす推進力になる。
環境先進地への挑戦を「脱基地経済」への足がかりにすることを期待する。
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