日中韓3か国の幅広い協力を、自由貿易圏の形成や北朝鮮の核開発など重要課題における具体的な成果につなげたい。
野田首相が北京で中国の温家宝首相、韓国の李明博大統領と会談し、日中韓の自由貿易協定(FTA)交渉を年内に開始することで合意した。
3か国は、FTAの前提となる、知的財産権の保護などを定めた日中韓の投資協定に署名した。
韓国が当初、中韓2国間のFTAを優先する姿勢を見せ、3か国の交渉入りが危ぶまれていただけに、今回の合意を歓迎したい。
世界の国内総生産(GDP)の約2割を占める日中韓が自由貿易圏を作る意義は大きい。急速に経済を拡大させている中韓両国との貿易を活発化することは、日本の成長戦略にも欠かせない。
中国が日韓とのFTAに前向きになった背景には、米豪など9か国が交渉中の環太平洋経済連携協定(TPP)への参加に日本が本格的に動き始めたことがある。
だが、日本は国内調整の遅れから、TPP交渉参加を表明できないでいる。参加が遅れるほど、日本は国際貿易のルール作りに関与する余地が狭まってしまう。
米国主導のTPP交渉に早期に参加するとともに、国内農業の改革と競争力強化に積極的に取り組む必要がある。それが日中韓FTAにも良い影響を与えよう。
首脳会談では、北朝鮮の核問題について日中韓の連携を強化することで一致した。野田首相は「核実験を含む、さらなる挑発行為を防ぐことが重要だ」と語った。
肝心なのは、北朝鮮に厳しい日米韓などと、融和的な中国との足並みをそろえることだ。
先月中旬に弾道ミサイルを発射した北朝鮮に対し、国連安全保障理事会は今月2日、北朝鮮の貿易会社など3団体を資産凍結の対象に加える制裁を決定した。
日米韓などは約40団体の追加を提案したが、中国の反対で3団体にとどまった。国際社会の発射中止要求を無視した北朝鮮への懲罰として、十分とは言えない。
北朝鮮の核実験の阻止には、李大統領が「より効果的な方策を講じる時点に来ている」と指摘したように、北朝鮮に自制を促す圧力を強めることが重要だ。
食糧やエネルギー支援を通じて北朝鮮への一定の影響力を持つ中国の責任と役割は大きい。
とにかく北朝鮮を刺激しない、という従来の姿勢を中国が転換することが、日中韓協力をより実の伴うものに高めよう。
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