小沢氏処分解除 「消費税」反対なら離党が筋だ

朝日新聞 2012年05月10日

民主党の責任 「小沢案」で政治浄化を

民主党が、無罪判決を受けた小沢一郎元代表の党員資格停止処分を10日付で解除する。

いかにも、民主党らしい対応ではないか。やるべきことと、実際にやることが違うのだ。

国会では、ようやく消費増税など重要法案の審議が始まる。いまは挙党一致が最優先だ、と輿石東幹事長はいう。

そうだとしても、小沢氏は国会、国民への説明責任を果たしていない。なぜ、野田首相はそれを黙認するのか。

小沢氏の裁判は控訴され、さらに続く。それでも処分を解く民主党の責任は、いっそう重くなったと言わざるをえない。

法案審議とともに、なすべき仕事が民主党にはある。

小沢氏自身と民主党が掲げてきた政治とカネの浄化に、具体的な成果を出すことだ。

第一に、小沢氏の裁判で改めてわかった政治資金規正法の不備をただす。

小沢氏は法廷で、収支報告書はすべて秘書任せで自分は見たことがないと言い切った。

それで4億円もの巨額の資金を動かしていたという。こんな浮世離れした主張が、なぜ通るのか。それは規正法が政治家本人ではなく、会計責任者に一義的な責任を負わせるからだ。

どう改革すべきか。処方箋(せん)はすでにある。公明党は、政治家が監督責任を怠れば公民権停止処分を科す改正案を国会に提出している。小沢氏も93年の著書「日本改造計画」で連座制の強化を訴えている。

第二に、カネの流れを見えやすくするために、政治家の政治資金団体を一本化する。

その重要性と効果を、小沢氏は著書でこう強調していた。

「公私の区別のはっきりしないドンブリ勘定も、政策決定などに絡んだカネのやりとりもできなくなる」

第三に、パーティー券の購入を含む企業・団体献金の全面禁止である。民主党が政権交代を果たした09年総選挙のマニフェストに掲げていた。

これも小沢氏が言い出したことだ。総選挙前、ゼネコンからの違法献金事件で自分の公設秘書が逮捕された後に、みずから提案したではないか。

民主党は当時、国会に法案も出した。しかし、与党になった途端に知らん顔である。

自民党も、政治とカネの透明化には後ろ向きだ。それをいいことに、見て見ぬふりでやり過ごすなら、民主党も小沢氏も不誠実の極みだ。

この際、政権党として「小沢案」での政治浄化を断行してみせてはくれないものか。

毎日新聞 2012年05月10日

元代表裁判控訴 市民感覚踏まえた判断

東京高裁で改めて審理されることになった。民主党元代表の小沢一郎被告の資金管理団体「陸山会」をめぐる政治資金規正法違反事件だ。

東京地裁は先月26日、元代表に無罪を言い渡した。指定弁護士はこれを不服として控訴し、会見で「看過しがたい事実誤認があり、指定弁護士の職責を果たすのは控訴することと判断した」と理由を述べた。市民からなる検察審査会は、法廷という公開の場で刑事責任を明らかにすることを望み強制起訴を決めた。その意思もくんだということだろう。

地裁判決は、衆院議員、石川知裕被告ら元秘書3人による政治資金収支報告書の虚偽記載を認定した。元代表が自ら提供した4億円の簿外処理について報告を受け、了承していたことも認めた。ただし、元代表に違法な記載との認識がなかった可能性があるとして無罪の結論を導いた。指定弁護士の立証をかなり認めた内容であることは間違いない。

それでも、検察が2度までも不起訴とし、無罪になった事件だ。虚偽の内容を記した捜査報告書の作成問題など検察の不手際も重なった。控訴審での新たな証拠提出も難しい。とすれば、「これ以上元代表を被告の立場におくべきではない」という意見も故なしとしない。

ただし、裁判は3審制だ。判決内容を徹底分析し「修正可能」と3人一致で決断した以上、第三者が横やりを入れるべきではない。高裁で粛々と審理を進めてもらいたい。

読売新聞 2012年05月09日

小沢氏処分解除 「消費税」反対なら離党が筋だ

民主党の常任幹事会は8日、陸山会事件で無罪判決を受けた小沢一郎元代表の党員資格停止処分の解除を決定した。

小沢氏が政治資金規正法違反で強制起訴された後の昨年2月、当時の民主党執行部は、「判決確定まで党員資格停止」とする処分を決めた。

にもかかわらず、控訴期限の10日付の解除とし、指定弁護士が控訴しても変更しないという。

その理由について、輿石幹事長は、社会保障と税の一体改革などを挙げ、「党内の一致結束が最優先の課題だ」と強調した。

確かに、消費税率引き上げ関連法案など山積する課題解決のために党内がまとまるべき時だ。役員会、常任幹事会を経て解除を決めており、手続きに瑕疵(かし)はない。

だが、処分解除で問われるのは小沢氏自身が姿勢を改めることである。まずは、消費増税法案への反対の矛を収めてもらいたい。

社会保障財源となる消費税率の引き上げ問題は、昨年8月末の党代表選で大きな争点となった。民主党は、引き上げを主張する野田氏を代表に選び、しかも、その後、時間をかけて丁寧に議論して法案を党と内閣で決定してきた。

