原発再稼働と節電 電力制限令も視野に

朝日新聞 2012年04月13日

原発再稼働と節電 電力制限令も視野に

野田政権が、関西電力・大飯原発3、4号機(福井県)の再稼働を模索している。政府が再稼働に前のめりなのは、「このままでは夏の電力が足りない」との危機感があるからだ。

しかし、政府の姿勢には大いに疑問がある。政府も関電も、電力の需要抑制策に本気で取り組んでいないからだ。

関電の今夏の需給見通しは厳しい。経済産業省によれば、節電を要請した昨夏並みの電力使用量だった場合、7.6%足りない。供給量をもっと上積みできないか精査すべきだが、限界もあろう。

そうであれば、なおのこと電力消費の抑制に全力を挙げるべきだ。

昨年の大震災後に実施された計画停電のような事態は、避けなければならない。だが、企業など大口の需要家に一定の節電を強制する電力制限令の発動はタブー視せず、政府は今から真剣に検討すべきだ。

もちろん、強制的な節電は本来、好ましくない。昨夏、東京電力管内での電力制限令では、産業界や働く人に無理を強いた面があった。

この夏、電力制限令をかけるなら、もっと工夫が必要だ。

たとえば、電力が不足しそうな日や時間帯に電力会社が「節電」の競争入札を実施する。企業側は、希望する価格で捻出できる節電量を申し込む。電力会社は、値段の高い順に必要量を買い取る。こうした仕組みを早く実現すべきだ。

昨夏も、オフィスビルなどで節電が経費削減につながったところは多い。加えて節電が利益になるのであれば、もっと積極的な企業が出てくる。

足りない電力を原発の再稼働で補う政府の発想は、かえって需給を危うくする。需要抑制の仕組みをしっかり築いておかないと、発電所の故障といった不測の事態による電力不足にも対応できなくなる。

中長期的に脱原発を進めるうえで、電力不足による生活への影響や産業の空洞化、雇用の喪失には十分な配慮がいる。必要最低限の原発を動かさざるをえない局面もあるだろう。

しかし、この夏の大飯原発の再稼働について、多くの国民は不安を抱いている。

免震重要棟も、事故時に放射性物質の飛散を防ぐフィルター付き排気設備も、防潮堤のかさ上げも、関電は「約束」しただけで、実現は数年後だ。

今夏、再稼働をして抱え込む事故再発リスクと、電力制限令による負担――。国民に受け入れやすいのはどちらだろうか。

読売新聞 2012年04月15日

原発再稼働要請 立地自治体の理解が最優先だ

関西電力大飯原子力発電所3、4号機(福井県おおい町)の再稼働に向けた正念場である。

野田内閣は、速やかに地元の理解を得るよう、一丸となって説得しなければならない。

枝野経済産業相が14日、福井県庁で西川一誠知事や時岡忍おおい町長らと相次いで会談し、大飯原発の再稼働に理解を求めた。

枝野氏は、福井県から要望のあった新たな安全基準に沿って安全性を確認し、再稼働が必要と判断したと説明した。西川知事は再稼働の妥当性を「厳正にチェックしたい」と、回答を留保した。

知事は、枝野氏が原発を重要な電源として活用すると述べた点を評価し、「原発が必要不可欠であることについて、政府はぶれることのないメッセージを出してほしい」と要請した。

立地自治体に協力を求める以上、野田政権は菅前首相らの唱えた、展望なき「脱原発」からの決別を明確にするべきである。

一方で知事は、原発を受け入れてきた地元の努力や貢献が「電力を消費する地域に必ずしも理解されていない」と、強い不満を示した。その後の記者会見では、再稼働の是非は「最終的には立地県が判断すべきだ」とも述べた。

滋賀、京都の両知事や、電力の大量消費地である大阪市の橋下徹市長が、政府の再稼働判断は拙速だと批判しているためだろう。

枝野氏が「日本全国が地元」と発言したことへの反発もある。

もちろん、周辺の自治体から理解を得ることは重要だが、政府は立地自治体の意向を最大限に尊重する必要がある。

定期検査で止めた原発を再稼働しなければ、5月上旬に全原発54基が停止する。特に大飯原発のある関電管内では今夏、最大約20%の電力不足が予想される。

枝野氏は13日の記者会見で、再稼働の必要性に関連し、「停電や電力不足は病気の人や高齢者など社会的弱者に大きなしわ寄せを与える」などと指摘した。

節電などで何とかなるとの楽観論にくみして、電力危機を招くことは「到底許されない」とも強調した。妥当な認識だ。

原発を火力で代替すると、今年度の燃料コストは全国で3・1兆円も増える。枝野氏が「関電管内も遠からず、電力料金の値上げをお願いせざるを得ない」と言うのも、決して大げさではない。

産業空洞化などで日本経済に打撃を与えぬよう、経済性への配慮を欠いてはなるまい。

朝日新聞 2012年04月13日

原発再稼働と節電 大阪発で変えてみては

関西電力大飯原発について、関電の筆頭株主である大阪市が大阪府とともに「再稼働に関する8条件」を提示した。

原発から100キロ圏内の府県との安全協定の締結や、使用済み核燃料の処理体制確立、原子力規制庁を独立性の高いものにすることなどを盛り込む。

内容は、東京電力福島第一原発事故で生じた原発への不安を、住民や電力利用者の目線で反映させた項目が並ぶ。ただちに実現するのは難しいものが多く、事実上、急ぎ足の再稼働への反対表明といえる。その思いには強く共感する。

橋下徹大阪市長は株主として「脱原発」など、関電の経営のあり方に根本的転換を求める意向を表明している。

現時点で大飯の再稼働には大阪、滋賀、京都の各府県知事が反対の立場だ。福井県の西川一誠知事は国に安全性を担保するよう求めてきた。

こうしたなかで国が再稼働ありきのような姿勢でつき進むことに、8条件は電力の大消費地から待ったをかけるものだ。

橋下市長は「政治的なメッセージにしたい」とし、代表をつとめる大阪維新の会の国政進出で、争点にすることも考えているようだ。

しかし再稼働への動きは進んでおり、衆院解散まで待つ状況ではない。出した以上、メッセージに終わらせず、再稼働なしでどう夏を乗り切るのか、実のある対策を打ち出してほしい。

行政として関電に脱原発に向けた取り組みを促すには、府・市民の協力が不可欠である。

橋下市長は夏に向けて、「計画停電もあり得ると腹を決めれば、電力供給体制を変えられる1歩になる」と言う。

これは企業や市民に一定の不便を受け入れる覚悟をもってもらうことを意味する。

この夏はまず、節電意識を高め、広げていくことが大切だ。住民の暮らしに近い自治体の役割は大きい。

脱原発依存を前に進めるには、再生可能エネルギーの利用を増やすことが大事で、発電施設を集中立地型から分散型へ転換しなければならない。

地域の電力供給を1社にゆだね、安全もコスト計算もまかせる供給者主導から、電気を使う側が自ら考え、選べる消費者主導に移す必要もある。

地域住民の意思をどうまとめ、新しいエネルギー自治の先例につなげるか。地方からの変革を重んじる橋下市長には、先頭に立って住民や企業に理解を求め、創意工夫に満ちた対策を繰り出してもらいたい。

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