仏新大統領 通貨危機の阻止優先せよ

毎日新聞 2012年05月08日

欧州の選挙 緊縮一辺倒の修正迫る

欧州で緊縮財政を進めてきた政権に、国民の厳しい審判がまた下った。6日のフランス大統領選決選投票で現職のサルコジ氏が社会党のオランド氏に敗れ、同日のギリシャ議会総選挙では、連立を組んできた2大政党が大量に議席を失った。

債務危機の表面化以来、ポルトガル、ギリシャ、イタリア、スペインなどユーロ加盟各国で政権交代や指導者の退陣が相次ぐが、今回もそれに続く現象だ。歳出削減など緊縮財政下で悪化する経済状況への国民の不満が共通の背景になっている。

市場では財政再建の後退や政治的対立への懸念が広がり、ユーロが売られ、株式相場も軒並み下落した。

まず気がかりなのが、ギリシャの今後だ。大敗した2大政党は、欧州連合(EU)や国際通貨基金(IMF)と危機打開策の交渉にあたってきた。EU・IMFの支援と引き換えに緊縮財政を公約した当事者が議会を制することができず、緊縮策撤回やユーロ脱退を唱えた過激派少数政党が支持を得たことで、支援の実行に支障をきたす恐れが出てきた。

仏大統領選でも、ユーロ加盟国で合意済みの財政緊縮策を練り直すよう求めるオランド氏が当選した。サルコジ氏の派手な暮らしや高圧的な言動への国民の反感も影響したようだが、選挙結果は、独仏が主導してきた緊縮路線に修正を迫りそうだ。

そこで焦点となるのがドイツの対応である。

産経新聞 2012年05月08日

仏新大統領 通貨危機の阻止優先せよ

フランス大統領選で社会党のオランド候補が当選した。

ギリシャ危機の勃発以来、同様に巨額の財政赤字を抱え、緊縮財政を強いられるユーロ圏各国では、国民の不満が高まっている。緊縮財政の継続を唱えた現職のサルコジ大統領に対し、成長や雇用にも配慮するよう主張したオランド氏の勝利は、その反映といえる。

しかし、欧州各国の財政規律が緩み、ユーロや国債の売り浴びせが起きるようだと危機は再燃し、世界経済は再び混乱に陥る。オランド氏が仏大統領として最優先すべきは危機再発の阻止であることを忘れてはならない。

確かに、氏が唱える年金受給年齢引き下げや公務員増、財政規律強化を義務づける欧州連合(EU)の新財政協定見直しなどは懸念材料だ。せっかくの仏独協力にひびが入りかねないとする声があるのもこのためだ。

だが、オランド氏は欧州統合志向も強い。師と仰ぐ同じ社会党のミッテラン元大統領は在職中、当時のコール独首相と強固な信頼関係を築き、仏独が両輪になって欧州統合を進めてきた。

それだけに、オランド氏も大統領就任後は現実路線に転じるとの見方は根強い。ユーロ維持、統合推進の大方針が揺るがぬことを期待したい。ドイツのメルケル首相が早速、首脳会談を呼びかけるなど仏独の緊密な協力関係の維持に動き出したのも朗報である。

むしろ、より危ういのは、仏大統領選と同じ日に総選挙の投開票が行われたギリシャだ。

EUなどの支援と引き換えに増税や歳出削減に取り組むとしてきた連立与党が過半数に届かず、「反緊縮財政」を訴えた急進左派が議席を大幅に伸ばして第二党に躍進した。現在の連立与党で今回第一党になった新民主主義党も、緊縮策見直しをEUなどと交渉する考えを示している。

だが、ギリシャの財政再建は緒についたばかりで、国際社会の信頼を得るに至っていない。日本をはじめ、危機再燃に備えて国際通貨基金(IMF)などに資金を拠出した欧州以外の国から不満が噴き出す可能性もある。ギリシャはこうした厳しい目にさらされていることを認識すべきだ。

オランド政権の動向も含め、欧州が危機対応で後戻りすることは決して許されない。

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