東京電力の一時国有化が決まった。下河辺和彦・新会長に続き、新社長に広瀬直己常務が昇格する人事も固まり、6月の株主総会後に新体制が発足する。
だが、9日に認められた総合特別事業計画は問題だらけだ。
目標にする2014年3月期の黒字回復は、料金値上げと新潟県・柏崎刈羽原発の再稼働が前提で、早くも実現が危ぶまれている。
しかも、福島第一原発の廃炉と除染にかかる費用について、政府による新たな資金支援の枠組みの検討が盛り込まれた。
被害者への賠償とは別に、兆円単位となる廃炉・除染の費用を自力で捻出することは困難との判断からだ。更生を言いながら、最初から白旗を掲げているようなものである。
私たちも、東電だけで事故処理に対応するのは限界があると考える。原子力を推進してきた国の責任という点からも、最終的な国民負担を覚悟すべきだと指摘してきた。
だが、それは東電をきちんと破綻(はたん)処理し、株主や貸手の金融機関にも相応の責任を負わせたうえでの話だ。いまのまま追加の国費投入を検討しても、国民の理解は得られない。
行き詰まりはみえている。野田政権は、新たな処理の枠組みづくりに早く乗り出すべきだ。
もちろん、公的管理下の東電自身にやるべきことは山ほどある。急ぐ必要があるのは電力の安定供給体制の確立だ。
福島第一原発は4基の廃炉が決まった。残りの2基を動かすのも実際には不可能だ。福島第二原発の稼働も、福島県が反対しており見通しは立たない。
今は古い火力発電所を無理に動かし、非常用電源をかき集めてまかなっているが、原発の代わりとなる本格的な発電所の整備が待ったなしだ。
とはいえ、東電には余力がない。このため事業計画では、火力部門を分社化して、新電力やファンドなどと、発電所の共同開発や共同運営をしやすくする改革案を示している。
将来的な電力自由化をにらめば、現在の電力会社にこだわらず、さまざまな企業が発電事業を手がけるのが望ましい。
一方で当面の電力確保には、発電所用地など東電の資産を活用するほうがいいのも確かだ。
低コストで高効率の発電所を早くつくる。東電は自前主義を捨て、入札制度なども利用してパートナーを探し、電力供給に努める責任がある。
それを、電力会社を消費者が選べる将来の電力市場への道筋につないでゆくべきである。
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