食品の放射能 「見える化」の改善急げ

毎日新聞 2012年04月02日

食品の放射能 「見える化」の改善急げ

食品に含まれる放射性セシウムの新基準が1日から適用された。

原発事故直後に定められた暫定規制値に比べ、野菜や肉など一般食品は5分の1、水は20分の1、牛乳は4分の1の汚染までしか認められない。粉ミルクや離乳食の基準も新たに定められた。

新基準に対しては、「必要以上に厳しく被災地の復興を妨げる」と懸念する声もあったが、消費者の納得が得られなければ生産者にとってもマイナスだ。今後は、検査態勢や情報提供の充実に力を尽くすことが政府の役割となる。

厚生労働省は過去に新基準の半分の値を超えたことのある食品などを重点的に調べるよう指示している。複数の食品が出荷制限を受けたことのある自治体に対しては検体数を増やすことも求めている。

測定はできるだけ強化してもらいたいが、新基準に対応するには新たな測定器や人手が必要になる。これが用意できずに検査数が減ってしまうようでは本末転倒だ。政府は、自治体に任せきりにせず十分な支援をしてほしい。

消費者を守るとともに生産者にも気を配りたい。農林水産省は昨年産のコメが新基準を超えた福島県の産地でコメを全量買い上げることを決めた。やむを得ない出費であり、東京電力による賠償を求めたい。

今後は、食物連鎖による魚介類の汚染の増加も懸念される。監視の網の目を細かくしてすり抜けを防ぐと同時に漁業者の支援も欠かせない。

食品の放射能測定は生産側だけでなく消費者に近い小売店やスーパーなどで行うことが重要だ。厚労省は昨年度に約1270件の抜き取りの買い上げ調査を行っているが不十分だ。将来の全品調査も視野に、調査対象を広げる必要がある。スーパーなどが独自に行っている測定も支援したい。

基準が厳しくなっても結果が国民に伝わらなければ意味は半減する。基準をクリアするために努力している生産者のためにも、政府は検査の実態や結果が国民にきちんと伝わるよう努力してほしい。

農水省の財団「食品流通構造改善促進機構」は震災後、外部のボランティアと協力し食品の放射能検査結果を検索できるデータベースをウェブ上で公開してきた。厚労省の公表資料を編集したものでアクセス数は多かったが、今後はデータ量の増加などへの対応が難しそうだという。

こうしたデータの「見える化」は、本来、情報が集約される厚労省が行うべきではないか。データの羅列は本当の意味の公表とはいえない。消費者や生産者の視点に立った改善を求めたい。

読売新聞 2012年04月21日

食品の放射能 新規制値による風評被害防げ

懸念された通り、過度の規制がかえって不安と混乱を招いている。

食品中の放射性セシウムに関し、政府が今月1日から導入した新規制値のことだ。各地で農水産物の出荷停止が相次いでいる。

厚生労働省の集計によれば、タケノコ、ウナギなど新規制値を超過した農水産物は、すでに150件を超えた。

生産地では、風評被害を助長すると、心配する声が出ている。政府が引き起こした混乱だ。沈静化に全力を挙げねばならない。

東京電力福島第一原子力発電所の事故後に設けられた暫定規制値は、野菜や魚に含まれる放射性セシウムが1キロ・グラムあたり500ベクレルを超えないよう求めていた。今月からの新規制値は、これを5分の1の100ベクレルに引き下げた。

出荷停止とされた農水産物の大半は、100ベクレルをわずかに超えた程度だ。暫定規制値を、はるかに下回る。問題はない水準だ。

暫定規制値でも、国際的には最も厳しい基準だった。厚労省から規制強化案を諮問された文部科学省の放射線審議会は、すでに安全は十分確保されている、と強化に疑問を呈し、被曝(ひばく)リスクの低減効果も薄い、と指摘していた。

それでも厚労省は、「消費者の安心確保のため」として導入に踏み切った。その結果、生産地の苦悩は増したことになる。農林水産省も、生産者に大きな影響はないとしてきたが、それが見込み違いだったことは明らかだ。

とりわけ、大打撃を被っているのが、原木を使って栽培するシイタケだ。新規制値をわずかに超過するケースが続出している。原木を取り換えるしかないが、現状では十分な量を確保できない。

農水省は、積極的に生産者を支援すべきだろう。

生産地や、小売り・流通業界には、さらに厳しい自主基準を競う動きも広がっている。100ベクレルの半分、4分の1、中にはゼロを掲げるところもある。

だが、もともと食品には、セシウム以外に自然の放射能が含まれている。例えば昆布は1キロ・グラムあたり2000ベクレル、干しシイタケは同700ベクレル、生ワカメは同200ベクレルだ。「ゼロ」を売り文句にした販売競争は、消費者をますます混乱させることにならないか。

結局、生産地の負担は増すばかりだ。東日本大震災からの復興の足かせにもなりかねない。

政府は、すでに十分安全な食品が流通していることを、きちんと国民に説明していくべきだ。

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