消費税率の引き上げの必要性について認識は一致しているのに、その手法を巡るミゾが埋まらない。隔靴掻痒の感が強い党首討論だった。
民主党と自民党は、もっと建設的な議論を重ね、日本が直面する最大の懸案を解決すべきだ。
谷垣自民党総裁と山口公明党代表は、消費税率引き上げ関連法案の今国会成立に「政治生命を懸ける」という野田首相の覚悟を問題にした。不成立なら内閣総辞職か、衆院解散かと迫った。
首相は、「重大な決意を持って臨んでいくことに変わりはない」と述べ、解散も辞さない構えを示した。法案成立に全力を尽くすと強調し、野党に協力を求めた。
谷垣氏らが野田首相に「覚悟」をただしたのも無理はない。
3月末の法案の閣議決定以来、首相が早期審議入りを求めているにもかかわらず、審議日程や委員会について、民主党執行部は野党に積極的に働きかけなかった。
首相が、「トップ同士の腹合わせ」をしたいと党首会談を呼び掛けたのは、党執行部の調整に、不安を抱いたからではないのか。
首相は、輿石幹事長らと十分意思疎通を図り、法案審議への段取りをつけなければならない。
党執行部には、小沢一郎元代表グループら反対派に配慮して法案成立を断念し、継続審議を模索する考えもあるという。
だが、党内融和にこだわっている場合ではあるまい。
首相は、自民党などとの協議へ環境整備を急ぐ必要もある。
一つは、最高裁判決で「違憲状態」と指摘された、衆院選を巡る「1票の格差」の是正問題だ。
谷垣氏は、前回の党首討論で首相が比例定数削減より先に格差是正を実現すると約束したにもかかわらず、民主党執行部が従わないことを批判した。首相が足元を掌握していないとも指摘した。
実際、「身を切る改革」の実を上げたい民主党執行部は、比例定数削減との同時決着を求めている。首相は党内を説得し、格差是正の先行実施に努力すべきだ。
もう一つは、消費税率引き上げと一体で行われる社会保障制度改革の内容である。
政権公約(マニフェスト)に明記した月額7万円の最低保障年金を柱とする新年金制度や、後期高齢者医療制度の廃止にいつまでも固執していては、自公両党との歩み寄りは困難だ。
6月の会期末まで時間は限られている。首相の「重大な決意」が空回りするようでは困る。
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