東京電力が安定供給を果たすには、一定の値上げはやむを得まい。
ただし、必要性や根拠を丁寧に説明し、理解を求める責任がある。
東京電力が11日、家庭や個人商店など小口契約の電気料金について、平均10%の値上げを経済産業省に申請した。
使用量が少ないほど値上げ額を小幅とし、標準家庭で7%、月480円の負担増という内容だ。
値上げは3年間の期間限定で、東電の再生を目指す総合特別事業計画の前提となっている。
東電は福島第一原子力発電所事故の影響で原発を再稼働できず、経費を削っても火力発電所の追加燃料費などで年7000億円の収支不足に陥る。今後、損害賠償や廃炉のコストも膨らんでくる。
値上げで増収を図り、赤字を穴埋めするのが狙いだ。
しかし、デフレで収入の増えない家計にとって痛手となる。東電は、利用者の声に誠実に対応しなければならない。
東電が経営合理化を進め、値上げの幅と期間をできるだけ圧縮するよう努めるのは当然だ。
新潟県の柏崎刈羽原発を1基再稼働すると、東電の収支は約800億円改善する。値上げを3年で終えるには、7基ある原子炉を来年度から順次、再稼働する必要がある。現状では実現への道筋は描けていない。
東電は7月から値上げしたい考えだが、新たに有識者委員会による査定が追加された。枝野経済産業相が認可するタイミングは、遅れる可能性が強まっている。
枝野氏は「予断を持たず、厳格に査定していく」としている。申請内容をチェックし、妥当な値上げ幅を精査することは重要だが、いたずらに手続きを煩雑にするのは避けるべきだ。
枝野氏が自ら、値上げ案を明記した事業計画を認定したことを、忘れてはならない。
4月からの企業向け料金値上げは、東電の説明不足が原因で対象企業の3割が値上げに応じていない。協力した企業が損をするような状況では、一般家庭も値上げに納得がいかないだろう。東電は問題解決を急がねばならない。
値上げで利用者が負担するお金は、液化天然ガス(LNG)など火力燃料の輸入に充てられ、国外流出する。震災後、日本の貿易収支は過去最大の赤字に転落した。経済力の低下は食い止めたい。
火力への依存を減らすことが急務だ。政府は原発再稼働への取り組みを加速させるべきである。
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