予算委鳩山答弁 同盟弱体化の危機感が足りぬ

朝日新聞 2009年11月05日

鳩山献金疑惑 首相は法の趣旨踏まえよ

鳩山由紀夫首相の資金管理団体の虚偽献金問題が、衆院予算委員会で取り上げられた。亡くなった人や心当たりのない人の名前が個人献金者とされていた「虚偽記載」はすでに明らかになっている。では、その資金はどこから提供されたのか。首相本人はどのようにかかわっていたのか。答弁を聞いても、疑惑は晴れない。

焦点の一つが「量的制限」違反の疑いだ。政治資金規正法は、政治家本人から資金管理団体への寄付の上限を年1千万円と定めている。首相は、虚偽献金の原資は自身の資金だったと説明しているが、上限超過をごまかすために元秘書が虚偽記載をしたのではないか。そんな疑いが浮かぶ。

首相は、1千万円を超える部分は貸し付けのつもりだったとかわした。確かに貸し付けなら上限はない。ならばなぜ、そう記載しなかったのか。納得のいく説明はなかった。

虚偽献金の原資に母親や、労働組合など企業・団体のカネが交じっていないかも追及された。贈与税逃れや、資金管理団体への企業・団体献金を禁ずる規正法違反の疑いが出てくるからだ。首相は「知る範囲において、そのようなことはないと信じている」と否定したが、いかにも頼りない。

政治資金規正法の趣旨は、収支を公開して透明性を確保すること、そして利害が絡んだ不適切な献金で政治活動がゆがむのを防ぐことにある。

いわゆる「故人献金」など、首相の資金管理団体の報告書がでたらめな記載だらけだった点が、透明性確保という趣旨に反しているのは明らかだ。

もうひとつの、不適切なカネの流れはなかったか。首相の説明通り私財を投じたというのなら、金持ちが自分の資金を政治に使っただけのことで、大きな問題はないという考え方もあるかもしれない。

だが、政治家本人にも「量的制限」が定められているのは、本人の資産でも、その形成に企業や団体が絡んでいれば政治をゆがめるおそれがあるからだ。貸し付けも抜け穴になる可能性があり、何らかの制限が必要だろう。

リクルート事件後、自民党の若手議員が集った「ユートピア政治研究会」で首相とともに政治活動費の実態を公表した石破茂自民党政調会長は、きのうの予算委で「(実態を)明らかにするのがあなたの仕事。それがわれわれの原点ではなかったか」と迫った。

首相はその原点に立ち返るべきだ。まずは、きちんと説明責任を果たすことだ。自民党が求める鳩山家の資産管理会社社長の参考人招致も、拒否する理由はないのではないか。個人献金を装った手口が、民主党の目指す企業・団体献金禁止の抜け道と疑われていては、首相も心外だろう。

首相には疑惑に答える責任がある。

毎日新聞 2009年11月03日

衆院予算委 異彩を放った加藤質問

鳩山政権発足後、初の衆院予算委員会が2日始まった。米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の移設問題など喫緊の課題が論戦の中心となる中で、異彩を放ったのは「この国は何を目指すのか」をテーマにした加藤紘一・元自民党幹事長の質問だった。鳩山政権への追及が甘いとの指摘は当然出るだろうが、政治家同士が理念を語り合うという試みは評価したい。

加藤氏は「日本のアイデンティティーとは何かの議論が大事」と語ったうえで、「国民は『友愛』と言われてもピンときていない」と指摘。鳩山由紀夫首相だけでなく他の一部閣僚にも「友愛」をどう解釈しているかをただした。一方で、首相が所信表明で強調した「新しい公共」との考え方などには賛意を表明、議論を通じて「友愛」の理念を肉付けすることで政権を側面支援している印象さえあった。

とかく新保守主義、市場原理主義一辺倒になりがちだった小泉改革に反対してきた加藤氏には、民主党とは基本姿勢が近いとの思いがあるのかもしれない。しかし、加藤氏が仕掛けた「マニフェストは変更してもいいのかどうか」「そもそも無駄とは何か」といった議論は、政権交代後の日本政治に突きつけられている重要なテーマだ。こうした論戦は与野党の立場を超えて今後も重ねるべきだろう。

ただ、加藤氏の質問は自民党が鳩山政権を攻めあぐねている現状を表すものでもある。

この日、自民党では大島理森幹事長や町村信孝元官房長官らも質問に立った。だが、例えば米軍普天間飛行場移転問題では「関係閣僚の意見がバラバラで閣内不一致だ」「いつまでに結論を出すのか」などと、日米関係の悪化を懸念しながら再三追及したものの、新たな答弁は引き出せず質疑は堂々めぐりだった。

普天間問題では先の代表質問で首相が「今まで10年以上結論を出さなかったのはどの政権か」と自民党を批判したのを意識してか、町村氏が「われわれもきちんと地元との議論を踏まえて、汗を流してきた」と語るなど、弁明とも受け取れる発言もあった。これも直前まで政権を担当していた自民党が攻めに転じ切れない難しさをのぞかせる場面だった。