野田首相は、消費増税法案に関する小沢氏の言動も念頭に「何人たりとも党員であるならば方針に従ってほしい」と述べている。

小沢氏は、党員資格を回復する以上、党の方針に従うのが当たり前だろう。それでも法案に反対を貫く、というのであれば、離党するのが筋である。

小沢氏には、陸山会事件で元秘書3人に有罪判決が出たことなど「政治とカネの問題」について国会で説明責任を果たすという課題も残っている。自民、公明両党は8日、小沢氏の証人喚問を要求していくことを確認した。

読売新聞の世論調査では、「国民に説明責任を果たしていない」との回答が87%に上っている。国会での説明は復権への条件だ。

一方、小沢氏は、陸山会事件の裁判で、政治資金収支報告書を見たことはなく「秘書任せ」にしてきた、と主張した。規正法の趣旨をあまりに軽んじていないか。

共産党を除く国会議員は、党を通じて、国民の税金による政党交付金を受け取っている。小沢氏のような言い逃れは許されない。

政治団体の会計責任者や秘書に対する政治家の監督責任強化を目指す、政治資金規正法の改正問題は放置されたままだ。法改正に腰を上げようとしない与野党は、怠慢としか言いようがない。

産経新聞 2012年05月10日

小沢氏裁判 控訴を厳しく受け止めよ

政治資金規正法違反罪で強制起訴され、1審東京地裁で無罪となった民主党元代表、小沢一郎被告について、検察官役の指定弁護士が東京高裁に控訴した。

指定弁護士3人全員の一致した結論だった。「弁護士が有罪を求めて控訴してもいいのか」と逡巡(しゅんじゅん)しながら、なお、1審判決には「見過ごせない事実誤認がある」と踏み切った重い判断だ。小沢元代表も民主党も、控訴の事実を厳しく受け止めなくてはならない。

1審判決は、元秘書らによる虚偽記載を認定し、元代表との間に「報告・了承」があったことも認めた。これだけでも小沢元代表の政治的・道義的責任は十分重い。2審では、元秘書との共謀、故意の有無が争点になる。

控訴の可否を待たず、小沢元代表への党員資格停止処分の解除を8日に決めた民主党常任幹事会の一方的な判断の欺瞞(ぎまん)性は、控訴の事実でより鮮明になった。

だが、輿石東幹事長は「控訴しようとしまいと変わるわけがない」と、処分解除は動かないことを強調した。小沢元代表の復権に一刻も早く道を開くため、「判決確定まで」と自ら決めた期限を無視した反省はないのか。

党内には控訴判断前の駆け込み決定に異論もあった。決めたことを平気でほごにするいいかげんさが国民の政治に対する信頼を損なっている。輿石氏は「国民の理解は得られる」と、再協議の必要はないとの趣旨の発言もした。国民の常識と乖離(かいり)している。

毎日新聞 2012年05月09日

元代表処分解除 無節操な決め方に驚く

党の決定などいとも簡単に変えられるものらしい。民主党が政治資金規正法違反事件で無罪判決を受けた小沢一郎元代表に対し、党員資格停止処分を解除することを決めた。

拙速で無節操だというほかない。元代表が強制起訴されたのを受け、昨年2月、党が処分を決めた際には、処分の期間は「判決確定まで」となっていたはずだ。今回の東京地裁判決を受けて指定弁護士は期限の10日までに控訴するかどうかを決めることになっている。最低限、それを待つのが道理である。

解除を急いだのは、仮に控訴が決まり裁判が続くことが確定すれば解除は難しくなると考えたのだろう。判決直後から処分解除を主導した輿石東幹事長は、党の指針では党員資格停止期間は「原則として6カ月を最長」としており、そもそも小沢元代表の処分が例外だったのだから解除も例外が許されるといいたいようだ。だが、そんな理屈が通るとすれば、民主党そのものに対する信用は失われるばかりだ。

無罪とはいえ、小沢元代表に対する地裁判決は、元秘書らが政治資金収支報告書を虚偽記載したと認定する一方、元代表が「報告書は一度も見ていない」などと法廷で発言した点も「およそ信用できない」と厳しく指摘している。こうした政治家としての責任をどう考えるのか、民主党執行部がきちんと検討したようにも見えない。

