大地震の危険性が指摘されてきた首都・東京の防災体制を抜本的に見直す必要がある。
東日本大震災を受け、東京都が地震被害想定を6年ぶりに更新した。
直下型の東京湾北部地震が起きると、人的被害は最悪となる。都内の建物の約1割に相当する30万棟が全壊・焼失して、約9700人が死亡すると予測している。
前回想定した死者数は約6400人だったが、約1・5倍に膨れ上がった。甚大な被害である。
地震学の最新研究で、強い揺れが予想される地域が約1・5倍に広がったことが深刻な数字につながった。23区内の7割は震度6強以上で揺れる。震度7の地域もあり、鉄筋コンクリート製の建物さえ全壊するものがある。
住宅の耐震・耐火性は向上しているが、とりわけ、23区内の木造住宅密集地域で倒壊、火災の多発が予測されている。
都は、今年度から、こうした地域で耐火住宅への建て替えを強制的に進める制度を設けた。今夏にも、対象地区を選定する。
被害を減らせるよう、着実に取り組まねばならない。
自宅の被災などによる避難者も約339万人にのぼる。東日本大震災の約10倍だ。都内の企業で働く会社員ら約517万人が帰宅困難になるとも推計している。
帰宅困難者対策について、都は3月、企業に3日分の水、食料の備蓄を求める条例を制定した。確実に履行してもらいたい。交通機関や宿泊施設、コンビニなどとの協力も強化すべきだ。
都心を訪れる買い物客や観光客の支援も検討しておきたい。
都は、9月までに対策の基本となる新たな地域防災計画を策定する。確実な減災を目指して計画をまとめねばならない。
大都市での地震では、被害想定が困難なものも多い。
今回の見直しでは発生の可能性が列挙されているだけだが、例えば多数が集まるホールなどの倒壊に備えた救助・救援対策を事前に講じておく必要がある。東京湾で津波が起きれば、船舶が流され大規模な火災も起こり得る。
都心の高層ビルでは、ゆっくり大きく揺れる長周期地震動による被害があるかもしれない。
政府も今冬、首都圏全域の被害想定をまとめる。首都圏に集中する政府中枢、企業の本社、物流の拠点を、どう維持するか。
日本の政治、経済をマヒさせないよう、大阪など主要都市との協力も視野に、万全を期したい。
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