2閣僚問責可決 自民の審議拒否は無理がある

朝日新聞 2012年04月21日

問責可決 自民は職場放棄するな

野田内閣の2閣僚に対する問責決議がきのう、参院本会議で可決された。

しどろもどろの国会答弁を続ける田中直紀氏に、防衛相を任せるのは不安だ。前田武志国土交通相も、大臣の肩書を使って所管業界に選挙での支援を働きかけたとしか見えない。

だから私たちは、問責決議の乱発を批判しつつも、今回は速やかな辞任を求めてきた。

しかし、野田首相は続投を許し、両氏もその意向だ。理解できない。

首相は事態を打開するために、更迭もためらうべきではない。このまま、消費増税を含む税と社会保障の一体改革などの重要法案の成立が遅れていっていいのか。

それにしても、である。

国会で全面的な審議拒否に入った自民党の態度も、どう見てもおかしい。

いまや国会で見慣れた光景になった問責決議と審議拒否の連続技だが、こんどの自民党は異例ずくめだ。

まず、決議の可決を待たずに審議を拒み始めた。しかも2閣僚が出席しない委員会にも応じない。そこで採決された中小企業の振興のための法律や、火災予防のための消防法の改正案は、2閣僚の問題とは何の関係もない。

次に、タイミングだ。民主党政権で5、6人目の問責決議の可決だが、これまでは国会の最終盤ばかりだった。長期の国会空転を避けるという暗黙の了解があったからだ。今回は、まだ会期末まで2カ月ある。

共闘している公明党も、自民党を批判する。問責閣僚が所管する課題以外は審議に応じるのが「基本的なルール」だという立場からだ。

私たちは、野党が閣僚の責任をとことん追及するのは当然だが、必要な法案の審議には応じるべきだと考える。

閣僚にどれほどの問題があろうと、必要な政策遂行まで滞れば、国民生活に支障をきたす。

それは、まさに国会全体の自殺行為だ。自民党は、この点をどう考えるのか。

いま衆参両院とも一票の格差が、司法から「違憲状態」などと指摘されている。早く是正すべきだ。議員歳費の削減でも民主、自民、公明3党で合意しながら放置するのか。

そもそも東日本大震災の復興は、始まったばかりだ。

原子力規制庁をつくる法案にいたっては、まだ審議すら始まっていない。

いま国会が政争を繰り広げ、空転していいはずがない。

読売新聞 2012年04月21日

2閣僚問責可決 自民の審議拒否は無理がある

前田国土交通相と田中防衛相に対する問責決議が、参院本会議で野党の賛成多数により可決された。

民主党政権になってから2年半、問責された閣僚は6人にのぼる。

衆院の不信任決議と違って、参院の問責決議には法的拘束力がない。それなのに、野党は錦の御旗のようにして閣僚交代を迫る。衆参ねじれ国会を背景にした、こんな悪弊は断ち切るべきである。

とくに問題なのは自民党だ。前田、田中両氏が辞任するまで全面的に審議を拒否するという。

自民党は、野田首相が消費税率引き上げ関連法案で自民党に協力を求めている以上、両氏の更迭に応じると踏んでいるのだろう。

だが、自民党は政権の座にあった時には、「審議拒否は国会議員の職場放棄」と野党を批判していた。その言葉を忘れたのか。

国会終盤ならまだしも、重要法案の山積する会期半ばである。古賀誠元幹事長ら党内からも審議拒否を疑問視する声が出ている。

公明党は、審議拒否を前田、田中両氏が所管する委員会にとどめる。野党の足並みの乱れを見ても、自民党の全面審議拒否に無理があるのは明らかだ。

問責決議は、かつて民主党も多用した。仮に自民党が次期衆院選で政権を奪還した場合、参院では公明党を含めても過半数はない。民主党は意趣返ししよう。不毛な争いを繰り返すべきではない。

野田首相は、前田、田中両氏を続投させる意向を示している。審議拒否への批判が高まれば、自民党も審議に復帰せざるを得なくなる、との読みもあるのだろう。まさに「我慢比べ」の様相だ。

ただ、両氏に大きな問題があることは否定できまい。

前田氏は岐阜県下呂市長選で、特定の立候補予定者への支援を依頼する署名入り文書を建設業協会幹部に公用封筒で送っていた。

問責決議は、この行為を地位利用や事前運動を禁じた公職選挙法に抵触するとし、閣僚にとどまるべきではない、と断じた。

田中氏に関しては、北朝鮮のミサイル発射に対する対処の混乱を「看過できない失態」とした。

素人丸出しの国会答弁など、数々の不手際もあって、防衛相として「資質が著しく欠ける」とも批判している。

野田首相は、任命責任を問われても仕方がない。

野田政権で防衛相への問責は一川保夫氏に続いて2人目だ。安全保障を担う閣僚の人事について、首相の認識は甘過ぎる。

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