理解に苦しむのは、鳩山首相自身の「故人」献金問題にあまり時間が割かれなかったことだ。首相が08年に株売却で得た7226万円余の所得を税務申告していなかった問題も明らかになったばかりだ。機会あるごとに政権を厳しく追及するのが野党の責務だ。加藤氏も認めた通り、まだ自民党は「与党ぼけしている」と疑われても仕方がない。

読売新聞 2009年11月03日

予算委鳩山答弁 同盟弱体化の危機感が足りぬ

この問題の扱いを誤れば、日米同盟を弱体化させる。鳩山内閣には、そんな危機感が欠如しているのではないか。

衆院予算委員会で、鳩山内閣初の一問一答方式による与野党論戦が始まった。最大の焦点は、沖縄県の米海兵隊普天間飛行場の移設問題だった。

自民党の大島幹事長や町村信孝・元官房長官は、政府が普天間問題の結論を先送りしていることを批判し、「いつまでに結論を出すのか示すべきだ」と迫った。

鳩山首相は、「いつまでも結論を引き延ばしていいものではないが、いつとは言えない」との答弁に終始した。

政府は今、名護市沿岸部に移設する日米合意案のほか、米空軍嘉手納飛行場への統合案など「様々な選択肢」を検討している。

嘉手納統合案に、岡田外相は前向きな考えを示すが、米政府も地元自治体も強く反対している。現実的な案とは言えない。

町村氏は、この問題をめぐる首相、外相、北沢防衛相の発言の食い違いを指摘し、「閣内がバラバラだ」と非難した。首相は、「私が結論を出す」と反論した。

しかし、深刻なのは、政府が結論を先送りし、首相と閣僚が勝手な発言をしていることに、現行計画を支持する米政府や地元自治体が振り回されていることだ。

米側は、日本政府の対応に不信感を強めている。沖縄県や名護市にも、「政府が態度を明確にしないなら」と、移設受け入れへの反対論がくすぶり始めている。

日米関係の悪化を避け、地元負担の大幅軽減を実現するため、鳩山首相は、早急に現行計画支持を決断すべきだ。

自民党も、単なる政府批判でなく、13年前の橋本内閣以来の懸案を解決するという観点からの建設的な論議が求められる。

一方、自らの資金管理団体の偽装献金問題について、鳩山首相は「検察の捜査に影響を与える」ことを理由に、一切の説明を控える考えを繰り返した。

この姿勢はおかしい。

首相は6月末の記者会見で、追加調査し、いずれ説明する意向を示していた。その後、小口の匿名献金の偽装や、所得税控除の証明書の不適切な取得など、多くの問題が発覚している。

首相がこのまま、説明を拒み続けるのであれば、政治家としての責任放棄だ。首相は国会で、捜査を妨害しない範囲内で、真相を説明し、多くの疑問に誠実に答える務めがある。

産経新聞 2009年11月03日

予算委員会 首相の献金問題解明せよ

与野党の本格的な国会論戦となる衆院予算委員会がスタートした。政権発足から約1カ月半たっている。

この間の政権運営は、八ツ場(やんば)ダム問題や郵政民営化方針の見直し、米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)移設問題をめぐる閣僚発言の不一致など拙速さや危うさが目立った。鳩山由紀夫首相にはこれらの問題に丁寧な説明を求めたい。

中でも鳩山首相に強く求められているのは、首相自身の個人献金をめぐる虚偽記載問題に関する説明だ。

首相は政権交代前の6月に記者会見を開き、虚偽記載の事実を認めて陳謝した。だがそれ以来、まとまった時間をかけて国民に理解できるような説明は行われていないのが現実だ。

しかも、6月の会見以降も首相のカネをめぐる新たな問題が次々と発覚している。最近も、自分あてに認められる上限(1000万円)を超えた献金が続けられていた疑いが浮上した。予算委初日の2日には、首相が昨年株式売却によって得た約7200万円の所得を税務申告していなかったことが判明した。

多くの国民は、首相のこれまでの説明に納得していない。税務上の違反の疑いも取りざたされる。首相は国会審議で自ら進んで事実関係を明らかにすべきだ。

首相は先月29日、この問題を積極的に説明しない理由として「私個人の問題を申し上げると、結局『自分の身を守るためだけの発想じゃないか』という話になる」と釈明したが、これも首をかしげざるを得ない。首相は「捜査に全面的に協力していく」とも繰り返しているが、捜査に協力するのは国民として当然のことだ。

問われているのは、事実の解明もさることながら、この問題を鳩山氏がどう認識し、首相としてどう責任を取るつもりかということだ。虚偽記載などの違法行為を放置しておいて、政治の最高指導者たりうるかである。この点も責任を認識する必要がある。

予算委初日の質疑で、この問題を自民党の大島理森幹事長らが取り上げたが、その切り込みは十分だったとはいえない。

首相は予算委での集中審議に「すべてを委ねたい」とも答弁した。予算委は明日以降も続く。与野党は政治資金の透明性を確保するために、核心に迫る議論を展開してもらいたい。

この記事へのコメントはありません。

この社説へのコメントをどうぞ。
お名前
URL
コメント

この記事へのトラックバックはありません。

トラックバックはこちら
http://shasetsu.ps.land.to/trackback.cgi/event/103/