欧州危機の封じ込めに向け、国際通貨基金(IMF)の資金基盤の強化で足並みをそろえたのは前進である。
日米欧と中国などの新興国が参加し、ワシントンで開かれた主要20か国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議は共同声明を採択した。
焦点だったIMF融資枠について、日本などが協力し、4300億ドル(約35兆円)超の拡大にメドを付けたと言及している。
これでIMFが財政危機国などに融資できる枠が倍増する。市場に促されていたG20が、なんとか結束を示したと言えるだろう。
震源地の欧州による自前の融資枠と合わせて、危機拡大に備えた安全網は110兆円を超える規模に膨らむ。市場安定に寄与することが期待される。
G20の議論を主導したのは、日本だった。欧州が今年初め、自ら2000億ドルの拠出を表明した後も、各国は対応を留保していたが、日本がG20の直前、600億ドルの拠出を真っ先に表明した。
それが呼び水になり、北欧諸国や英国などが次々と拠出を表明した。慎重だった中国、インド、ブラジル、ロシアも金額を明示せずに協力に応じた。
財政赤字拡大を理由に、IMFへの最大出資国の米国が今回、拠出を見送ったのは残念だが、IMFが1月に掲げた5000億ドルの目標に近い融資枠の増強が実現する意義は大きい。
しかし、問題は、欧州危機が完全に払拭されていないことだ。
共同声明が、「数か月前に世界経済が直面した深刻な危機に陥るリスクは後退し始めているが、悪化に転じるリスクはなお根強い」と警戒したのは、もっともだ。
欧州では、スペインの信用不安がくすぶり、国債利回りが上昇している。スペインの財政危機が深刻化すれば、イタリアやギリシャに飛び火し、欧州の危機が再燃しかねない。
フランス大統領選とギリシャの総選挙を控え、結果次第では、これまでに作り上げた危機対策の枠組みが揺らぐ恐れもある。
欧州経済は今年、マイナス成長が見込まれる。各国が緊縮財政に走ると、景気が失速し、税収も伸びず、財政が悪化する悪循環が現実味を帯びている。
G20は欧州に対し、今回の合意に気を緩めず、財政改革と経済再生の着実な実施を迫るべきだ。
世界経済は、欧州問題だけでなく、原油高の難題も抱える。G20の一層の結束が問われている。
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