G20共同声明 IMF増強は前進だが課題も

朝日新聞 2012年04月25日

IMF拡充 危機の再燃に備えを

欧州危機への対策で、主要20カ国・地域(G20)が協調姿勢を示した。

ワシントンでの財務相・中央銀行総裁会議で、国際通貨基金(IMF)の融資枠を4300億ドル広げることで合意した。

当初目標の5千億ドルには届かなかったものの、資金の提供に慎重だった新興国が土壇場で参加を決めた意味は大きい。危機の再燃を封じ込めるため、万全を期してほしい。

最終決着は6月のG20サミットになるが、新興国は資金協力と引き換えに、IMFでの発言力の向上につながる改革を求めている。裏を返せば、欧州の発言権をどう縮小するかという問題だ。欧州首脳は誠意ある対応を示さなければならない。

今回の合意では、日本がいち早く600億ドルの拠出を表明し、呼び水になった。欧州が緊迫すれば再び円高に振れる懸念がある。これを未然に防ぎたいという判断だった。

資金は円売りドル買いの為替介入で積み上がった1兆ドルを超す外貨準備から回る。政府は昨夏から、企業の対外投資を促すため、外貨準備の一部を民間に供給している。円高対策の一環である。

国際金融の安定や不均衡の是正は、円相場の安定に役立ち、世界経済にも貢献する。そんな問題意識から常に外貨準備の活用法を考え、タイミングよく行動する――日本の姿勢と理念の一貫性を示すうえでも、今回の拠出は評価できる。

日本の3倍の外貨準備を持つ中国も、世界経済の安定に生かす道を考えるべきだ。

心配なのは、欧州の情勢が再びきな臭くなっていることである。金融緩和で小康を得ていたが、大国スペインから債務危機が再燃する懸念が出ている。

景気悪化に伴う財政再建の遅れ、労働規制の緩和への国民の猛反発と、ギリシャに似た構図で国債が売られている。

政治も波乱含みだ。フランス大統領選挙では、予想通り第1回投票でサルコジ大統領が後れを取った。ユーロ圏はサルコジ氏とドイツのメルケル首相との二人三脚が屋台骨だけに、先行き不透明感が増してきた。

決選投票と同じ5月6日にはギリシャの総選挙もある。ただでさえ苦難の中にある経済改革に、再び政治的混乱の影が差す恐れがある。

しかし、ここで対策が足踏みしては、金融緩和で稼いだ時間が無駄になる。欧州各国の首脳は、危機に備えた独自の安全網の拡充や財政・経済構造の改革を先送りしてはならない。

読売新聞 2012年04月22日

G20共同声明 IMF増強は前進だが課題も

欧州危機の封じ込めに向け、国際通貨基金(IMF)の資金基盤の強化で足並みをそろえたのは前進である。

日米欧と中国などの新興国が参加し、ワシントンで開かれた主要20か国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議は共同声明を採択した。

焦点だったIMF融資枠について、日本などが協力し、4300億ドル(約35兆円)超の拡大にメドを付けたと言及している。

これでIMFが財政危機国などに融資できる枠が倍増する。市場に促されていたG20が、なんとか結束を示したと言えるだろう。

震源地の欧州による自前の融資枠と合わせて、危機拡大に備えた安全網は110兆円を超える規模に膨らむ。市場安定に寄与することが期待される。

G20の議論を主導したのは、日本だった。欧州が今年初め、自ら2000億ドルの拠出を表明した後も、各国は対応を留保していたが、日本がG20の直前、600億ドルの拠出を真っ先に表明した。

それが呼び水になり、北欧諸国や英国などが次々と拠出を表明した。慎重だった中国、インド、ブラジル、ロシアも金額を明示せずに協力に応じた。

財政赤字拡大を理由に、IMFへの最大出資国の米国が今回、拠出を見送ったのは残念だが、IMFが1月に掲げた5000億ドルの目標に近い融資枠の増強が実現する意義は大きい。

しかし、問題は、欧州危機が完全に払拭されていないことだ。

共同声明が、「数か月前に世界経済が直面した深刻な危機に陥るリスクは後退し始めているが、悪化に転じるリスクはなお根強い」と警戒したのは、もっともだ。

欧州では、スペインの信用不安がくすぶり、国債利回りが上昇している。スペインの財政危機が深刻化すれば、イタリアやギリシャに飛び火し、欧州の危機が再燃しかねない。

フランス大統領選とギリシャの総選挙を控え、結果次第では、これまでに作り上げた危機対策の枠組みが揺らぐ恐れもある。

欧州経済は今年、マイナス成長が見込まれる。各国が緊縮財政に走ると、景気が失速し、税収も伸びず、財政が悪化する悪循環が現実味を帯びている。

G20は欧州に対し、今回の合意に気を緩めず、財政改革と経済再生の着実な実施を迫るべきだ。

世界経済は、欧州問題だけでなく、原油高の難題も抱える。G20の一層の結束が問われている。

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