東京電力の国有化で、政府は原子力発電所の再稼働などに一段と重い責任を負うことになる。
東電と政府の原子力損害賠償支援機構が27日、東電の再建を目指す「総合特別事業計画」をまとめ、枝野経済産業相に提出した。5月上旬にも経産相が認定する見通しという。
東電が支援機構を通じて1兆円の公的資金注入を受けるための計画だ。東電は経営改革を加速する必要がある。
計画のポイントは、東電株の議決権の過半数を政府が握り、実質国有化することだ。経営陣も大幅に刷新し、新会長に支援機構の下河辺和彦・運営委員長が就く。
政府は東電の筆頭株主として、福島第一原発の事故収束や損害賠償などに、主体的に取り組まなければならない。
計画が、10年間の経費削減額を従来の2・6兆円から3兆円超に上積みした点は評価できる。さらに不断の努力を続けてほしい。
家庭向けの電気料金値上げや、新潟県の柏崎刈羽原発の再稼働で収益を改善し、2013年度に黒字化する目標も掲げている。
だが、こちらは実現へのハードルが高い。
大口料金値上げを巡る東電の不手際が、強い批判を浴びており、値上げに理解を得るのは容易でない。原発再稼働に向け、安全性への不信感払拭も求められる。
東電が値上げや再稼働への理解を真摯に求めるのは当然だが、政府も東電任せにせず、説得の先頭に立たねばならない。
値上げの認可も、再稼働の妥当性の判断も、決めるのは東電を所有する政府自身になるからだ。
事業計画に社内カンパニー制導入を盛り込んだ点も注目される。「火力発電」「送配電」などに分けて独立性をもたせ、コスト意識を高める狙いはいい。
ただし、東電改革を突破口に、なし崩しで発送電分離などを進めるのは問題だろう。電力制度改革は、中長期的な課題として慎重に議論すべきだ。
福島第一原発の廃炉や除染などで、今後さらに数兆円単位の費用が発生する懸念もある。現行の支援制度は、政府が支払いを立て替えるだけで、東電は長年にわたり債務返済を続けることになる。
東電の将来展望が見えないと、人材の流出や設備投資の抑制で、肝心の事故収束、損害賠償、電力安定供給に支障が出かねない。
民間企業の担える範囲を超えてコストが膨らむようなら、政府も応分の負担をするべきだ。
この記事へのコメントはありません。