民主党が、無罪判決を受けた小沢一郎元代表の党員資格停止処分を10日付で解除する。
いかにも、民主党らしい対応ではないか。やるべきことと、実際にやることが違うのだ。
国会では、ようやく消費増税など重要法案の審議が始まる。いまは挙党一致が最優先だ、と輿石東幹事長はいう。
そうだとしても、小沢氏は国会、国民への説明責任を果たしていない。なぜ、野田首相はそれを黙認するのか。
小沢氏の裁判は控訴され、さらに続く。それでも処分を解く民主党の責任は、いっそう重くなったと言わざるをえない。
法案審議とともに、なすべき仕事が民主党にはある。
小沢氏自身と民主党が掲げてきた政治とカネの浄化に、具体的な成果を出すことだ。
第一に、小沢氏の裁判で改めてわかった政治資金規正法の不備をただす。
小沢氏は法廷で、収支報告書はすべて秘書任せで自分は見たことがないと言い切った。
それで4億円もの巨額の資金を動かしていたという。こんな浮世離れした主張が、なぜ通るのか。それは規正法が政治家本人ではなく、会計責任者に一義的な責任を負わせるからだ。
どう改革すべきか。処方箋(せん)はすでにある。公明党は、政治家が監督責任を怠れば公民権停止処分を科す改正案を国会に提出している。小沢氏も93年の著書「日本改造計画」で連座制の強化を訴えている。
第二に、カネの流れを見えやすくするために、政治家の政治資金団体を一本化する。
その重要性と効果を、小沢氏は著書でこう強調していた。
「公私の区別のはっきりしないドンブリ勘定も、政策決定などに絡んだカネのやりとりもできなくなる」
第三に、パーティー券の購入を含む企業・団体献金の全面禁止である。民主党が政権交代を果たした09年総選挙のマニフェストに掲げていた。
これも小沢氏が言い出したことだ。総選挙前、ゼネコンからの違法献金事件で自分の公設秘書が逮捕された後に、みずから提案したではないか。
民主党は当時、国会に法案も出した。しかし、与党になった途端に知らん顔である。
自民党も、政治とカネの透明化には後ろ向きだ。それをいいことに、見て見ぬふりでやり過ごすなら、民主党も小沢氏も不誠実の極みだ。
この際、政権党として「小沢案」での政治浄化を断行してみせてはくれないものか。
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