ロシアでプーチン氏が4年ぶりに大統領に復帰した。多くの難題を抱えた新体制発足である。
就任式で、プーチン氏は、「我々は国を強くし、偉大な国民の誇りを取り戻した」と述べ、今後も強いロシアを追求する姿勢を示した。
具体的な目標として、世界5位以内の経済大国入りを掲げていることが注目される。
それには、何よりも、資源依存体質を変え、国際競争力を持つ製造業など国内産業を育成しなければならない。先端技術の導入は不可欠である。
公正な市場の形成に取り組み、外国の投資を呼び込むための環境を整備しなければ、国内外から信頼は得られない。
ロシア社会にはびこる汚職を一掃し、法治を確立することが急務だ。プーチン氏が2000年に初めて大統領になった時以来の宿題だが、依然改善できずにいる。
就任式前日、多くの市民が参加して反プーチン集会が開かれたのは、不満の大きさの表れだ。
変革を求める中間層からも支持を得られるように、政治・行政の大胆な見直しを進めてこそ、経済発展も可能となろう。
プーチン氏は、就任後最初の大統領令で、アジア太平洋との連携を強化する方針を示した。
中国、インドなどとの関係を深める一方、日本、韓国、オーストラリアなどとも互恵協力関係の構築を図りたいとしている。
経済大国化を目指す以上、世界の成長拠点であるアジア太平洋に着目したのは当然だ。
9月にウラジオストクで開くアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議を、連携強化の足掛かりにする狙いがあろう。
日本にとって、火力発電所の主力燃料となる液化天然ガス(LNG)をロシアから輸入することは、重要性を増している。エネルギー分野で経済協力を拡大することは日露両国に有益だろう。
しかし、北方領土問題を忘れてはならない。メドベージェフ前大統領のもとで、日露関係は険悪化した。ロシア側は、日露両国による北方4島での共同経済活動には期待感を示すものの、領土交渉を動かす考えはなかった。
大統領として3期目に入ったプーチン氏は、内政で足元が揺れているだけに、対外的には強い姿勢を崩すまい。交渉進展に大きな期待を抱くのは禁物である。
日本政府は、プーチン氏の外交方針を十分見極めて、対露戦略を再構築しなければならない。
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