産経新聞 2012年05月09日

小沢氏処分解除 民主党に公党の資格なし

民主党の小沢一郎元代表への党員資格停止処分について、党常任幹事会が解除を決めた。

政治資金規正法違反事件で小沢氏を強制起訴した検察官役の指定弁護士は、9日に控訴の可否を判断する予定だ。だが、民主党はそれを待たずに「判決確定まで」と自ら決めていた期限を一方的に覆した。

これは、公党の資格はないと宣言したに等しい。国民の信頼を自ら踏みにじっては、だれも民主党を信用しなくなるだろう。

昨年2月の処分は、小沢氏の起訴だけではなく、元秘書ら3人が逮捕・起訴されたことや小沢氏が国会で説明責任を果たさなかったことも理由に挙げていた。

小沢氏の政治的・道義的責任は問われ続け、説明責任を果たしていない状況も変わっていない。その答えを示さぬまま、小沢氏は党代表選への出馬も可能になる。処分の全面解除の是非にどれだけ議論が尽くされたのだろうか。

この問題で輿石東幹事長は「党内の結束」を掲げ、処分の早期解除を主導してきた。消費税増税などをめぐり、党内に亀裂が生じるのを避けるためだろう。

だが、政権を担う民主党に求められているのは、党内融和ではなく、対立を恐れて重要政策を決められない欠陥をどう是正するかだ。処分解除は根本的な問題の解決にはつながらない。

野田佳彦首相は処分解除問題で自らの考え方を明確には示さず、「党に任せてある」と輿石氏に全面的に委ねてきた。小沢氏の早期復権を明言してきた輿石氏の判断を容認したともいえる。

輿石氏は消費税増税関連法案の継続審議を図るとみられている。首相は輿石氏に采配を任せ、消費税増税に反対する小沢氏の発言権拡大も認めた。消費税増税に政治生命を懸けるとしてきた発言と、どう結びつくのだろうか。

小沢氏は民主党のマニフェスト(政権公約)を重視する姿勢を取っている。これでは、与野党協議に必要なばらまき政策の撤回など、とてもできまい。

首相は民主党代表として、党運営への責任も有している。だが、田中直紀防衛相ら問責決議を可決された閣僚の進退問題も輿石氏の判断に任せている。自ら重要な政治判断を下せないなら、首相の指導力はどこにいったのかと言わざるを得ない。

産経新聞 2012年05月08日

小沢氏裁判 上級審の判断を聞きたい

政治資金規正法違反罪で強制起訴された民主党の小沢一郎元代表を無罪とした東京地裁の1審判決について、控訴期限が10日に迫っている。

検察官役の指定弁護士3人は9日に協議して方針を決定する予定だが、控訴の可否については「心証としては有罪なので控訴したい」「自分たちは弁護士なので有罪を求めて控訴しにくい」との意見の間で揺れているのだという。

1審判断に疑問があるなら、控訴は自然の流れではないか。上級審における判断を聞きたい。それほど1審の無罪判決は、限りなく黒に近い灰色と読み取れた。

1審判決は、元秘書らによる虚偽記載罪が成立することや、小沢元代表が簿外処理について報告を受け、了承していたことも認定した。元代表が「秘書任せ」「記憶にない」を連発し、収支報告書を「見たこともない」と述べたことには「およそ信じられない」と指摘した。

元秘書らとの共謀の成立を疑うことにも「相応の根拠がある」と認めた。指定弁護士側が「ほとんど有罪」と受け止めたのも、当然ではないか。

「無罪」となったのは、4億円の簿外処理などの違法性を小沢元代表が認識していなかった可能性もあるとして、「疑わしきは罰せず」の刑事裁判の大原則が尊重されたためだ。

だが、「政治資金の収受にあたり、国民の疑惑を招くことのないよう」とする政治資金規正法の趣旨に照らすと、1審判決が妥当であるとは言い切れまい。

民主党は7日夕の党役員会で、小沢元代表の党員資格停止処分を解除する手続きに入ることを決めた。8日の常任幹事会で正式決定する意向という。

処分は「判決確定まで」とされていたのに、指定弁護士側が控訴の可否を示す前に、こうした手続きをとるのは極めて問題だ。指定弁護士側へのプレッシャーとも受け止められる。1審判決が呈した多くの疑問に小沢元代表は、説明責任を果たしていない。

まず急ぐべきは、政治家本人の罪を問うことが難しい、「ザル法」と呼ばれる政治資金規正法の改正だろう。かつて小沢元代表が自著で提言していた「連座制の導入」を含む規正法改正の声が、政治家の間から聞こえてこないことが不思議でならない。

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